第9話 スケルトン、便利屋始める。
あれから10日経ちました・・・今だに入国の許可が下りません。
まぁ、薄々感じていたが、モンスターだからなぁ・・・そう簡単に許可は下りんだろうな。
しかし、このまま何もしないで待つ訳にもいかないだろう・・・お金無いし。
だから、初心者の冒険者を見つけて、軽く装備を手入れしたり、ポーション作って売ったりした・・・門番の目の前で。
変な事やってませんよ~と言うアピールをしてないと、一生入国出来ない気がするからな・・・と思っていたら、門番が「今やっている仕事だが、入国したら、ギルドに登録しないと違法だぞ」と突っ込まれた。
止めないのかと聞いたら、「他国での法律違反は管轄外だ、勧めはしないが・・・あ~、これは独り言な、害をおよぼしている訳ではないし、ぶちゃけ他の冒険者達が怪我して死んでしまうよりマシだ」
中々人間味があって良いな・・・。
意外にも、門番の人は博学で多能なのには驚いた。
アドニカでは、腕っぷしだけでなく、一通り何でも出来ないと、門番の資格が得られないとの事だ。
しかも、門番は騎士団の登竜門になっている・・・皆さんエリートだったんですね、そりゃ訓練も凄い訳だわ。
今は初心者の冒険者に「格安で装備のメンテナンスをやっやるよ〜」ってな感じで言って呼び込みし、小遣い程度の小銭を稼いでいる。
普通のベテラン冒険者は、俺みたいな怪しい奴の手を借りようとしない・・・世間知らずの新人か、もしくは依頼に失敗してお金が無い者などの訳アリの者が集まる。
安くやっているとはいえ、数をこなせばソコソコお金が貯まる・・・中に入ってから、どれだけお金が必要になるか分からんしな、出来るだけ稼ぎたいところだ。
入国する前に色々調査は必要な様なので・・・仕事をしながら雑談して情報収集している。
そんな雑談だが、色々と為になったり、驚いたりして毎日が飽きない。
一番驚いたのはダンジョンに潜って100年以上経っていた事だ・・・まぁ、ダンジョン自体かなり深かったし、かなり無駄な動きもしていたからなぁ。
しかし・・・なんか切ない。
故郷の仲間や幼馴染に会えると思っていたのだが、あの時が最後の別れになってしまうとは・・・あの後、みんなはどの様な人生を歩んだのだろうか?
それを知りたくても、故郷のガレットで襲撃されたからなぁ・・・あっ、そう言えば、俺の貯金や財産、どうなった?
今、俺が身につけている冒険者ギルドのダグは使えない・・・悪用され過ぎて、信用出来ないだとよ。
100年前のスタンピードの時に、冒険者の死体に付いていたダグを拾って成り済ます犯罪が横行したとの事だ。
イヤイヤ、そういう輩がいるから世知辛い・・・。
それと、故郷のガレットだが、スタンピードの際に集めた輩がギャングになり、今は国内1ヤバい犯罪都市と言われているとの事だ。
違法薬物、人身売買、違法人体実験、汚職、横領、詐欺、強盗、殺人、監禁など、犯罪の見本市みたいな状態・・・正に世紀末な状況で、人を見たら犯罪者と思えと忠告された。
一応、俺の故郷なんだけどなぁ・・・あの時、攻撃を受けて追い出されたのは、まだ運が良かったのか?
今日も随分と並んでいるなぁ・・・まぁ安いからな。
「ナッシュおじさん、今日はこれ研いでくれよ」と言ってバスターソードを出してきた。
「坊主、力ずくでやったら、すぐ刃が欠けるだろ!バスターソードの寿命が縮むぞ・・・もう少し弧を描く様に使え! 5カネーな・・・何だよ・・・仕方がねぇな、3カネーに負けてやる」
「すいませんナッシュさん、この前、依頼失敗してお金無いんですよ・・・低位のポーションですけど負けてくれません?」
「原料取ってこい! そしたら負けてやる・・・」
「この防具、ここの部分を強化して欲しいんだわ、出来る?」
「エンチャントはせんぞ・・・強化繊維で良いか?」
「ナッシュさん! ヤバい呪い罹っちまったよ! 助けてくれ!」
「またお前か! 何やったんだよ! また変な事やったんだろ! ったく・・・ ディスペル・アンチカーズ!」
「ナッシュの親父! 仲間の腕が、腕がモゲちまった!! 頼むよ! 急いでくっつけてくれよ!」
「親父と呼ぶな! お兄さんと呼びなさい! あ~派手にやったねぇ・・・ よし!固定完了! ハイヒール!」
「おい、これを直してくれ・・・」
「何で、緊急でもないのに、列の途中で割り込んだ奴の相手をしなくてはならない? 直して欲しければ、さっさと列の最後尾に並べ!」
「私、マーガレット様と言う薬師の弟子をやっておりまして・・・(15分後)・・・てな訳で、この薬草の乾燥方法を教えてほしいのです!」
「随分と前置きが長いな、次は話をまとめてから来てくれ・・・その薬草の乾燥方法は・・・」
「俺と勝負しろ!」
「帰れ!」
・・・
・・・イヤイヤ、今日も沢山働いた。
まぁ、当面の間はこんな感じで働き続ける事になるはずだ。
願わくは、安心出来る居住地と定職だな・・・一つ一つ確実にこなした先に、それが有るだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます