第3話

「それで、さっきの発言はなんだったんですか?」

「む、聞きたいか?」

「はいはい。聞きたいです、聞きたいです」

 問いかけにルイーゼはぞんざいにうなずく。だが、わざわざ先ほどの言葉の意味をたずねてくれること自体、律儀としかいいようがない。

 そうか、律儀な人間というのはからかうと面白いのか! 林檎の落下を目撃したニュートンの気持ちになる。

「――CEO、また思考が横道にそれてよからぬことを思いつきましたね?」

「なにをいってるんだ、世紀の大発見を私はしたぞ!」

「はいはい、それはツイッターにでも書いてください」

「むぅ、ツッコミがテキトーだな――おまえ職務怠慢だぞ!」

「わたしはコメディアンになったつもりはありません!」

 こちらの声に倍する声でルイーゼが怒鳴った――ニヤリ。

 再び、もてあそばれたことに勘づいた彼女は眉間にしわを寄せた。

 ――道路をはさむビルの片方の出入り口から人影が飛び出して、こちらに近づいてくる。三人の男たちだ。二人は東洋系で、残りの一人が黒人。日本人と中国人と、アルジェリア移民のフランス人だ。三人とも私と同じように射撃用眼鏡(バリスティック・グラス)をかけ、ポロシャツにタクティカルパンツという格好だ。

 そしてルイーゼと同じく、彼らは銃口が地面を向く形で小銃を肩につっている。

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