第7話 スケルトン、ソロで旅に出る。
スケルトンの良いところは、喉が乾かず腹が減らないところだ。
あと、トイレと睡眠も不要だ・・・ある程度は骨休みが必要だが。
つくづく思う・・・スケルトンってソロの状況下では、最強ではないかと。
意外かもしれないが、普通、旅や戦場、サバイバル状況下では、水や食料が荷物のおおよそ半分を占める・・・結構重い、行動力も低下する。
もちろん土地勘が有れば、ある程度は荷物を減らせるのだが・・・。
あと、地味に大変なのは、寝床の確保と食事とトイレ・・・。
初心者は夕方の日が沈む寸前で、これらの準備を始める。
暗くなってから、『さぁ、準備だ!』では遅すぎるのだ。
小説などでは、日が沈んでから準備をして食事している場面が多いが、体験したら解るだろう・・・あり得ない。
野営地の周囲の安全確認項目だが、周囲に猛獣やモンスターや盗賊はいないか、がけ崩れや雨天時に洪水で流されないか、有害物質などに汚染された場所ではないか、非常時の退路は有るかなど、確認する事が多々ある。
暗くなってから野営地の安全の確認? 土地勘ある夜行性の動物であるまいし・・・普通は無理だろ!
ソロなら尚の事だ! 普通はソロなら夜は危険過ぎて安眠出来ない・・・場合によっては朝と夕方に行動し、昼間は寝て、夜は寝ずに警戒する事もある・・・日が沈んでからの行動なんて、日中出てくるモンスターでもやらんぞ。
そう、あの嫌われ者の『ゴブリン』でもやらん・・・。
馬鹿な事を考えている新人がいたら言ってやりたい・・・『暗がりの中、ソロで食事作りながら周囲を警戒する、出来るか? 暗くなってからだと無理だろ』と。
たまに危険地帯で、暗くなってから準備をして温かい飯を食べる変人がいる・・・しかもソロで。
あいつら頭おかしいし、身体能力も異常だ! あれを人間としてカウントしてはいけない。
真似したら死ぬ・・・そう思った方が無難だ。
食事を作るにも手間と時間がかかるのだ。
温かい飯を作るのに、準備と後片付けを含めて30分は必要になる・・・少ない時間の中で野営時に温かい飯は贅沢そのものと言うのも理解出来る。
場所が悪ければ、軍行しながらの食事になるしな・・・。
あぁ、あの頃が懐かしい・・・干し肉や乾物が中心の軍行、レーションは贅沢品、あんな思い、二度と体験したくない・・・と言うより、ようやく休めると思いきや『敵に勘付かれるから温かい飯は無しだ』と言われた時の絶望感を味わっている人間はどれだけ居るのだろうか?
一層の事、『敵が食事している頃に合わせて襲撃して食料奪ってやろう』と思った事が何回あったか・・・
あと、旅や野営で1番ヤバイ生物は『人間』だ・・・軍隊でも結構ヤバいが、見ず知らずの人間と野営するなんて危険過ぎる・・・それならソロの方がまだマシだ。
下手にトイレに行ってみろ、用を足している最中に後ろからドスッと殺られておしまい・・・後は死体から身ぐるみ剥がされ、運が良ければ埋められ、悪ければ猛獣の餌だ。
もしくは、荷物を盗まれる・・・あぁ、切ない事を思い出してしまった。
昔、荷物を盗まれ、付き合っていた彼女に『信頼しても信用するな』と説教され、ぶん殴られたなぁ・・・それがきっかけで別れる事になったんだよなぁ・・・本当に切ない。
あの時、『他人に安心、安全を委ねるな』と、心に誓ったものだ。
あと、山の中で尻拭き紙の代わりに草の葉っぱをよく使うが、毒草だったらヤバいので使う葉っぱにも注意が必要だ!
