第14話 スケルトン、治療準備する。

何だろなぁ・・・また、碌でも無い奴に振り回されている。


ある意味、ダンジョンの中の方がストレス掛からんわ・・・人に迷惑掛ける事も、掛けられることも無いしな。


まぁ、なんだ・・・ダンジョン入る前の頃に戻りたいとは思わないが。


狂っていたんだよなぁ、あの頃は・・・。


余りにも理不尽な環境に自暴自棄になり、死ぬのが目的で、やからどもをあおり、敵対したら半殺し、暗殺しようとした奴らは皆殺し・・・好き勝手やっていたが、なんでだろうなぁ・・・不思議と死ななかったんだよなぁ。


そして、付いた二つ名が『狂乱のナッシュ』だぜ・・・歴代のキチガイとして殿堂入りしてしまった・・・うん、黒歴史だ・・・あの馬鹿どもの事を考えるのを避けるため、昔を回想したが碌な事思い出さないな・・・。


『オプティマ』か・・・ダンジョンに入って初めて入手したスキルだが・・・謎が多いんだよな、このスキルは・・・他の魔法と重ね掛けすると、威力上がったり、下がったり・・・正直よく分からん。


なんの効果が分からないまま、気付いたらバッシブスキルになっていたしな・・・考えても仕方が無いと思考放棄しているんだよなぁ。


まぁ・・・そんな事よりも、感染予防の対策が忙しい。



「はぁ? なぜ俺がここから出れないんだよ!緊急事態だろ! どうやって大量の資材を入手するんだよ! これっぽっちじゃ全然足りねーよ! どうなっているんだ!」


渋い顔をした兵士たちが、「すいませんが、今はこれしかないんです・・・」と言っている。


「くっ、足りない物は仕方が無い・・・おい! それなら漆喰しっくいはあるだろうな? 感染者が通過する壁や床に施工しろ! ・・・それも無いだと!!! 近所のガキ捕まえて貝殻集めさせろ!!! 5kgに付きヒール一回分と言えば楽に集まるだろ!!! 加工して作ってやるから早くしろ!!!」


「まずは収容施設の建設か、特にトイレ・・・おい!全力でこの雑草を駆り集めろ!! ちゃんと束にしろよ・・・屋根にも使うんだからな!」


「立体魔法陣で簡易プラントを作り、貝殻から酸化カルシウムの作成・・・塩から水酸化化合物と塩酸を作るか・・・消石灰とカルキの二種類の消毒剤の作成と石鹸作りは急務だ・・・言っている事が分からない? そうか、なら言われた通りにしろ・・・」


「その前に容器はあるのか? 足りない? ・・・追加でガラスや陶磁器などの容器も作るのか・・・やる事沢山あるな」


「あと対処療法で、経口補水液を作らないといけないが・・・おい、100Lの水を沸かせ! あと塩と薪も大量に用意しろ・・・塩が無いだと! 砂糖だけでなく、塩も錬金する事になるのかよ!!」


「糞便ゲロの処理方法・・・患者の治療と看護の注意点を教える・・・お前らは、それに基づきマニュアルを作り、そして関係者の説明してもらう・・・お前ら覚悟しろよ・・・説明が上手くいかなかったり、教団が下手に絡んだら地獄の激務になると思え」


それを聞いた兵士たちの目が死んでいる・・・


「クソッタレ!俺以外、これらをやれる奴はいないから、同時進行でこれらをやるしかねぇじゃねぇか! しかも1からだと・・・ふざけるな!!! 馬鹿じゃねぇの!!!! 無茶押し付けやがって!!!!」と嘆くナッシュ。


「おい!物資が足りない以上、かなりシビアだ・・・命令を無視して無駄な事やったら死人が出ると思え! もしそうなった時には、後で半殺しにするからな・・・分かったな?」と殺気を出しながら言うと兵士たちは全力で首を縦に振った。


一人の兵士が聞いてきた。


「ナッシュさん、クリーンの魔法でどうにかならないのですか?」


「ならねーよ・・・基本的に、あの魔法は対象の汚れを取り除く魔法で、対象物以外に汚れが移動するだけだ・・・浄化にはならない」


「なら、浄化の魔法を使えば良いのでは?」


「体内で、感染源が増殖しているのだぞ! 体内の感染元まで浄化は出来ん!」


「それでは、神の加護で・・・」


「俺は無神論者だ、教団に頼むとしても大した事せずに、多額の金を巻き上げられておしまいだ・・・さらにもめ事増やしたいのか? 今の状態がまだマシと思える状況になるぞ。」



とりあえず、発症初日に、兵士全員にマスクと手洗いをする様に命じた・・・。


マスクは容認された・・・が、うがいと手洗いもやって欲しいが、水源が限られているので、手洗いすら上手くいかない。


文化の違いもあるしな まぁ、期待はしていない・・・マスクだけでもいくらかはマシになるだろう。


しかし、マスクは1日一回は洗う様に指示したが、どこまでやってくれるか不明だ・・・。


副隊長に、「場合によっては一時的にクラスター感染が発生する可能性が高い為、今後一般の方も感染するだろう、体調が悪い方は死亡する、覚悟する様に」と警告をした。


天幕の代わりに木の棒と藁で簡易宿舎を作った。


そこに、藁で作ったベットを用意し、あの生牡蠣で当たった患者を寝かせる。


少し離れた所には、これも藁と木の棒で囲ったトイレを作った、穴はかなり深く掘ってやったぜ・・・石灰が間に合わなかったので、排泄が終わったら、代わりに焼却後に出た灰を撒く様に命じた。


この施設は、隔離が終われば焼却処分だ・・・感染元をまとめて殺菌する。


衣服は後で、カルキと石鹸で消毒と洗濯だな


奴らが通ってきた通路は念の為、クリーンとホーリーライトで浄化した・・・ここは、明日、集めた素材で、消石灰と漆喰を作り、塗りたくる事になるだろう。


俺自身は不眠不休で対応出来るのが、他の兵士はそうはいかん・・・適度に休ませないと、過労で弱り感染するリスクが増える。


戦場なら、寝ないで戦えと言えるが、こればかりはそうは行かんからな・・・。

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