第12話

立候補や推薦で分担を次々決めていく。後輩たち全員分の役割が決まったので、残すは3年のみ。3年だけで部室の隅に集まって相談する。

「私はどこ入ってもいいよ、夏休み中全部参加するつもりだし!」

「私も希望と同意見かな。」

「俺と広は就活があるから最悪穴が開いてもいいところにしてもらえるとありがたい。」

「なら、3年は男女ペアにして余ってるところに入るか。ちょうど進学クラスと就職クラスで別れてるし。どうやって決める?」

広の言葉に桃華が反応する。

「じゃあ、本山と希望のペアでいいんじゃない?リーダー同士だし、何かと一緒の方が便利でしょ?」

桃華から視線を向けられ、あわてて反応する。

「わ、私は葵さえよければ…。」

「俺は別にいいよ。」

「じゃあ決定ね!後は何をやるか…」

相談の結果、私と葵は旧棟の掲示物の張り替え、桃華と広は中庭の花壇の水やりをすることになった。後輩たちにも共有して、その日の全体としての部会は終了したが、私と葵にはもう一仕事残っている。今日決まったことをプリントに記入して顧問に渡し、職員会議で共有してもらうのだ。

「じゃあ、書いていこうか…。地味に面倒だけどね」

「俺、黒板の読み上げるから希望書いてくれない?希望、字綺麗だし。」

不意打ちの褒めに口元が緩みそうになりつつ、私は葵の言う通りプリントに記入していく。後輩たちが帰り、3年だけになった部室ではやはり必然的に進路の話になった。私と葵も作業しながら雑談に参加する。

「俺らは夏から就活本番だけど進学組はいつくらいから頑張る感じなの?」

広が話を振ってきたので、手を動かしながら答える。

「私は秋に面接と志望理由書の提出かな。桃華もそれくらいだよね?」

「そうそう、面接も志望理由書もやりたくないけどね…。就活も面接とか大変そうだよね。」

「進学も就職も結局大変だよな。」

と、これは葵。受験生らしい会話は最後の1年ということをどうしても意識させる。

「あっという間に卒業式来そうだね。」

私のつぶやきに3人が同意する。

「確かにね、部活引退して、受験とか就活とか終わってほっとしたらあっという間に時間過ぎそうだよ。」

桃華が首を振りながら言う。そう遠くない未来の話のため、一気に現実味を帯びる。しんみりした気分を振り払うように、私は氏名をささっと書き上げた。

「よし、終わり!職員室寄って帰ろう、桃華!」

私がプリントを持って立ち上がろうとすると、葵がそっとプリントをつかむ。

「職員室には俺が持ってくよ。書かせる大変な方の作業任せちゃったし。」

「え、いいの?ありがとう!」

こういう何気ない優しさから、沼にはまるように葵への気持ちから抜け出せなくなる。広とともに職員室に向かう後ろ姿を見ていると、急に後輩の言葉が思い出されて思わず呼びとめた。

「あっ、ちょっと待って!」

私の大きな声に2人は振り返る。

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