トラウマと覚悟

 デュランがフォレスト王国でカオスに敗北はいぼくする一年半前いちねんはんまえ、デュラン達はクラインハルトのある神聖しんせいプライド王国をおとずれていた。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093083168394067


 なんで神聖プライド王国を訪れたかというとスミス王国を旅立たびだってから半年間は人族じんぞく国家こっかまわって協力きょうりょくけていたのだが、それぞれ剣神けんじんとはべつかみ信仰しんこうしていることのおお多種族たしゅぞくとはちがい。起源きげんしんワールドや剣神けんじんを信仰している人族の国ではどこにいっても剣神様、剣神様とうるさくデュランが癇癪かんしゃくこしてしまったからだ。

 ……まあデュランは本当ほんとうは多種族の国がよかったようだが、ちかくにないのだからしょうがなかった。


「……アリス、ほかの国をまわったからこそつよく思うんだけどさ。俺はこの国のノスタルジーな雰囲気ふんいききだわ、なんかかえってきたってかんじがする」


「そうだね! だけどよかったのデュラン? メテオさんのこと苦手にがてでしょ??」


「まあ、苦手だけど神様あつかいよりかはマシだ。

 そういうアリスこそこの国は苦手だろ、国の外で待っててもよかったんだぞ?」


「デュランのためだったら全然ぜんぜん平気へいきだよ、変装へんそうしてるしね」


「……そうか、ありがとうなアリス」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093083174769387


 デュランはサングラスしに見えるアリスの目つきから相当そうとう無理むりしていることがかったが、だれのために無理しているのか理解りかいしていたのでおれいってから正面しょうめんいた。

 しばらくしてしろくと国王でありおじいちゃんでもあるメテオへの面会めんかいもとめ、近衛兵このえへい許可きょかてからしぶりにメテオとった。


「久しぶりじゃのうデュラン! ワシはデュランと会えてうれしいぞ!! キャラメルべるかの??」


「いや、用事ようじわったらすぐかえるからキャラメルはいらない。

 ――というかうるさいしうざい、ガキあつかいすんな」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093083169805556


 デュランはおじいちゃんであるメテオのことが苦手だが、なんで苦手なのか最近さいきんまでよく分からなかった。

 だが色々なところを旅したり様々さまざまな人と出会であったことで、メテオのぐに愛情あいじょう表現ひょうげんしてくるところが苦手なのだと理解した。

 そういうのはアリスしかやってくることがなかったから、聖域せいいきおかされている気がして何かいやなのだ。


「ガキ扱いなどしておらんぞ! 子供でも大人でもデュランはワシのまごなんじゃ!! ワシは孫にかれたいんじゃ!!!」


「うざいとは思ってるけどべつにじいちゃんのことはきらってないよ、ただちょっと苦手なだけ」


「――ガーン!!? 苦手、ワシが苦手……」


「……やっぱりキャラメルもらうわ、後少し聞いてほしい話があるんだがいいか?」


「――よいぞよいぞ!! なんでも聞くぞい!!!」


 とはいえメテオには関係かんけいないことなので苦手なだけだと正直しょうじきつたえたが、思っていたよりもショックを受けていたのでデュランはキャラメルをもらってから話を聞いてくれと言ったらすぐになおった。

 それから結婚式けっこんしき招待状しょうたいじょうわたしてから事情じじょう説明せつめいすると、こちらから協力きょうりょく要請ようせいする前にすと言ってくれたまではよかったのだが。なんでか特殊とくしゅ部隊ぶたいへメテオが入ると言い出したのでデュランはあたまかかえた。


「国王としての仕事はどうするんだよ、それにじいちゃんはこの国で一番えらくてつよいって理解してるか? じいちゃん以外の誰がこの国をまもるんだよ」


「それにかんしてはレウスへ国王のをやれば全部ぜんぶ解決かいけつじゃろ、彼奴あやつは一回とは言えワシにっているのじゃから」


「国王としての経験値けいけんちちがうし、レウスはこの国の騎士きし団長だんちょう兼任けんにんしてんだろうが!! まま言うならもういにてやんねぇぞ!!!」

 

「――冗談じょうだんじゃよ、冗談じょうだん!! じゃあまたのデュラン!!!」


「……まったく」


 デュランはそう言いながら手をっているメテオをジト目で見ながら部屋へやると、外で待っていたアリス達と合流ごうりゅうし。町一番の宿やどである黄昏たそがれいこていかった。

 ただアリスのために人混ひとごみをできるかぎけながら向かったので、黄昏の憩い亭へついたのは少しくらくなってころだった。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093083189591785


 黄昏の憩い亭は良くも悪くも普通ふつうの宿に見えたので町一番の宿? と一瞬いっしゅん思ったデュランだったが、中へ入ってもその感想はわらなかった。本当に良くも悪くも『普通』だったのだ。

 普通に宿のすみからすみまで掃除そうじとどいているし、普通にスタッフへちゃんと教育きょういくしているのだろう。その接客せっきゃくは一から十まで完璧かんぺきだった。

 宿に入ってまだ数分だが。この宿はどこまでも普通に素晴らしい接客せっきゃくをして町一番の宿になったということがいたいいほどよく分かったし、だからこそ人気なのだと思った。


 ただ一つだけ以外いがいだったのは――


「いら、いらっしゃ、ませ……」


「あぁ、その無理しなくていいからな? ゆっくり話してくれていいぜ、本当ほんとうに」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093083119433504


