第2話 社会と自然への反発
それはさておき、世界各国で、計算が行われたことで、落下場所と時間が、大体計算された。さすが、宇宙開発先進国と言われたアメリカとソ連による計算は性格に、ほぼ、同じ位置を計算していた。
東西冷戦ではあったが、地球規模の危機に際しては、一時休戦ということで、世界は一致団結した。
「米ソの協力は、何十年ぶりなんだろう?」
というほどのことであり、映画の中とはいえ、
「これだけは、現実になってほしい」
ということであった。
地球落下の場所と時間の計算は、しっかり行われ、
「太平洋上の危険のない場所」
ということになったが、念のため、その戦後の3日間は、
「その地域を航行しないように」
ということで、世界に告知されたのだ。
その予定日というのが、判明してから、三日後だった。ロケットの帰還は、地球の軌道に入ってからが勝負ということで、全世界が、緊張していたのだ。
確かに、着水地点としては、どこの国にも影響のない、
「太平洋のほぼ、ど真ん中」
と言われるようなところであったが、その場所であっても、
「他の陸地にまったく影響がない」
というわけではない。
何しろ、宇宙から、人を乗せたロケットが、大気圏突入において、炎に包まれながら落下してくるのである。まるで地震のような津波が発生しないとは限らないではないか?
それが一番の差し当たっての懸念であり、もし、そうなってしまうと、いまさら防ぎようはなく、せめて、
「できるだけ、早く状況を把握する」
ということしかないのであった。
分かってはいるが、ほぼ初めてに近いことだ。
今までは各国の計画通りに戻ってきたロケットは、パラシュートでゆっくり落下してくることになるのだが、今回はすでにスケジュールを逸脱しているのだ、乗組員が一人は無事だったということが分かっているだけで、果たして無事に地球に帰還できるかということは、まったくの未知数だったのだ。
何といっても、もう一つの懸念として、
「大気圏突入の摩擦のショックに耐えられなくて、ロケット自身が、燃え尽きてしまう」
と言われていることだった。
「大気圏突入というのは、計算された軌道で飛んできても、その危険性は指摘されていた」
と言われている。
だから、地球上において、どれほどの危険性があるのかということは、誰にも分からないといってもいいだろう。
大気圏で燃え尽きる可能性に関しては、他の国では考慮していない。
もっとも、他の国は、
「自国に影響がなければそれでいい」
という考えだ。
「何しろ、日本政府が黙っていたことで引き起こされた自体だ」
という思いで、日本に対する不信感は、最高潮だった。
その時はそれどころではなかったが、どの国も、
「日本の責任は、果てしなく深い」
と思われていたのだった。
管制室からは、地球帰還について、残った乗組員に対し、指示をしている。
そして、いよいよ地球への再突入の際に、激しい衝動にかられなからも、何とか無事帰還することができた。
これも、一種の軌跡に近いものだった。
しかし、実は特撮ドラマの問題は、ここからだったのだ。
地球に降りてきたロケットから救助された宇宙飛行士は、当然のことであったが、かなり衰弱していて、行方不明であった時期のことを聞けるどころではなかった。
ただ、ロケット内の自動睡眠装置の入ったカプセルと、事前に聴いていた宇宙飛行士からの話で、その言葉の裏付けとしては、理解できることだった。
そして、信じられない出来事として、不信感しかなかった、もう一人の乗組員の白骨化という話は、本当だったのだ。
一体の白骨が、きれいにロケット内に残っている。
宇宙飛行士の話では、
「白骨は完全なものではなく、衣類や、肉片などが、かろうじて残っている」
という証言であったが、実際には、すでにそんなものもなくなっていて、完全な白骨だったのだ。