『イラクサ』なんて、まだマシだ・・・。
もし『ギンピ・ギンピ』でお尻を拭いたら、この世の地獄を味わう事になる・・・死なない分だけ質が悪い。
余りの激痛が長期間続く為、発狂して自害する奴もいるぐらいだ。
あと、周囲に人気が無い所での野営中に、近づいてくる奴もヤバい・・・下手したら、殺され、身ぐるみ剥がされ、死体は野生動物の餌になる。
あの時はヤバかったなぁ・・・いきなり襲撃、荷物置いて全力で逃げたぜ。
荷物背負いながら戦闘なんて普通は出来ないから降ろすしかない・・・最低でも10kgぐらいになるからなぁ。
モンスターや猛獣に襲われて、荷物を奪われた事もあったなぁ・・・。
あいつら、荷物狙いだから、二手に分かれて襲ってくるんだよ! 腹立つよなぁ・・・。
近場の街に行くとしても、道は整地されていない所が大半で、町から町まで一番近くて5km、遠い所になると50km以上あるから、そう簡単に移動が出来ない。
荷物を失い、食料や水が無くなれば、現地調達するしかない・・・これがまた大変なんだわ。
食える野草が分からなければ食えないし、そこの地域がどんな所か分からないと、どんな危険が有るか分からない。
まず、水の確保は最優先事項だ・・・
腹減っても戦えるが、脱水症状では戦えない・・・と言うより、動けなくなる。
荷物が無い状態でどうやって水を確保するのか・・・川行けばいいだろと思うだろうが、その川に寄生虫がいる場合がある・・・しかも治療法が確立しておらず致死率100%の場合もある。
鉱毒が流れている事もある・・・川に魚や虫が居なければ、その可能性が有るので、よく観察しなければならない。
適当に木を切って筒にして、一部を炭にして浄化したらいいだろうと言う意見もあるだろう・・・その木、猛毒だったらどうする?
その木がマンチニールだったら最悪だ。
葉や木の幹に至るまで、どこをとっても毒を含む・・・触れたり、雨が降り木を伝った雫を浴びただけで毒に侵される。
一見美味しそうなリンゴの実をつける・・・超猛毒だけどな。
別名「死の子リンゴ」と呼ばれ、1個で20人殺せるほどの猛毒だ。
なんでだろう・・・そんな猛毒の木なのに防風林として使っている地域が有るんだよ。
なら、猛獣を狩れば良いと思うだろ・・・猛獣だって基本的に攻撃してくる。
さらに、毒を持つ奴もいる。
食えたとしても、生で食ったら寄生虫に当たったりする事もある。
地域によっては、湿度により中々火が起こせない。
絶望的だろ・・・知識が無いという事は、こう言う時に困る。
最終的には、リスクを承知で挑戦するしかなくなる。
今が有るのは先人の犠牲があったから快適に過ごせるのだ・・・ご先祖様に感謝しよう。
あと、魔法で解決出来る場合もあるが・・・そもそも魔法を使える奴はほとんどいない。
使えても、火の魔法が大半で、聖魔法など使える奴は本当に1握りしかいない。
錬金魔法も街に1人いるかいないかである・・・。
だから、大抵の場合、知識を身に着け行動するしかない・・・魔法だって万能ではないしな。
マジックボックスが有ればと思うが・・・マジックボックスなどは空想の小説の世界だけだ。
昔、時空魔法を応用しマジックボックスを作ろうとした国があった・・・結果、入れた物は全て飲み込まれ、取り出し不能なマジックダストボックスが完成した。
これだけ聞くと、まだ利用価値が有りそうだが、問題はこれからだ・・・そのマジックダストボックスが1カ月後に暴走し、半径15km以上が爆発により壊滅! その衝撃波による被害は100km以上におよび、有害物質が降り注ぎ、生き残った人をさらに苦しめ、実験を行った国が滅んでしまった。
『時空を操るのは神のみ』と言う事が証明された瞬間である。
そして、二度とこの様な惨事が起きない様、『人は時空を操ってはならない』と言うルールが各国で作られた。
物理法則を下手に破るとこうなる・・・制御が出来ないのなら、手を出してはいけない。
・・・で、現在の私はスケルトン。
食料も水も睡眠もトイレも一切不要で、夜も昼間の様に行動出来るときた。
しかも、有害物質による影響もなければ、荷物も無い・・・装備は黄金セットのみ。
必要な物があれば、魔法でどうにか出来てしまう・・・。
若干、物理法則を無視した存在になっているが・・・許容範囲だろう・・・と思いたい。
しかし、ここまで楽だと逆に物足りなく感じるのはなぜだろう?
その分、その後にトラブルが発生して苦労しそうな気がする・・・気のせいであれば良いのだが。
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