サインと爆発

「それじゃあ行ってくる、ナハト達は留守番るすばんよろしくな」


「――行ってくるね! みんな!!」


「あ、お父様、少しいいですか?」


「うん? いいぞ」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093081958721403


 デュランとアリスはホスピタル王国の宿やどで留守番するナハト達にそう言ってからしたスペースファルコンをバイクに変形へんけいさせて変形がわった後、二人でんで宿を飛び出そうとしたが。ステラに呼び止められたのでデュランはバイクを停車ていしゃさせてからステラの方へ振り向いた。

 ……アリスは少しほおふくらませている。


「お父様、できればいいのですが。お土産にきつねサブレを買ってきていただけませんか? お金ははらいますので」


「いや、全員分買ってくるよ。俺もアレは好きだからな、金ならあるから気にすんな。

 ……アンナからもらったお小遣こづかいだからあんまり威張えばるのもちがうか? まあ子供の小遣いにしては多すぎるがな。十箱じゅっぱこくらい買ってくるよ」


「デュラン。ホスピタル王国の入り口でもうすで五箱ごはこも買っているし、食べぎじゃない?

 今回はおおかみ煎餅せんべいにした方がよくないかな??」


「いや、アリスが狼煎餅好きなのは知ってるからそっちも十箱買うぞ? もう入り口で買ったのは全部っちまったもんな!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082828497518


 デュランは狼煎餅も買ってほしいのだろうと思ってアリスへそう言ったが、なんでか顔をげたアリスが背中をポカポカとたたたたいてきたため頭の上へ疑問符ぎもんふべていたが。

 アリスが何かを誤魔化ごまかすかのように体をデュランへ押しつけながら上下にらしてきたので、デュランはマシュマロのようなおっぱいの感触かんしょくで頭へ一気いっきのぼった。


「な、ななっ、なにを//////」


「デュラン~、早く行こうよ! まだ道路どうろをこのバイクで走ったことがないから僕すんごい楽しみなんだ!!」


「――おっぱいてながら体をるな! 運転うんてん集中しゅうちゅうできんわ!! そういうのはベッドの上でな!!!」


「うん♡♡♡、分かった♡♡♡♡」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082830352201


 デュランはアリスが体を上下に揺らすのをめたのを確認かくにんしてからバイクを発進はっしんさせ、ホスピタル王国の中心部ちゅうしんぶにあるホスピタル病院びょういん目指めざしてバイクをはしらせた。


「ウィンクルム連合王国れんごうおうこくほどじゃないけど、ホスピタル王国もかなり立派りっぱ建物たてものが多いな。ああいう古い作りの建物は高層こうそうビルってうんだったか。

 アリス。まちなかはあまり変わってないが、やっぱりホスピタル病院は新しくなっているのか? どんなかんじだ??」


「う~ん、建物自体じたいは百年前に作り直した時からあまり変わってないよ。

 医療いりょう関係かんけい機械きかい最新鋭さいしんえいすぎて僕には理解りかいできないからよく分からないけど」


「へぇ、あいつら頑張がんばったんだな。ただの回復かいふく魔法まほうじゃガンや病原菌びょうげんきんとかには対処たいしょできないからな、これからも獣人族じゅうじんぞくとは仲良なかよくしなきゃな」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082776667316


 ホスピタル王国は住人じゅうにん全員ぜんいん五感ごかん人族じんぞくよりもすぐれている獣人族じゅうじんぞくほか種族しゅぞく実力者じつりょくしゃしかんでいないため、全ての道路どうろ法定最高ほうていさいこう速度そくどが100キロの最高にイカれた国である。

 なのでかならず入り口で観光客かんこうきゃくにはその危険性きけんせい説明せつめいし、公共交通こうきょうこうつう機関きかん利用りようするのを推奨すいしょうしているのですが。

 デュランは五歳児ごさいじにもかかわらず普通ふつうに100キロの速度を出しながらバイクをあやつり、ホスピタル病院まで何事なにごともなく到着とうちゃくしました。……バケモノかな。


「本当に建物自体は変わってないな、この病院が完成かんせいするまで何回かかよったし。俺も患者かんじゃとして大分だいぶ世話せわになったから感慨かんがいぶかいな」


「……僕はデュランのことをなおせないお医者いしゃさんにかぞれないくらいたりしちゃったから、正直しょうじきまずいかな。

 当時八つ当たりした人がもういないとは言え、みんな変革の剣神のアニメや小説経由けいゆで知ってるだろうし。どのつらしてやがったとか思われないかな! どうしようデュラン!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082834541526


 デュランはアリスが真剣しんけんなやんでいるようだったから一分ほどかんがんだが、どれほど考えても死人しにんくちなしだろとしか思わなかったので。そのままつたえることにした。


「……別に気にする必要なくないか、どうせもう全員死んでるんだし。死人しにんくちなしだぞ?」


「まあそうだけどね! 僕が気にするの!!」


「じゃあ気にしてていいんじゃないか、それだけアリスが反省はんせいしてるってことなんだからさ」


「あんまりあまやかさないでよ!! 一人でてなくなっちゃう!!!」


 その場にすわみながらマジがおでそうさけぶアリスにたいしてゾクゾクしたデュランはニヤリとしたみをうかべた後、くちびるを彼女の顔へ近づけてから「俺はそういうアリスも大好だいすきだよ――俺に依存いぞんしちゃえ♡♡♡、あいしてる♡♡♡♡」と耳元みみもとささやいた。

