　高速で思考をめぐらせる――ここまでやって来るのにだって金はかかっている。それだけでなく、通信費、商品の購入、輸送の手配、その他にも当然、経費は払われていた。

　それを商談をご破算にして、ただ働きで帰る？

　こんなホコリっぽくて、人間を焦がすような土地にまで来て？　――高揚した気分が吹き飛んだせいで、急に熱さのことや空気にただよう砂の粒子のことが意識にのぼる。

　自動的にＳＷＯＴ(スウォット)分析が脳裏でたちあがる――ＳＷＯＴ(スウォット)分析はビジネスにおける戦略分的のスキルで、現状を客観的に認識し状況を打破するための道筋を得ることができるのだ。

　通常は巨視的（マクロ）環境の視点で分析を行うのに使う。だが、短時間での状況分析にも応用できる。

　Strengths（強み）は？

　――少数精鋭。組織の小ささからくるフットワークの軽さ。

　Weaknesses（弱み）は？

　――強みの裏返し。人数を必要とする作戦は実行できない。何より、今回は商品(ぶつ)が届いていない。

　Opportunities（機会）は？

　――目の前の状況。アフリカ某国における内戦の片方の主役、民主化勢力と契約を結ぶ寸前まで行っている。

　Threats（脅威）は？

　――同じく、目の前の状況。中国がひそかに支援する武装勢力が駆る戦車が迫っている。さらに、二番手商法が出現していること。今回の商談がご破算になると、奴らに客を奪われる可能性があった。＝この困難な状況をクリアできれば、単に顧客を獲得できるだけでなく、私が経営するＤＢ社の実力を喧伝することができる。

　だったら、答えはひとつしかない。

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