今後の対策
その言葉にスノウは耳をペタンと下げてしまう。そろそろサウザンドには口で言っても敵わないということを学んでいるので反論はしないが、耳と尻尾は正直だ。
「もしかしたら首に噛み付くんじゃなくって心臓や脳に噛み付いた方が効果大きいかもしれませんし。僕が切り開くので主は臓器に噛む練習――」
「ぜえええったいに嫌だ」
「えー」
武器にできるような骨を手に入れるとなると小型のモンスターよりもやや大型のモンスターが必要になる。昨日戦った馬のモンスター位がちょうどいいのかもしれないということで、あの馬の死骸のあるところまで一度行ってみることにした。
森に入りスノウが周囲の様子を警戒しながら歩を進めていくとモンスターの死骸を発見した。注意深く観察したが特に再生しているとか変わった様子は無い、本当に死んでいるようだ。
脚力が強そうなのでおそらく骨としてしっかりしているのは足の骨だ、大腿骨か肩甲骨があれば丁度いい。小屋の中にいくつか残されていた錆びついた農具を持ってきているのでそれを使って骨を切断することにした。
骨は固いといっても関節部分は軟骨があり重なり合っているだけなのでそこに刃を入れれば簡単に切り離すことができる。農具の大きさと骨の大きさが合っていないので切り離すのに少し苦労はしたが無事骨を手に入れることに成功した。スノウがその骨を眺めたり匂いをかいだりしている。
「とりあえず骨自体にモンスターの気配はないな。他の討伐隊に間違って攻撃されるっていう事はなさそうだ」
「それはよかったです。それならモンスターの気配っていうのは具体的にどの部分をいうんでしょうね」
「さあな。死骸に気配はねえから人間が好きそうなのは魂に宿ってるとても言いそうだが」
「あー確かに、言ってそうです」
「あー確かに、じゃねーよ。お前はどう考えるんだ」
「それを聞かれると僕も答えがないんですけど。内臓一個一個取り出して主に確認してもらうっていう方法をとったほうがいいでしょうか」
次の瞬間、スノウはその場からジャンプをして距離をとった。
「やらないから大丈夫ですよ。また頭の医者に行けと言われそうなので一応理由説明しますけど、例えばそれを持つことで他のモンスターに僕たちもモンスターだと勘違いさせることができるかなと思ったんです」
「予想以上に無難なこと考えていて安心した。やりたくはねえが」
「それにもしもそんなことがわかっていたら多分他の討伐隊がとっくに気づいてやっているでしょうから。モンスターの個体そのものに気配があるのであって、内臓や筋肉に気配があるわけでは無いのでしょう。そう考えると魂に宿っているというのもあながち馬鹿にできないかもしれませんね」
小屋に戻る事はせずに食材の調達をしつつ骨の加工を始めることにした。魔の森と呼ばれてはいるが、生えている植物は至って普通である。おかしな植物が生えていたり蔦などが襲い掛かってくるということもない。人の手入れがされていないが故、実は食べ物が豊富にあったりもする。
日当たりが悪いのでキノコが多く木の実は高い木の上にしか生えていないので、探すのはかなり難しいが。キノコは専門知識がなければ毒キノコなのか食用なのか判別することができない。
もちろんサウザンドはそういったものも養成所で習っているのだが、専門家でも毒キノコと普通のキノコを間違えてしまうような似たような見た目のものが多いので、食べないほうがいいと教わっている。絶対に毒キノコと間違えようがない食用のキノコだけを覚えているのでそれも後で探そうと考えていた。
「具体的にはその骨どうするんだ」
「先端を鋭利にして短剣のように使います」
「骨だから長さがないから仕方ないにしても、それだと至近距離まで接近しなきゃいけないだろ。弓矢とか飛ばして使う武器にはできないのか」
「作れるんですけど」
「ですけど?」
「切り掛かる方が好きなので」
「ああ、そう……」
穏やかな性格なのに時々妙に脳筋なのは何故なのか。強いのだからいいが。
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