第2話 スケルトン、検証する。

いやいや・・・酷い目にあった。


子汚い盗賊を触るのは抵抗が有ったが、嗅覚が無いのが幸いだ・・・まぁ、身柄を拘束する為には仕方が無い、頑張って縛り上げるとしよう。


商人を助けに行ったのに、まさか商人まで攻撃してくるとは・・・まぁ、見た目がこんなのだしな、逆の立場でも攻撃するかどうか非常に迷うところだ。


拘束している最中に盗賊共が「あの商人だって悪人だろ!!!」「『ラッシュ』奪って何が悪い!」とか言っていたので、商人も念の為、ロープで拘束した。


全員縛り上げてから、エリアハイヒール掛けて身体は完全回復した様だ。


初めて使う魔法だか、上手くいった様だ・・・いつか検証しようと思っていたので丁度良かった、ハハハ!


『実戦で仲間に使って失敗しました』では、シャレにならないしなぁ・・・検証は大事だ。


気兼ねなく人体実験出来るクズ共がいて本当に良かった・・・誤ってオーバーヒールになり、クリーチャーに変異するのも見てみたかったが、これはこれで良かったと言う事にしよう。



魔法で拘束を解こうとしている奴がいるな・・・魔法強耐性の特殊カーボンファイバーだぞ、解ける訳ないだろ・・・まぁ、こうなったのも日頃の行いが悪いからだろう、実に滑稽こっけいだ。


おや?こちらは仕込みナイフで縄を切ろうとしているのか?


そんな物では切れん・・・無駄な努力だが、一生懸命頑張りたまえ・・・私は満足だ。



しかし『ラッシュ』って何だ?


そこまで盗賊共が目の色変える荷物とはなんだろねぇ・・・。


昔、街中で流行って中毒で問題が多発した為、領主が禁止薬物にした麻薬が有ったな・・・たしか、『カリッシュ』と言う薬草だったと思うが?


『ラッシュ』・・・?


乾燥してすりつぶした物かねぇ・・・まぁ、カリッシュなら、そこにも生えているし見分けがつくが・・・。


ん?


馬車の中に袋に入った白い粉しか無いのだが? しかも一袋・・・。


まあ、袋の中身を盗賊共に見せたら分かるだろう。


「おい!てめえら!『ラッシュ』ってこれの事か?」


「そ、それだ!それが『ラッシュ』だ!」


・・・塩か砂糖みたいなやつが? 高級調味料にも似た様な物は有るが?


「本当に?」


「ああ!間違いない!」


「分析もせずに、なんで断定できるんだよ!高級調味料かもしれないだろ!」


「あの闇商人がそんな物扱う訳ないだろ!!」


闇商人と言われた者をみたら、慌てて目を背けやがった。


アイツら闇商人だったのか・・・なるほど、道理であの様な行動をした訳だ、納得した。


「おまえら・・・この『ラッシュ』と言う物は好きか?」


盗賊の全員が首を縦に振る・・・。


「どのように摂取する?」


「飲み物に混ぜて飲んだり、草に混ぜて火をつけて煙を吸ったりして取る・・・」


「そうか・・・どの様な効果がある?」


「嫌な事を忘れてハッピーになる・・・」


「薬の様だから、いつまでも続かないだろう? どのぐらい続く?」


「取る量にもよるが、半日から丸一日ぐらいだ」


「ちなみに、これ、だろう?」


「・・・そうだ」


「まあいい・・・物は試しようだ、逃がしはしないが、お前にこいつを与えてやる」


「本当にか?へっへっへ・・・」


他の盗賊共が「俺にもくれよ!」と騒ぎ出した。


「安心しろ、全員に与えてやる・・・なあ良いだろ、闇商人さんよ」


「この糞リッチが!!!大切な商品に手をかけやがって!!!!」


リッチでない・・・本当にリッチでない。


見た目もリッチだけど、実は、全くお金が無いスケルトン。


「でも、違法薬物なんだろ? 少しでも、この世に無い方が世の為だろ?」


「うるせえ!!そのヤクを手に入れるのに、どんだけカネ掛かったと思っているんだ!!! 100万カネーだぞ!!!」


マジか! 一般人の生涯年収がこの袋に・・・まあ、世の中を混乱させる物質の様だ、表社会に出ない様、上手い事、処分した方がよさそうだ。


「ハイハイ、悪徳商人はほっといて、このクスリ欲しい奴は声出して!」


我先にと声を出す盗賊共が滑稽だ・・・。


「じゃぁ、君から与えよう」


「へっへっへ、ありがとうございます!」


まあ、これぐらいかな? 50gぐらいから始めてみようと袋に手を突っ込み取り出す。


盗賊の顔が固まって、声を出した。


「いゃ・・・そんなに盛らなくても大丈夫です。」


「遠慮するな、タップリくれてやる」


「イヤ・・・そんなにいらない!!!!死んじゃいますって!!!!」


「大丈夫だ、問題ない! これは検証だ!治療する・・・多分。 もし死んでしまったらスマン・・・運が悪かったと思って諦めてくれ! まぁ・・・なんだ、運が良ければ私の様に復活する場合が有るのでそれに期待だ! 気にするな!」


「イヤ!イヤ!!!止めて!!!全然問題だらけだから!!!!少しは気にして!!!!!許して!!!!!」


嫌がる盗賊の口にクスリを詰め込み飲み込ませた・・・「まあ、遠慮するな・・・」と言いながら。


それを見た他の盗賊共は、「やっぱりいらない!」とか「許して下さい!!」とか騒ぎ始めた。


「安心しろ、極力、私はを心掛けていーーーる、あっ、次はお前だ!」


「イヤだー!そんな有言実行いらない!勘弁して下さい!助けて!オカーチャン!!!!」


「なぁに、この際、謝罪も遠慮も一切無用だ! 気にするな! どうせ、今まで他の奴の生命財産を奪い続けたのだろう? ?」


青い顔をした盗賊と闇商人は恐怖で震え上がっていた。


「悪い事をやる以上、やられる覚悟は出来ているのだろ? だから、遠慮せずに苦しみたまえ・・・!」


その日、夜まで、森の中で盗賊と闇商人のもがき苦しむ叫び声が響き渡った。

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