第13話 スケルトン、入国する。

「ここからここがナッシュさんの休憩室謙作業場になります・・・ここで、寝食をする事になります」と副隊長が案内してくれた・・・が、俺はあまりの状況に膝から崩れ落ちた。


「マジか・・・作業場は? さっきの小屋以外は何も無い20m四方の空間しか無いが・・・まさかこの空間が全部とは言わないとだろうな?」


「はい、その通りです! 好きにカスタマイズして下さい」


「おい・・・嘘だろ! 本当に小さな小屋? 小屋と言うより物置だろ! 寝るにしても最低限のスペースしかないぞ!」


「・・・上手く改造して下さい、余程の事無ければ問題有りませんので」


「イヤイヤ、待てよ! その小屋だってボロボロだろう! ブッ壊して新しく作った方が良いぐらいの状態だぞ!」


「では、そうして下さい」


「なぁ、ここ、元は薬草畑だったのか? 麦の1種が生い茂って実っているのだが・・・食えるのか?」


「それは、雑草です。畑は予算と人員が足りず放置した結果、こうなりました。 あと、その雑草、食っても不味い上に腹を壊します。 繁殖力が強いので全て刈り取って燃やして下さい」


「鳥の餌には?」


「なりません・・・野鳥ですら食べませんので」


「おい、0からでなくマイナスからのスタートだろう・・・なんてこった」


「すいません、色々と制限があるので、今提供できる場所がここしかないのです」


「まぁ・・・仕方が無い、仕事をやるにしても道具が無いと出来んぞ」


「すいませんが、当面の間はナッシュさんの手持ちの道具でカバーして下さい・・・必要に応じて準備したいと思います」


「『思います』でなく『準備します』だろ! 人の財産に手を掛けたらダメだろ! それとも俺の道具を買い取るか?」


「一応、上に言って検討したいと思います・・・期待しないで下さい」


「そこまで酷いのか? まあ、それは置いといてだ・・・草刈り手伝ってくれるよな?」


と聞いた矢先、他の兵から緊急報告・・・食中毒で3人が倒れたとの事だ。


副隊長がしかめ面して嘆く・・・


「くっ・・・盗賊の討伐などで、ただですら忙しい時に! なぜ、こんな時期に生牡蠣を食う!」


「そりゃあ、旨いからだろ・・・」


「おい!いつ頃食べて、発症した!」と兵士たちに聞くと、その3人は昨日の朝に食べて、今日の昼に発症したとの事だ。


「あいつら、バカなのか! この前も豚レバーを生で食って当たったばかりだろ!! なんで、先人から『やるな』と言い伝えがあるのにそれを破る!?」


「う~ん、控えめに言ってバカだな、そいつら・・・牡蠣で当たった場合、大抵は感染症だな、感染してから1~2日の潜伏期間があるぞ・・・」


「随分と詳しそうですね・・・」


「昔、俺が軍隊に所属した時の出来事だが、同様な事やった馬鹿がいて、軍行中100人中80人発症して、進軍不能になった事がある」


「・・・本当ですか?」


「本当だ・・・無理に業務させると、周りに感染し、部隊が一時的に壊滅するぞ・・・」


「因みに、感染経路と対策は?」


「感染した食べ物を食べた後に発症する・・・

その際、体外に出た嘔吐物や排せつ物が主な感染源に変わる・・・それが付着したり、乾燥して飛散しする為、周りも感染物質を取り込んでしまう・・・結果、感染拡大する、そいつらの症状が出始めてから1週間程度は隔離した方がいい」


「・・・ナッシュさんはスケルトンですよね?」


「あぁ、スケルトンだが・・・なんか嫌な予感がするのだが?」


「スケルトンって病気にならないのですよね?」


「・・・ならないな。 言っとくが糞尿ゲロ塗れの奴を看病するのは嫌だぞ・・・俺、こう見てもだからな」


潔癖症って説得力無いですよ?」


「こう見てもなぁ・・・ 俺は、毎日クリーンの聖魔法かけているんだぞ!」


「いやいや、それなら特に、この様な仕事に最適な方はあなたしかいない! 頑張って下さい!」


「何を頑張るんだよ! 嫌だよ! なんで、鹿んだよ?」


「ナッシュさん・・・それが防衛団です、部隊に入団したからには、やってもらわないと」


「誰もやりたがらない仕事を、入団初日にやらせるって酷くない?」


と言って下さい・・・」


「物は言いようだな・・・そんな言葉で! 」


「それでは、です・・・副隊長の権限により命令します・・・治療と看病を行って下さい」


「マジかよ・・・切ないな。 アフターフォローは有るんだよな? 物資が無いと、治療や看病が出来んぞ・・・聖魔法だって使い慣れていない魔法など、ぶっつけ本番で使う訳にもいかないからな!」


「物資については恐らく大丈夫だと思います・・・いや、厳しいかもしれません、代わりに部下を付けます・・・しかし、隔離場所の件ですが・・・」


「おい、まさかその三人、ここに隔離なんて言わないだろうな? 見ての通りここには何もないぞ! 天井も無い、トイレも無い、治療施設も無い、無理だろ!」


「ナッシュさん、錬金術使えましたよね?」


「・・・あぁ、使える、使えるが、ベースとなる物と知識が必要なんだぞ!何もない空間から物質作成なんて出来んからな! ちなみに治療薬は作れない! ヒールによる対処療法だけだ!」


「そうですか・・・仕方がありません、それで行きましょう。あと、土魔法も使えましたよね・・・ここに隔離病棟を作って下さい」


「まて、本当にここだと!!! しかも俺が作るの? どっか外で天幕作って対応しろよ!」


「実は、天幕が全て使用しておりまして・・・手元にありません」


「おいおい・・・無い無い尽くしゃないかよ! ・・・まあ、あの雑草を利用して天幕でも作るか・・・支柱ぐらい用意しろよ! ちなみに、これから住む所が、糞尿ゲロ塗れなんて認めないからな! 必ずここ以外で休憩室と作業場を用意しろ!!!」


「一応、前向きに検討します・・・」


「あと、この件に関しては、活動費以外の権限が無いと話にならんぞ・・・」


「では、先ずは、そこの2人をお貸しします、好きに使って下さい・・・後で、追加人員を送りますので」と副隊長が言うと、その2人は見る見る内に顔が青ざめた・・・。


「おい、お前ら・・・感染症は時間の勝負だ、1週間は忙しいぞ、覚悟しておけ」


これからの苦行を思ってなのか、絶望的な顔をして二人が項垂れる・・・


「はぁ・・・。 くそぉ! 何なんだよ! なんで、物事がスムーズに行かないんだよ!」と愚痴ってしまうが、仕方が無い・・・。


とりあえず、その馬鹿どもは、治った後で、徹底的にシバく・・・。


二度と馬鹿な事をやらないと思う位に痛めつけないと駄目だな・・・。



しかし、感染症か・・・面倒臭いわ。


ここの地域の感染予防の知識と予防意識がどのくらいか分からん。


また、教団の馬鹿どもが出てきて、妨害するだろうなぁ・・・。


感染拡大しなければ良いが・・・。

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