第15話 スケルトン、治療と予防の作業を開始する。

「スケルトンって良いですねぇ、睡眠も、食事も必要無く、病気もならないんですよね? アンデットって憧れるなぁ!」と言われる事がある・・・。


だから俺は素直に答える「確かに食事も睡眠も必要ないし、病気にもならない・・・」


俺は言葉を続けた・・・。


「だが、幼馴染や同僚はみな死んだ・・・しかも、俺はこれを望んでこうなった訳ではない・・・」


「意外ですね? 永遠の命って人類の皆が求める願いの一つでないのですか?」


「生者の特権と言うモノが有るだろう? 死んだら出来ない事だらけだぞ・・・生きている内に、それを感じ取り『生』を楽しめ・・・」


「はあ・・・すいません、よく分かりません」


「それは、君が恵まれている証拠だ・・・困れば困るほど考えなければならない、そして分からないが許されなくなる・・・大抵は失ってから大事なモノに気付くものだ」


俺は言葉を続けた・・・。


「意志を持つ以上、永遠と難題、戦闘が発生しそれに翻弄ほんろうされる事になる・・・、善良な者として活動をするほど、、苦悩する・・・それは幸せか? それが良いと思うなら1つの選択肢になると思うが・・・悪に染まるのだけは、余り、おすすめはしないぞ・・・目の前に経験者がいるだろう? 『幸せ』か『不幸せ』かで言うと自他共に『不幸せ』と言えるな」と言う。


更に言葉を続ける・・・。


「まぁ・・・必要でないなら、余り多くは望むな・・・過剰な力は身を亡ぼすからな・・・気が付いたら遅いって事も有るだろ? 過去には戻れない・・・身の丈に合った範囲で生きた方が幸せと思うが・・・まぁ、よく考えた方が良い、自分の人生だ・・・ただ、俺みたくなるなよ、苦労する」


それを言うと、大抵の人は、「やっぱり人間が良いです・・・」と言う。


それでも中には『闇落ちしたら』とか『暴力で世界征服してみたら』とか言う奴もいた・・・。


そう言う奴にはこう言ってやる「俺らの周りで、正当な理由なく迷惑を掛ける事をやる奴は俺の敵だ! クズならば、この世に生まれた事を後悔するくらいの苦痛を味わせてやる・・・あと、その様な事を考えている奴、俺だけと思うか?」と。


それを聞いたそいつらは、血の気が引いた顔で慌てて去っていく・・・。


・・・


・・・余りの忙しさに入国前の出来事を回想してしまった。


忙しすぎて、現実逃避してしまったが・・・精神的に疲れているのだろうか?



「くっ、くぉぉぉぉぉ!!!!! よし!漆喰しっくいで出来たぞ!! 感染者が通過した壁や床を塗りたくれ!!! 前日言った通りに近所のガキどもに手伝わせて1日分の労賃はヒール券で支払え!!! ・・・なにぃ? 貝殻集めた近所のガキに配るヒール券が無いって?  馬鹿野郎!!! 昨日の内にヒール1回分の券を100枚は作れって言っただろ!!!何やっているんだ!!! くそぉ!仕方が無い・・・立体魔法陣!!!!・・・おら!100枚作ったぞ! さっさと配ってこい!! 早くしろ!!!」


「おい!ここにあった大量の油は? 無い? 無いだと!!! あそこにあった油、何処に持ってって言ったんだよ!!! 分からない!? くそ!!! 仕方が無い・・・石鹸作りは後回しだ・・・油が無いと、漆喰が皮膚についた時、薬傷やくしょうするかもしれないだろ!!! 残りの油はこれしかないが・・・そちらに回す!!! 漆喰を使わせる前に油で必ず保護させろ!!! あと、目に入らない様に注意喚起しろ!!! 眼に入ると失明するぞ!!! 」


「ヤバい・・・カルキや石鹸作っている余裕が無い・・・もう、消石灰と焼却灰で代用しよう・・・」


「その容器の中に水はあるのか? 無い? 経口補水液を作らないといけないと言ったよな!!! 100Lの水を沸かせとも言ったよな! 大量にあるのは薪だけだと!!水はどうしだ!!! 説明しろ!!!」


「糞便ゲロの処理方法・・・患者の治療と看護の注意点を教えるマニュアル作り・・・どうなっている? 出来ていない・・・そうか、お前たちに期待した俺が馬鹿だった・・・でも、現状報告ぐらいも出来ないバカだとは想定外だったよ・・・」



あぁ・・・切れそうだ、堪忍袋が切れそうだ。


余りのポンコツぶりで怒りを通り越して、悟りが開けるのかなぁ・・・うん、それは無いな。


まぁ、普通の兵士ってこんなものなのか? レベルが低すぎて話にならん・・・。



とりあえす、広場に作業を行っている兵士全員を呼び、メインで作業する兵士2人を前に立たせた。


そして、ナッシュは膨大な力を開放し始めた、殺気を出しながら・・・


ナッシュの膨大な力に、周囲の建物と大地が小刻みに揺れ始める。


そして、膨大なエネルギーの為、ナッシュの体から電気がバチバチと音を立て始めている・・・触れただけで即死するだろうと分かるぐらいにだ。


兵士たちは、今まで『あのスケルトンは温厚だから、適当にやればいいや』と思っていた・・・が、とんでもない化け物だった事を、今理解したのだ。


そして、そのふざけた対応で、取り返しがつかない状態になっていると・・・


「おい!・・・命令を無視したり無駄な事やったら死人が出ると思えと言ったよな? もしそうなった時には、後で半殺しにするからな・・・とも言ったよな。 ・・・しかも、それに対して、お前たちは首を縦に振ったよな!!!」と殺気を出しながら言うと、全員、恐怖で、涙、鼻水を出しながら糞尿を漏らした・・・。


兵士たちは、彼を舐めていた事に本当に後悔した・・・間違いなく、ドラゴンよりヤバい相手を怒らせてしまったと。


ナッシュは語る・・・。


「これ以上、俺の手を煩わす事は無いよなぁ・・・?」


その言葉を発した瞬間、ナッシュを中心として地割れが発生し、小石等が粉々に砕け散った。


全員、恐怖の余り、腰を抜かして、無言で、全力で首を縦に振り続ける・・・。


「まぁ、俺自身は不眠不休で対応出来るのが、人間はそうはいかん・・・適度に休まないと、過労で弱り感染するリスクが増えるから、その面、考慮して働け・・・以上だ、解散!」


兵士たちは、慌てて脱兎だとうの如く現場に戻る・・・。


ナッシュは、兵士たちの去り際に大きな声でいった!


「私は、極力、を心掛けている!!!覚えておけ!!!!」と・・・。


彼らは業務を開始した・・・そして、今まで生きていた中で一番頑張った・・・。


そして、彼らはこの先待ち受けているお仕置きに恐怖するのである。

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