裏世界

「デュラン殿どの! このたびはホスピタル病院びょういんまもっていただき本当ほんとうにありがとうございました!! 我々われわれができることならば何でもします!!! 何なりとおもうけください!!!!」


「じゃあその丁寧ていねいすぎる言葉ことば使づかいと土下座どげざめてくれ、今の俺はただの五歳児・・・・・・なんだからさ・・・・・・。そんなにつかわなくていいから」


「いいえ! そうはいきませぬ!! 我々獣人族じゅうじんぞくは百年の時がろうとも――けっしてわすれてならないおんがデュラン殿にあるのです!!! これはホスピタル国民こくみん総意そういでもあります!!!! どうかご容赦ようしゃねがいたい!!!!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082804437482


 デュランは面倒めんどうくさい調しらべはなんとか回避かいひできたが、事情じじょうを聞いたこの国で二番目にえら王配おうはいである玉藻たまも狼鬼ろうきがなんでか目の前で土下座をしており。土下座は流石さすがにダメだろと思ったので気を遣うなと言ったのだが、責任感せきにんかんの強い獣人族には逆効果ぎゃくこうかだったようで国民の総意とまで言われてしまった。

 デュランはもう色々と考えるのが面倒くさくなったので、元々買う予定だったおおかみ煎餅せんべいきつねサブレをタダでもらうことにした。


「……百年もってんのに、このくに本当ほんとうわらねぇなあ。相変あいかわらずなようで安心あんしんしたよ。

 だったら今回の報酬ほうしゅうは狼煎餅と狐サブレを二十箱にじゅっぱこずつにする、それでいいか?」

 

「二十箱でよろしいのですか? もっとたくさん用意できますが??」


「それ以上は嵩張かさばるからいらねぇ、れとまっている宿やどおしえるからそこにとどけてくれ」


「分かりました! 責任せきにんもってきたてを届けさせてもらいます!! それではゆっくりしていってください!!!」


 デュランが宿の場所を教えると狼鬼ろうき文字もじどおりすっんでいった。

 何はともあれ一応いちおう話は終わったのでアリスに相手しといてもらった爆発ばくはつからたすけたおばちゃんの話を聞くため、椅子いすから立ち上がり。少し歩いて二人が対面たいめんしているソファへこしかけた。


「えぇ~と、確か名前は風花ふうかだったよな。少し話を聞いてもいいか?」


「だからデュラン、初対面しょたいめんの人にその言葉ことば使つかいはダメだって! ごめんね、風花ふうかさん?」


「いいえ、別に構いませんよ。それで私に聞きたいこととは何でしょうか?」


 デュランはあやまるアリスを尻目しりめ天晴てんせい鯉口こいくちった。


「まあ、俺はまわりくどいのきらいだから単刀たんとう直入ちょくにゅうくけどよ。さっきの時限じげん爆弾ばくだん――アレを仕掛しかけけたのはお前だろ・・・・


「……なるほど、どうして私が犯人はんにんだと分かった・・・・のですか?・・・・・


「犯人だと気がついた理由はいくつかあるが、一番大きいのは近くで爆弾が爆発したにしては動揺どうようしてなさぎたからだな。

 一般人いっぱんじんならパニックをこしてもおかしくないのに、アンタは落ち着き払って助けた俺にれいまで言ってただろ。だからアンタのことを調べた。

 そうしたら腹壁ふくへきヘルニアで入院にゅういんしていることが分かったがアンタ全然ぜんぜんいたがってなかったからな。かまをかけたんだよ、確信かくしんはしてたがな」


流石さすが剣神様けんじんさま、お見それしました」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082865107377


 デュランはそうかたり終わってから天晴を抜刀ばっとうし、アリスと共に風花ふうか攻撃こうげきした。

 しかし――


「それではおびの手榴弾しゅりゅうだんをおりください!!」


「「――なにッ!!?」」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082868710676


 ――部屋中をくすように爆発寸前ばくはつすんぜん手榴弾しゅりゅうだんあられて大爆発だいばくはつした。

 デュラン達はなんとか結界けっかい爆風ばくふうふせいだが、手榴弾しゅりゅうだんの数がおお防御ぼうぎょするので精一杯せいいっぱいだった。


「あの野郎やろう! がすか!!」


『カウントスタート!』


「デュラン、ま――」


 デュランはまらない爆発にこのままだと逃げ切られると判断はんだんし、アクセルブースターのボタンを押しながら結界を飛び出した。

 そして部屋の中央ちゅうおうじようとしていた空間くうかんあなを見つけるといそいでその中に飛び込んだのだが、辿たどいたのはまったく知らない場所だった。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082826309547


「……うん? ここは何処どこだ??」


分析ぶんせきをしたところ、どうやら現実げんじつ世界せかいかげにあたる世界のようです。

 それと十秒を切りましたので天下無双を解除かいじょするのを推奨すいしょうします。半径はんけい500メートルまで探知たんちしましたが、生命反応せいめいはんのうはありませんので』


「そうか、ありがとう。アイ、引き続き周囲しゅうい警戒けいかいたのんだ」


了解りょうかいです』


 デュランはアイから言われたとおり天下無双を解除した後、ためしに周囲しゅうい気配けはいさぐってみたが。アイの言うとおりむしの気配すらかんじなかった。

 デュランがどうするべきかなやんでいると、アイが『リーベ博士はかせがアクセルブースターに新機能しんきのう追加ついかしました』と言った。


「新機能? くわしい説明せつめいたのむ」


『どうやら今までデュラン様が吸収きゅうしゅうできないためたりにらすしかなかったやみ属性ぞくせい一旦いったんアクセルブースターの予備よび領域りょういきめておき、それを使って私が重力じゅうりょくあやつることでデュラン様をサポートするのが目的の機能のようです。

 この機能があれば天下無双状態じょうたいのデュラン様が体にまとっている超重力ちょうじゅうりょくよろいを私が展開てんかいすることができます。再現率さいげんりつは99.9%です。』


「そいつはすごいな!! それじゃあアイ、俺はこの世界の探索たんさくをするから防御ぼうぎょは任せたぞ!!!」


『了解しました、お気をつけて』


 デュランはそうしてこの世界の探索を始めたが、予想以上よそういじょうに世界がひろくて難航なんこうしていた。

 時々探知たんち生命反応せいめいはんのうが引っかかることがあったがすぐにえてしまい、下手人げしゅにんとは対面できなかった。


「……このやり方じゃ時間の無駄むだだな。

 アイ、天下無双を使って一旦いったん現実世界へ戻るからサポートをたのむ!」


『分かりました』


つるぎとなりててきつ――天下無双てんかむそうッ!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082927117578


 デュランは短縮詠唱たんしゅくえいしょうの天下無双を使うとすぐに空間くうかんって現実世界へと戻り、アリスと二人でいた部屋に向かったのだが。

 そこでっていたアリスはデュランの姿を目にすると幼子おさなごのようにき出し、デュランを捕獲ほかくしてはなしてくれなかった。

 デュランは自覚じかくなしに前世と同じ行動をしていたが、今の体はただの五歳児ごさいじだったことを思い出し。心配しんぱいかけたようだったので全力ぜんりょくでアリスにあまえてご機嫌きげんった。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082927714621


 結局けっきょくアリスをかせるのに時間がかかったため、あの世界の探索たんさく再開さいかいできたのは一週間いっしゅうかんだった。

 ……エルフは寿命じゅみょうが長いからか知らんけど、時間のスケールがデカいな!!

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