そのあたりもいろいろ調べられたが、白骨死体を検分し、分析を行った研究班としては、
「ここまでになるまでには、数年はかかるでしょうね」
ということであった。
「なるほど、相対性理論であれば、分からない理屈でもない」
ということであった。
今度は、地球に存命の中で帰還することができた宇宙飛行士の方は、大気圏突入によるショックからか、それとも、海水に着水した時のショックからか、意識はあるが、完全な腑抜け状態で、何を言っても反応しなかった。
一見、記憶喪失者が、何も分からないという状態と同じで、結果、
「何を聴いても分からない」
と、担当医がいうしかなかったのだ。
「記憶はあるんですかね?」
と管制室の人間が聴くが、
「いや、今のところは何とも」
としか言いようがなかった。
反応を促そうといろいろやるのだが、まったく反応を示さない。電気ショックの軽いものを浴びせても、身体が反応するわけでもなかった。その時点で、
「これは、かなり時間がかかる」
ということで、管制室の方には、
「何とも言えない状態ですが、事態は予断を許しません。記憶が戻らない可能性も十分にあると、御覚悟してください」
という。
「意識はあるんですか?」
と聞くと、
「あるとは思うんですが、まったくこちらからのアクションに対して、何んら反応が返ってきません。これは容易ならんことですよ」
と医者がいうと、
「ということは? まさか?」
と、管制室の男は、普段は絶対に見せないような苦み走った表情で、医者から見れば、
「この人は分かっているようだ」
と感じさせたので、正直に、
「そうです、いわゆる植物状態です。だから、いつ意識を取り戻すかというよりも、意識が戻るのは、かなりの低い可能性だ」
ということであった。
それを聞いた、管制室の人も、いよいよ、
「宇宙開発のためとはいえ、一人の人間をここまでしてしまった」
ということに、ショックを隠し切れないのだった。
「これは困った」
と思ったが、それは、それまでその人に対してのやり切れないことを考えることで、逸脱した世界の中にいたからであった。
しかし、病院を後にすると、急に現実に引き戻され、
「いかに発表すればいいんだ?」
という問題だった。
「国家の方は、地球突入の問題」
「失敗を、国内だけにとどめてしまったことへの問題」
と問題が完全に山積みだったのだ。
それを思うと、
「どこに何を言えばいいのだ?」
と、途方に暮れていた。
何しろ、政府の方は、解散宣言をしていて、まだ政府はできていなかった。
今の政府にいっても、何が変わるわけでもない。
「どうせ俺たちは、すでに解散が決まっているんだ」
ということで、まったくダメだろう。
「では、国連か?」
ということになったが、そのパイプ役である政府が、
「あってもないようなものだ」
という、内包状態であれば、国連への話もできないというものだ。
それでは、他の国?
というわけにもいかない。
日本政府に見切りをつけている他国に、政府を通さずに話をしても、門前払いがいいところであろう。
それを思うと、管制室は、
「四面楚歌に陥っている」
といっても過言ではないのだった。
他の国では、
「何とか、落下時のパニックを逃れることができた」
と安堵の空気がある中で、
「今後のための検証」
は必要であって、しかし、その情報が日本側からもたらされるとは、到底思えなかったのだ。
しかも、乗組員が、二人ともどうなったということも、今はまだオフレコだった。だから、国民も知るわけはない。そんな状態の中で、
「実は、裏でまったく違う状況が生まれている」
ということを、まだ誰も知る由もなかったのだ。
ここまでは、ドラマでも丁寧に描かれてきたが、実は本当の話しは、この後のことで、
「起承転結」
と言われることとは別に、進行していることがあるということを、果たして誰が知っているというのだろう?
