第10話
後続の戦車は中国製、85式戦車、アフリカの資源をことごとく手に入れようとする、かの国が使わした鋼鉄の尖兵だ。だが、搭乗しているのは現地の人間――その練度はけっして高くない……はず。
「まったくもって、背筋の寒くなる光景だよ」
ひとりで冗談めかして言って、近くに置いていた酒の携帯用の容器スキットルをつかんで口もとにはこび、あおった。
アルコールが食道を焼きながら胃の腑へとすべりおちていく。
オーケー、これがあれば宇宙人とだって戦える! 上機嫌になりながら、光学照準器をのぞいた。
四輪駆動車と戦車が十字線の中で輪郭をむすぶ。まだ、狙撃に適した位置ではないことが、その像の小ささがしめしていた。
四輪駆動車は搭載した五〇口径の銃機関銃を乱射していた。銃火がたてつづけに吐き出され、すさまじい銃声が大気をふるわせている。ビルが、路面が、けずられる。まるで重機だ。
――そこに、緊張で頭がイカレたのか現地の兵士のひとりが飛び出す。戦場ではよくあることだ。
次の瞬間、手足が千切れ、胴が背骨でかろうじてつながる状態に変化した。が、マーカスの心は動かない。既に心は銃と一体化している――金属の冷たさを心が帯びていた。狙撃で負傷して動けなくなった人間を撃って、仲間を誘きだす、ときにそんな非道さえ求められるのが狙撃手だ。
――冷徹にタイミングを計る。
必要なら、神にだってなってやるさ――。
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