第7話

 さあ、準備をはじめるか、と思ったところで、突如としてレオンが音と気配を殺して動き出した。

 なんだ? と目を丸くして動向を見守る。まあ、実のところ例の「あれ」だろうな、となかば以上確信していたが。

 仲間として意識せずにいたら、彼が動いていることに気づかなかったかもしれない、そんな存在感の希薄さをレオンはまとっている。

 彼が目指す先――路上には、裏路地から姿を現したらしい現地の女性の姿があった。ゆったりとしたこの土地特有の衣装をまとい、なにか用事を済ませようとしているふぜいで歩いていく……その背後に、音もなくレオンが距離を詰めた。無音殺傷術(サイレント・キリング)を得意しているだけに、相手にはまったく気配を悟らせずに肉薄する。

 刹那、

「――!」

 現地の女性の口から甲高い声があがった。

 ……レオンの手が相手の尻にのびていることを私は見逃さなかった。

 本気で懲りない奴だ――自分のルイーゼへの行為を次元の向こうにまで棚上げして思う。

「ナガシマ、構わん。撃て」

「了解」

 指示を受けたとたん、彼の意識が覚醒した。三年寝太郎から、ゴルゴ○○のような顔つきに変化する。

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