第7話 脱出、成功!

残高…………………………………………

二億数千万円!


………………………………………なんで?


通帳を見てから、顔を見合わせる、私達。

私の思いが伝わったのか、頷いてくれた彼。

幸いにもテーブルに置いたままだった当選くじをバッグに仕舞って、


「この件で彼と相談したいので、少し出て来ますね!」


返された通帳をいけ好かない行員の眼の前でひらひらと振りながら立ち上がって伝えた。


「えっ?あっ、ち、チョット、まっ………」


開けたままだったドアを素早く抜け出て、足早に不自然にならないように表まで無事に出られた。


脱出、成功!

追いかけて来るかとドキドキしながら、駅に向かって彼と手を取り合って進んでタクシー乗り場へ。

ちょうど乗り場へ滑り込んできてタクシーに乗り込んで、


「クレジットカード、使えますよね?朝倉町駅前までお願いし……………………」


「はい、大丈夫ですよ。朝倉町駅前までですね。」


近場にもかかわらず、気持ち良く受け入れてくれた運転手さん。

朝倉町駅前までは電車でも行けるけど乗り換えが必要なのと、万一銀行員に追いかけられると困し、タクシーの方が遥かに早い。

それはそれとして、今、何かが頭の中で繋がった様な気がしたんだけど?

何だろうか?

未来予知とは、違うみたいだったしな。


10分程で駅前のタクシー降車場所へ。

カード決済して降りる前に、


「少なくて申し訳ないけど、チップです。」


明細をもらいながら千円札を1枚渡して降りてから駅前を見渡して、


「まずはATMだな?」


「………………………………そうね。行きましょうか。」


一番人気のないマイナーな信用金庫の個室端末を選んで二人で入り、一度に下ろせる限度額の2百万円を打ち込んで確定表示にタッチして出て来た札をバッグに仕舞ってから明細を二人で確認する。


残高…………………………………………

二億数千万円!


……………………………………なんで?


当たり前なんだろうけど、一度下ろしたくらいでは残高が大して減るわけでもなく。


「………………………………これ、このまま使っちゃ、まずいわよね?」


「………………………………そうだな、何のお金かわかるまでは、使えないよな。」


「………………………………とにかく、行きましょうか?」


「………………………………そうだな、行こうか。」


宝くじの換金できる銀行は駅の反対側なので、彼と手を繋いで足早に地下通路を目指して歩き始めた。

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