第5話 暗雲
昨日の出来事が嘘かのように、夜が明けても外は暗かった。輝いていた太陽は雲に囚われてしまい、姿を見せない。楽しい雰囲気はなく、どんよりとしている。
可もなく不可もなく、平凡に学校を過ごし、放課後になり路地へと向かう。
黒々とした雲が空を覆っていた。
「あれ、久しぶり?」
路地裏には、ここへ案内をしてくれた黒猫がいた。
黒猫は咥えている灰色のものを地面へと落とす。そして、一鳴きすると跳びはねてどこかへ行ってしまった。
「……う、そ」
手に持っていた鞄がスルリと抜けて地面へと落ちる。足の力が抜け、膝から崩れ落ちる。
黒猫は町の秘密を探るスパイではなく、魔女の使いーー悪魔だったのかもしれない。私は悪魔に魅せられていたのだろうか。
冷たいものが頬を伝い、手に当たった。
そして、地面に黒い点がついていく。辺りはみるみるうちに黒く染まっていく。
「昨日は勇敢に立ち向かって勝ったのに……」
鞄から傘を出さず、ネズミを抱えて走った。
近くの公園に駆け込み、隅にある茂みの間の地面を手で掘り、抱えていた灰色のものを埋める。
両手を合わせ、目を閉じた。
ネズミと過ごした日々を思い出す。ほんの数日だったが、目を輝かせて話を聞いてくれた。久しぶりに夢中で空想を話すことができた。
「幸せな時間をありがとう」
鞄からパンを取り出して、ひとかけらに千切り地面に置く。
ゆっくりと立ち上がり、とぼとぼと出口に向かって歩く。公園を出る前に一度立ち止まって振り向き、公園を出た。
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