第16話 スケルトン、笑われる。

いま、俺は酒場にいる・・・そして眼の前には笑い過ぎて悶絶している隊長がいる。


「くっ、ぷっふっ、プハハハ・・・ヒィ、ヒィ・・・ヤバい、笑い死にしそうだ!」


「はぁ~、それで、現場は大混乱でしたよ! 流石に切れそうだった・・・」


「ヒィ!ヒィ!ヒィ・・・ヤバい、笑いすぎて手が震える!!! 酒のつまみが取れん! ・・・ぷっ、ププッハハッハハァ!!!!!」


「何も出来ない上に邪魔をして物凄く大変だったよ・・・そんな奴、押し付けるの酷くない?」


「プハハハ・・・そうだろう、酷いだろ、あの馬鹿どもは・・・俺の苦労、少しは分かったか?」


生牡蠣で当たった兵士の対処をした際の出来事を酒場で今話している・・・なぜ報告書を読む前に俺から直接聞くのかねぇ・・・しかも、こんな酒場の中で、大声を出して話したら、明日には町中に広がるだろう・・・どうなるやら。


「アイツら何なんですかね? 使い物になるのですかねぇ?」


「ならないから、ここに送られてくるんだろ? 優秀だったら、こんな辺境に送られて来ねぇよ! 王都で訓練や教育受けるだろ!」


「なら隊長は、何かやらかしたんですかね? 無能の様には思わないし・・・」


「まあまあ・・・中々良い『マナエーテル』手に入れたんだ! これなら飲めるだろ? 呑みながら話そうや!」


「いただきます・・・ぷっはぁ・・おぉ!これはいい感じだ! 魂に染み渡る・・・」


「いい飲みっぷりだねぇ・・・いいねぇ・・・まぁ、なんだ、一人馬鹿な奴がいてな、ムカついたからぶん殴った・・・いい感じにぶっ飛んだぞ!」


「ぶっ飛ばしたと? ・・・誰殴ったんです?」


「世間知らずのボンボン・・・第5王子をぶん殴った・・・て言うより半殺しにした」


「お、おぅ・・・思っていた以上にヘビーでBIGな話だ、よくその場で殺されなかったですね・・・」


「元々、素性が悪く、色々問題を起こしていたしな・・・まあ、殴った直後に第7騎士団全員が取り押さえようとしたがな・・・」


「それで、捕まったと・・・」


「いいや、取り押さえようとした奴らを、逆に返り討ち・・・全員半殺しにした」


「はぁ? もしかして、第7騎士団って弱いのか?」


「騎士団としては最弱・・・所詮、貴族のボンボンの集まりだからな・・・兵士としては並みの上ぐらいか・・・」


「もう一度言いますけど、よく処刑されませんでしたね・・・」


「処刑される訳無いだろ! こう見えてもアドニカ第6王子だぜ! しかも、しっかりと奴の証拠を確保しているしな!」


「マジか! もしかして、俺、不敬罪やその他の罪でしょっぴかれないか?」


「それはない、そんな事気にするほど、肝っ玉は小さくない! いつも通りフレンドリーな話し方でいいぞ」


「そうか、なら良いんだが・・・でも、左遷されたと言う事は、それ以上の何かをしたんですよね?」


「あぁ、先程の話だが、やった場所が国王誕生日の式典会場、しかも式典の真っ最中で大暴れした・・・」


俺は一瞬クラっときた・・・ある意味、この人、俺と違う意味でヤバいわ!


隊長は話を続ける・・・


「流石にさぁ、他の騎士団は強かったぜ・・・第7騎士団を潰した後、速攻で他の騎士団に身柄拘束されてしまった・・・」


「こんな所で話すレベルの話ではないと思うが・・・」


「大丈夫だよ、有名な話だからな、問題無い・・・そしてな、最終的な処分だが、俺と第5王子の王位継承権の剥奪、第5王子は各種重犯罪が発覚した為、永遠的に地下牢で幽閉、第7騎士団は解体、俺が指揮していた第8騎士団も防衛団に降格し辺境であるここで活動・・・現在に至る訳だ! ハハハ!」


「全然笑えないですよ・・・その話」


「しかし、なんで、あの屑殺さなかったんだろうね? 不思議でならないよ・・・それに伴い、そいつの母親である第3王妃も最低限の資産以外没収され、王都追放となったんだよなぁ・・・そいつも人間の屑だから、恨まれた領人に暗殺されたんじゃねぇのかな・・・知らんけど」


「もし、隊長が見つけたら・・・」


「そしたら、とっ捕まえて、あいつが苦しめた領人の前に喜んで突き出してやるぜ・・・後は知らん」


「なんか、アドニカでも100年したら変わるもんだな・・・悪い意味で」


「でも、国と運営としては上手く行っているぞ、今回だって、俺みたいな馬鹿がいるから大惨事になる事件は未然に解決、ここは無能な兵士の左遷先として機能しているしな・・・」


それを隊長が言うと、そばで飲んでいた酔っ払いが「・・・別名、無能兵士廃棄所とか極超強化合宿所とか呼ばれ、国に多大の貢献をしているだろ?」なんて言う。


俺は隊長に聞いた・・・


「・・・なぁ、余り内情は分からんが、出来る人間と出来ない人間のみで二極化になってないか?」


「仕事が出来ないクズの兵士が野盗化されても困るしな、どうせ役に立たないんだ・・・辞めた後にアドニカ兵の恐ろしさを宣伝してもらうのに丁度良いだろう?」


「いやいや・・・全然良くないでしょ!」


「あと、出来る奴は、騎士団採用試験で1発合格出来るぐらい優秀になる・・・たまに、自ら志願する奴もいるぐらいだぞ・・・」


「あの城門での訓練みたいのだろ? 極端過ぎるだろ!」 


「なぁに・・・いま語った訓練は、ほんのごく一部だ・・・そんなことより、そちらも過去、どんな事があったか聞かせろよ・・・」


「・・・はぁ、分かりましたよ、仕方が無い。」


まぁ、俺の過去もドン引きする様な酷い有様だしな・・・ある意味、似た者同士か?

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