第6話

「商談はつづける」

「ですが、物(ぶつ)がないのにどうするんですか? 軍事訓練だけを施すプランに変えますか?」

 不機嫌な声に対し、ルイーゼが疑問をていした。

「オプションで考えていた対戦車地雷があるだろ」

「あれで戦車を確実に仕留める戦術になると、素人に毛が生えた程度の兵士に教えるには高度ですよ」

 彼女はさらに否定材料を口にする。

「だからこそ、実演販売(ディスプレイ・ビジネス)――そうだろ、CEO?」

「そういうことだ」

 いたずらっぽい顔つきをするマーカスに、私は笑みを返した。

「CEO、まさか“また”ですか……?」

 悪い癖にはじまった、そういいたげな声でルイーゼがたずねる。

「その“まさか”だ――決り文句言わせるな」

 こちらの言葉を聞いて、彼女はうんざりという顔をした。

 いやぁ、ほんとにからかい甲斐があるな、こいつ――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る