ロケットが、どこにも被害を及ぼすこともなく、墜落した。
もちろん、NASAであったり、国連の調査団などが、ロケット落下地点の探索を行った。
「何かの落下物がないか?」
あるいは、
「放射性の危険な物質があたりに存在していないか?」
などということであった。
理由もなしに、一旦打ち上げには成功したロケットが、宇宙空間で、行方不明になるという事態なので、
「謎の生物がいないか?」
あるいは、
「宇宙人が何かを仕込んでいないか?」
などということである。
実際にあたりの捜索を数日に渡って行われたが、
「別に問題はない」
ということで、船の航行も飛行機も。問題なく航行できたのだった。
しかし、何かが起こったのは、それから数日が経ってからで、もし、相手がいるとすれば、
「まるで図ったように姿を現す」
とでもいうように、徐々に問題ができてきたのだ。
ロケットが落下して数日後に何か、浮遊物体があり、その特性として、
「急に姿を消すのだが、それがいつなのか分からない」
という、まるで、透明怪獣でもあるかのような様相を呈していた。
だが、実際にその生物は、
「いや、これを生物として分類してもいいのだろうか?」
と思えるようなもので、実際に生物かどうかも分からない。
そもそも、
「地球外」
というものに、
「地球上の常識を押し付けてもいいのだろうか?」
と言えるだろう。
「宇宙ロケットに宇宙から飛来したのだから、地球外物体に違いない」
ということは分かっている。
問題は、その物体が、
「地球上で、どのような問題を引き起こすか?」
ということである。
その物体が見つかったのは、ある車のトランクからだった。
一体いつ、どのように入り込んだのか分からないが、その物体はどんどん服出んでくる。
「膨らんできたから、その物体を意識するようになった」
というべきであろうが、
「膨れ上がった車のトランクをぶち破り、次第に巨大化しながら、雲のように、空中に浮かんでいく」
のであった。
都心のど真ん中で、そんなことが起これば誰もが恐ろしいと思うのだろうが、一人の青年が、
「こいつは、生物で、エネルギーを食って、巨大化するんじゃないか?」
と言い出した。
なるほど、今の時代ならすぐに理解できるが、昔の、
「特に、昭和時代であれば、理解できない気がする」
と言えるのだろうが、実際には、SFや映画などで、想像はつくのだろうが、
「実際にいる」
ということになると、その信憑性は、明らかに薄いものでしかないだろう。
当時は、公害問題などもあり、このような考え方は主流だっただろう。
しかし、今は、
「何でも揃うという発想から、思い浮かばないのではないか?」
と思うのだが、実際には、SDGSなどでの、
「地球温暖化問題」
を筆頭に、生活と背中合わせになっているものが、存在するのであった。
「世の中というものが、意外と目の前のことは分からない、
「灯台下暗し」
というものであるということは、ここまで長く言われても違和感がないものなど、特に色褪せたとは思えないだろう。
風船のように膨れ上がり、上空に上がっていく物体を見ていると、誰かが、
「化け物だ。逃げろ」
と言ったのを契機にして、それまで皆、バカみたいに、上だけを見ていたのだが、ハッと気づいたのか、
「ひーっ」
という声を出して、一人女性がヒステリックになったかと思えば、一度凍り付いた時間が一気に動き出したのだ。
それこそ、
「蜘蛛の子を散らす」
とでもいうように、車の人は皆自分の車に載り、車ではない人は、建物の影に隠れるような感じでいるが、そのうちに、まわりからクラクションが鳴り出して、当たりは、クラクションによる、
「騒音の嵐」
が吹き荒れたのだ。
しかし、不思議なことに、一気にあふれ出した騒音が、今度は一気に消えていくのだった。
かと思うと、今度は皆が車の中で必死に何かをやっていて、表にいれば、
「ガガッ、ガガッ」
という、エンジンを掛けようとしても、ガス欠でかからないという時の音が至るところから聞こえてきたのだ。
クラクションどころではなくなったのか、エンジンを掛けようとしても、それが失敗に終わると、もう誰もエンジンを掛けようとはしなくなり、またしても表に出てきて、先ほどの、
「風船の怪物」
を見上げているのだった。
「あいつのせいだ」
という声が聞こえる。
「そうだ、あいつが食っていやがるんだ」
というのだった。
「食ってるってなんだよ」
と車の外にいる人はそう思ったが、理由が分かるわけもなかったのだ。
ただ、そのうちに一人が、空に浮かんだ風船の爆弾を見て、
「あいつが、エネルギーを食っていやがるんだ」
