第11話

翌朝、校門をくぐると桃華に会った。どうやら心配で待ってくれていたらしい。昨日の放課後起きた、学校から駅のホームまで一緒にいられたことや葵から話を振られ告白しようとしたがタイミングが悪く中途半端になってしまったことを桃華に話す。

「チャンスだったのにな、葵から話振ってくるなんてなかなかないのに…。」

「まあまあ、これからいくらでも話すチャンスはあるからそう焦らなくても大丈夫じゃないかな?」

桃華の言葉に私の中で期待の芽が少し顔を出した。後悔してももう過去は戻ってこないから、変えるなら未来しかないんだ。気持ちを切り替え、教室に向かう。


放課後、部室に入ると私のことを心配してくれていた後輩たちが駆け寄ってきてくれた。驚かせたお詫びをすると、一様に元気になって良かったと笑ってくれた。私は周りの人に恵まれている。鼻の奥がじんとしたのをごまかすように、黒板の前に立って葵を待つ。部室は旧棟にあるため、基本的に就職クラスの生徒の方が早く来ることが多いから珍しい。といっても今日はちょうどよかったかもしれない。どんな顔をして葵に会えばいいのかわからない。

「先輩、昨日は広先輩がいてくれて助かりましたね!」

一番前の席に座る後輩が話しかけてきた。どういうことだ?という顔をしていると、続けて説明してくれる。

「保健室まで広先輩が背負って運んでくれたんですよ!自分だと身長が足りないからって本山先輩が提案してくれたんです。2人とも優しいですよね~。」

「そうだったんだ…。広にもお礼言わなきゃね。」

つぶやくとそうですね、と後輩が笑う。広は175センチくらいだから、私より少しだけ高い。ちなみに葵は170いくかいかないかくらい。身長差が気になる時がほとんどだけど、結局まあ、かわいいの一言に尽きる。

「ごめん、遅れた!面接指導の順番クラスで決めててさ」

開け放たれた部室のドアから広が入りながら説明している。葵はその後ろから部室に入ってきた。

「じゃあ全員揃ったし、本山と希望、昨日の続きからお願いできる?」

桃華の言葉にリュックサックから書類を取り出した葵が黒板前にいる私のそばに歩いてくる。昨日の言葉を思い出して顔がカッと熱くなり、不自然にならない程度に葵から少し距離をとる。気づいたのか気づいていないのかわからないけど、葵はそのまま説明に入った。

「もう5月も終わりだけど、特に新しく意見もないようだから去年のまま進めようと思ってる。それでいいかな?」

言いながら私の方に視線を向けてきたから、あわててうなずいてから部員の了承をとる。皆異論はないようだったので、誰が何をしたいか希望をとるために私は黒板にボランティア内容を書き出していった。葵も隣で書くのを手伝ってくれているから、体温が伝わりそうでそちらを見れなかった。過剰反応なのはわかっていても、意識し始めると自分ではどうにもできない。

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