 ――それらの指導しどうをしたはずのオーナーがコミュしょうだったという事実じじつだった。


 思わずこれでどうやって教育等きょういくとうをしたのかここまでれてきたくれた女性へこっそり聞いてみると、人に何かを教える時はハキハキしゃべれるが。人間関係にんげんかんけいのトラウマがあって日常にちじょう会話かいわだとこうなってしまうらしく。

 だからこそスタッフがそだった後は邪魔じゃまになるから基本的きほんてき裏方うらかたまわっているのだそうだ。


 是非ぜひともこのみせのオーナーと話がしたいと言ったのはデュランだったが、こういう事情じじょうがあるのならあらかじめ教えてよと思いつつ会話を続けながら作業さぎょう見学けんがくしてみると。

 あれだけしっかりした教育をしているだけあってシエルはコミュニケーション能力のうりょく以外は軒並のきなみ高く、裏方の仕事しごとをテキパキと終わらせていてすごかったが。

 だからこそどんなトラウマをかかえているのか気になったし、もう他の人族の国にはしばらく行きたくなかったので。アリスへ理由を話した上で少しの間この宿にまっていいかいてみた。


「いいよ、ただしシエルちゃん・・・のところへ行くときはかならず僕と一緒に行くこと。この約束を守ってほしいんだけど、いいかな?」


「うん? まあいいぞ」


 そうしたらなんでかアリスと一緒いっしょにシエルへ会いに行くならと条件じょうけんをつけられて少し不思議ふしぎに思ったが、何はともあれ許可きょかもらえたので一週間いっしゅうかんくらいアリスと一緒にシエルの所へかようことにした。

 そうしてちょうど一週間がったころめずらしくシエルの方からデュランに話しかけてきた。


「でゅら、んく、んは、どうし、てわた、しのと、ころ、くる、です、か?」


「う~ん、気になったからだ。こんなにすごいシエルのトラウマが」


「とら、うまが、ですか?」


「あぁ、だってそんなに仕事しごとができるのに裏方うらかただけなんて勿体もったいねぇだろ? だからシエルのトラウマをなんとかしてやりたいと思ってかよってる」


「……じゃあ、きい、てく、ださ、い」


「ああ! いいぞ!!」


 デュランがそういうとシエルは少しずつ過去かこのトラウマについて話してくれたが、あまり気分きぶんのいい話ではなかった。

 剣神であるヘルトの子供なのに宿屋やどや経営けいえいしたいなんておかしいと、先生せんせいふくめた周囲しゅういから言われ。将来しょうらいゆめという題材だいざい勇気ゆうきしぼってした作文さくぶんを先生にみんなの前でやぶかれてゴミばこてられたこと。

 そしてそれがトラウマになって学校がっこうへ行かなくなったが父親であるヘルトは一言ひとことめず、それがぎゃくくるしくて故郷ふるさとであるウィンクルム連合王国れんごうおうこくを飛び出し。誰も自分を剣神の娘として見ない神聖しんせいプライド王国で宿屋を始めたことを教えてくれた。


 えず色々いろいろと言いたいことはあったが、少し用事ようじができたデュランはその部屋へやそうとして――アリスにつかまった。


「……アリス、はなしてくれないか。その先生とやらをころしにけない」


「うん、やっぱりそうなるよね☆ もうその人はしょくうしってるし、路頭ろとうまよっているからゆるしてあげてって言ってもダメだよね☆☆」


「ダメだね、殺す――俺の孫にトラウマけてるんだぞ!! 地獄じごくくるしみを味合あじあわせてから殺さなければまん!!!」


「ま、ご? おじい、さま??」


「……あっ、えっと、その」


 デュランは話を聞き終わってから殺意さつい支配しはいされていてシエルもいることをすっかりわすれていたが、変装へんそうもかねて髪と目の色を緑色みどりいろにしていたため。

 たった今シエルは少し前の己と同じでデュランの正体しょいたいへ気がついたのだと理解りかいして言葉にまり、ほんのすこしのあいだだが――すきができた。


始原しげん魔法まほう――ドリームワールドかいッ!! 2人ともゆめ世界せかいってらっしゃい~~」


「アリス、テメェッ!!」


「な、にこ――」


 そのすきをついたアリスがデュランとシエルを魔法を使って夢の世界へおくり、部屋の中にはアリスだけがのこった。

 それからアリスは出発しゅっぱつ前にこういう事態じたい見越みこしてわたされていた携帯けいたいを使ってヘルトへ連絡れんらくし――


「ごめんねヘルト。れいのバカ教師きょうしけん、デュランにバラしちゃった☆」


「えっ、ちょ――」


 ――と言ってから通話つうわ終了しゅうりょうした。


 ヘルトが何かを言おうとしていたが、何を言おうとしていたのか予想よそうがついていたので聞く必要はなかった。

 デュランのことだからどのみちいつかはばれるだろうし、それをてき利用りようされたらたまったものではない。

 だからシエルとストームのけんについてアリスは旅の中ではじめから話すつもりだったが、ちょうどいい機会きかいだったので上手うまく2人を誘導ゆうどうし。アリスはこの状況じょうきょうつくり出していた。


たとえデュランにきらわれるとしても、デュランが死ぬよりはいい」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093083199139510


 アリスはそう狂気的きょうきてき表情ひょうじょうで言った後、部屋を出て行った。

 ……覚悟かくごガンギマリで草。

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