と言った。
冷静になって考えれば、その通りだった。
最初は理屈が分からなくとも、考えてみれば、まさにそれ以外に考えられないのであった。
つまり、
「あの化け物がエネルギーを食うから、エンジンがかからない。だから大きくなり、ガス状の空気化することで、空に浮かんでくるんだ」
という理屈であった。
理論的に考えると、それ以外に説明のしようはなく、この説明がすべてを理解させることになるのである。
そのうちに警察がやってきて、拳銃を撃つのだが、当たっても、姦通するどころか、弾丸をもはじき返すという感じであった。
「なるほど、堅い膜のようなもので覆われているんだな」
と思うと、そんなものでいうことの聴くわけでもない。
「エンジンがかからないのも、この怪物がエネルギーを吸っているからだ」
ということで、ここでだけの問題ではなくなり、奇妙な怪物は空中に浮かんで、何ができるというものではなくなってしまったのだった。
そのうちに、その怪物はあたりのエネルギーを吸い尽くして、どんどん大きくなる。
都心部上空に、すでに直径50メートル以上に巨大化し、少々遠くても、その様子は、見ることができただろう。
これはあくまでも、演出でも何でもない、
「種も仕掛けもない」
と呼ばれる現象が、空に浮かんでいるのだった。雲のようになった物体は、内部から光を発しているようで、
「攻撃しても同じだ」
ということで、
「これ以上、怪物に巨大化させないため」
電気の送電を一定時間止めるという、暴挙に出たのだ。
怪物も必死なので、それでも、何かのエネルギーを使おうとする人がいれば、エネルギーを吸い取られて、後は、
「ただの箱」
と化しているのであった。
つまり、
「人間が、文明の利器を使えば使うほど、怪物に餌をやっているものだ」
ということである。
やはりそうなると、
「怪物をやっつけるのではなく、怪物の活動させないということを考えるしかない」
ということしか、解決方法はないと思われた。
そのためには、
「人類が作り出したものを使わないようにする」
ということしか、方法はないのだ。
だが、そうなると、人間は原始時代に戻ったことになる。
その時、一人の話せが、呟いた。
「あの怪物は自然現象なのだ。洪水や地震に、現在の兵器で立ち向かっても、どうなるものでもない」
というのだった。
そして、
「今の世の中は、文明の利器というものにあまりにも甘えている。そろそろ、自然現象が、休息を欲しているのだ。交通戦争もない、公害問題もない。何と、すがすがしい朝ではないか。これで人間は救われるのだ」
という。
すると、それを聴いていた人が、
「そんな原始の世界に戻れば、皆が救われるというのですか? 今死にそうになって苦しんでいる人もいれば、世の中の機能が回らなければ、自分たち人類はもう生きていけないところまで来ているんですよ」
というのだった。
科学者は、そこで思い立ち、一つの案を持って、地球防衛軍に話に行った。
そして、その怪物からの、
「人類に対しての危機は終わった」
というのが、ラストであったが、今も、そのシーンを忘れることはできないのであった。
この番組は、30分番組で、後から思えば、
「よく30分でまとまったものだな」
と感じたのだ。
何といっても、見終わった時に感じたことは、
「宇宙空間って、何て広いんだろう?」
ということであった。
あんな宇宙生物がどこから来たのか分からないが、明らかに宇宙生物だったということであった。
さらに、
「あんな危険なものを地球に送り込んだわけだが、地球人が一番どうすることもできないと思われる、いわゆるピンポイントな怪物を探して送り込んできたものだ」
ということであった。
これは、あくまでも、その宇宙生物を、
「地球以外にも生物が存在し、しかも、人類と同等、いや、それ以上の知能を科学力を持った連中が存在し、地球の存在を許せないとでもいうのか、全滅を目指して送り込んできた兵器だ」
といってもいいだろう。
実際の破壊兵器である、ロボットや、本当の怪物ではなく、人類にはどうすることもできず、自滅を待つか、あるいは、怪物の巨大化を止めることのできないということで、
「もしあの後、あの宇宙生物が巨大化していけば、いつか、破裂しないとは限らないのではないか?」
ということになれば、
「最後に、破裂してしまうという運命を救うことができないとすれば、どこまで膨れ上がってしまうのだろう」
ということだったのだ。
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