出席番号3番 大川

私は、3番の大川。


大川という名の通り、背が高い。女子の列では1番後ろだし、バレー部ではブロッカーとして重宝されている。顔は、まあメイクしたら誤魔化せるかな、ってレベル。身長があるだけの芋かな。


そんな私は、森本さんが羨ましい。


森本さんは背が小さくて、顔もかわいくて、いわゆるふわふわ女子。髪もいい匂いがして、目もきゅるきゅるしてて、マフラーがすごく似合う。学年で1番かわいいと噂されるのも納得。そんな森本さんを見た後、鏡で自分を見るとすごく醜く見える。腫れぼったい一重、雑にまとめた髪、高身長で誤魔化されたスタイル。私ってかわいくないな、って毎回思う。だから森本さんと話した後は鏡見ないようにしてるんだ。苦しくなるから。メイクをして学校に行きたいけど、元の顔を知られちゃってるから、変に気合い入ってると思われても嫌だし、そもそも部活で汗かくんだよね。だから日焼け止め塗るくらいのことしかしてない。

甘え、だよね。でも頑張ってもどうにもならないことってあると思う。うちはお母さんが太ってて、お父さんは重たい一重。嫌なとこだけ遺伝して、ダイエットしてもそんなに効果無いし、アイプチしてもすぐに一重に戻る。まだ高校生だから整形する資金も無い。YouTubeでマッサージ見つけて試したりとかするけど、森本さんみたいにはなれない。あの子はすっぴんでもかわいくて、オーラがあって、守りたくなる。ないものねだりだってはわかってるけど、比べちゃう。森本さんの身長になることはできないし、メイクだけじゃ誤魔化せない。いいなあ、生まれつきって。

例え整形をして脂肪吸引して自分を作り変えたって、天然のものには敵わない。きっと見るたびに自己嫌悪に陥るんだろうな。スタートラインが違うんだもん。「かわいい」って正義なんだ。宿題忘れても私と森本さんじゃ対応が違うもんな。先輩からもかわいがられる。顔がいいって世間をうまく歩いていくための武器だよ。


だから、だから、私は森本さんが羨ましい。














身体的特徴というのは、個人差がある分、自分に無いものを持っている人が羨ましく見えます。身長が高い人は小さい人をかわいく思い、身長が低い人はスタイルがいい人をかっこいいと思う。隣の芝生は青く見える、とはまさにこのことで、並大抵の努力では覆せないものがあります。自分に無いものを持っている人は、良く見え、妬みの対象になることが少なくありません。

整形に関して、今でこそ肯定的な意見が増えてきましたが、生まれ持った顔を変形することは勇気のいることです。整形、と一口に言っても、自分のコンプレックスを消すため、さらなる美を求めるため、なりたい自分になるため、理由は様々です。個人的には、もっと自分を好きになるための手段だと思います。それが整形であれ、メイクであれ、何であれ、自分を愛するためなら素敵なことです。

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