 そうしたらアリスが腰砕こしくだけになったのでその体を受け止め、デュランは彼女が立てるようになるまであい言葉ことばささやき続けるのでした。

 ……やっぱりアリスの凶行きょうこうかんしては八割方はちわりがたデュランがわるいだろ。コイツは無駄むだかおこえがいいからな、ハァッ。



 




「デュラン! あのASMRアスマロボイスはひどいよ!! ちょっとだけおしっこをらしちゃったんだよ僕!!!」


「なんだパンツがしいのか? ほれえのパンツをだぞ、トイレでえてきなさい」


幼稚園ようちえん先生せんせいか!! パンツえる必要ひつようがあるほどらしてないわ!!!」


「アリス、一応病院の敷地内しきちないだからあまりさわがない方がいいぞ? 迷惑めいわくだからな」


「――ASMRアスマロボイスでさっきまでささやつづけていたやつが常識じょうしきかたるなァッ!!!?」


 デュラン達がこんな感じの夫婦ふうふ漫才まんざいをホスピタル病院の入り口で披露ひろうしていると、通りがかった人々から御捻おひねりをデュランは手渡てわたされ。もらえるものはもらっとくかの精神せいしんで全てデュランのお小遣こづかいにした。

 アリスへ渡そうとする人も中にはいたが、デュランが殺気さっきを飛ばして阻止そししたので。アリスにれるおろものはいなかった。

 ただデュランの攻撃こうげきけるのが目的もくてきごうもの結構けっこういたため、短縮詠唱たんしゅくえいしょう天下てんか無双むそうを使ったデュランが全力ぜんりょくたたきのめしました。

 そのためアリスに飛びかかった者達ものたち全員ぜんいん恍惚こうこつ表情ひょうじょう気絶きぜつしながらその場へたおすことになりました。……全員ドMで草。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082777044388


 何はともあれホスピタル病院に辿たどいたデュラン達は手土産てみやげとしてきつねサブレを一箱ひとはこ買ってからこの国の女王である玉藻たまも天狐てんこの部屋を目指めざして歩き、部屋へ着くと三回ノックして許可きょかをもらってから中に入った。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082795008145


 そして結婚式けっこんしき招待状しょうたいじょうと狐サブレを天狐てんこわたし、事情じじょう説明せつめいしてから協力きょうりょく要請ようせいすると二つ返事へんじれてくれた上。

 少数精鋭しょうすうせいえい特殊とくしゅ部隊ぶたい医者いしゃけん剣士けんしとして娘である玉藻たまも空狐くうこ推薦すいせんしてもらったので、えずいにって見たのだが。


「この色紙しきしほんにもサインをお願いいたします! デュラン殿どの!! アリス殿どの!!!」


「――色紙も本も数が多すぎるわ!! 腱鞘炎けんしょうえんになるだろうが!!! ちったぁ遠慮えんりょしろ!!!!」


「おぉ!! なまボイスありがとうございます!!! これだけであと百年ひゃくねんたたえます!!!!」


「あ、あははっ、すごく個性的こせいてきな子だね」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082795115025


 色紙と本にデュランとアリスの二人がサインしてくれるのなら特殊部隊に参加してもいいと空狐くうこが言ったので、サインをデュラン達は書き続けていたのだが。

 色紙と本の数がひゃくえた当たりでデュランが我慢がまんできなくなり、空狐くうこへクレームをつけたがまったくいていなかった。

 もう色々と面倒めんどうくさくなったデュランはうつ十体じゅったい創り出し、アリスの分のサインも同時にわらせてから空狐くうこの部屋を出た。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093082858022878


 そうして予定が全部終わったので宿やどかえろうかアリスと二人で相談そうだんしていると、近くの病室びょうしつで何かが爆発ばくはつした。

 デュランは状況じょうきょうがよく飲み込めなかったが、緊急きんきゅう事態じたいであることは理解りかいしたのでアクセルブースターのボタンを押した。


『カウントスタート!』


面倒めんどうくせえなクソッタレ!! 病院で爆弾ばくだんなんか使ってんじゃねぇ!!!」


「あ、ありがとうございます」


「――いいから速くげろ! 邪魔じゃまだ!!」


 デュランは爆発が直撃ちょくげきしそうになっていたおばちゃんをたすけてから周囲しゅうい気配けはいさぐったが、あやしい人物じんぶつはいなかったので時限じげん爆弾ばくだんだと断定だんていすると。わずかな駆動音くどうおんもと五十個ごじゅっこの時限爆弾を見つけ出し。


界破斬かいはざん――だんッ!!」


 それら全てを天晴てんせい空間くうかんいて創り出したあなほうみ、なんとか被害者ひがいしゃゼロで事件じけん解決かいけつすることができたが。この後の調しらべが面倒めんどうくさくて仕方しかたなかった。

 思わずためいきいてから近くへ来た警備員けいびいんに向けて両手りょうてげ、無抵抗むていこうだとしめしながら天下無双を解除かいじょした。

 ――残り時間は十五秒だった。

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