嘲笑と猫耳

 フォレスト王国。

 雲よりも高く成長するジャイアントフォレストと呼ばれる巨大な木だけでできた森の上へ木人族もくじんぞく鳥人族ちょうじんぞくきずいたこの国は、地上からでは発見できないほど高い場所にある。

 そのためかつて世界を支配した起源統一教団きげんとういつきょうだんの被害を唯一ゆいいつ逃れた多種族たしゅぞくの国であり、その情報を知った他の種族はこの国のことを桃源郷とうげんきょうと呼んで多くの多種族がこの国を目指したが。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093079247227024


 海からの湿しめった北東風きたごちが年中、ジャイアントフォレストにぶつかり雨を降らせるため。

 ジャイアントフォレストの生えている場所は水がたままって海とつながってしまってる上に木竜もくりゅうという凶暴きょうぼうなモンスターのれの縄張なわばりでもある。

 その影響えいきょうでフォレスト王国にたどり着けるのは全体の0.01%ほどでしかなく、そのためこの国は難民等なんみんとうに悩まされることなく。剣神けんじんが表れるまでの最悪の時代を無傷むきずで切り抜けることが出来ていた。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093077536469453


 そんなフォレスト王国の城の中でこの世界で起こるありとあらゆる事件や戦争の裏で必ず暗躍あんやくしている全ての黒幕くろまく――クラウンはデュラン・ライオットの死体から創り出した泥人形スワンプマンの剣神の報告を聞くと満面の笑みを浮べながらガッツポーズをした。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818023211720731745


 剣神はその行動に眉をひそめることもなくオペレーションスワンプマンの報告を続けた。


「……カオス様・・・・、今説明したとおり。

 全ての街からチンピラやニートなどのこれからのゲームに必要ないNPC・・・排除はいじょ、完了しました。

 次の任務にんむを言いつけください」


「分かったありがとう、次の任務は剣神デュラン・クラインハルトの修行相手になるだけだから簡単だと思うよ。

 それ以外にお願いする任務はないし、もうはいにしたがうことも強制きょうせいしない。自由に生きてくれたたまえ」


「……? 自由とは何でしょうか、カオス様」


「とっても素晴らしいことだよ、剣神。

 後の分からないことはアリスに聞きなさい、彼女は優しいからね。きっと丁寧ていねいに答えてもらえるよ」


 そうしてめんどくさいことをアリスへ押しつけたクラウンはこれからくる客人負け犬のために唐辛子とうがらしを入れたおやを用意し、今日はどうやっていじめてやろうかと考えながらヴィンデの到着とうちゃくを待つのだった。

 ……どうせクラウンこいつからのお冷やなんてヴィンデはまないのに唐辛子入りを準備するとか、最高に陰湿いんしつで草。


 ※ゴミみたいな性格をしていますが、こんなんでも一応は剣神に関する物語全体のラスボスです。はなで笑って見守ってあげましょう。







 部屋に入ってきたヴィンデは殺気立さっきだっていることを隠そうともせずにクラウンの眉間みけんにリボルバーの照準しょうじゅんさだめると、撃鉄ハンマー起こすコッキングした。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330665110693197


「……急に呼びつけるなんて何のつもり、このクズ。答えによってはその頭をち抜くわよ」


SスミスアンドWウェッソンMエム500、ヴィンデ殿どのは本当にそのじゅうが好きでござるなぁww。

 もっといい銃をプレゼントするのではいに売らないでござるかww、大金貨だいきんか千枚までなら出すでござるよww」


「――ッ!!!」


 バンッという銃声じゅうせいひびいてクラウンの頭に大きな風穴かざあながあいたが、すぐに元に戻ってってしまった。

 部屋の外から守兵しゅへいけてくることに気がついたヴィンデは幻惑魔法げんわくまほうで姿をかくし、クラウンが上手く誤魔化ごまかして守兵が外へ出るのを待ってから再び姿を現した。


剣神一条刹那けんじんいちじょうせつな形見かたみを売ってくれと言うだけで発砲はっぽうするんでござるなww、短気たんきすぎるでござるよww」


「――だまれ、さっさと用件ようけんを言え」


「怒っているでござるなぁ~、そんなに言うんだったら用件を言ってやるよ――負け犬・・・


「……」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093077536296936


 負け犬と言われたヴィンデは今度は反論はんろんすることなくただ耳をまし、クラウンの言葉を待っていたが「いくつか条件をつけるけど、もうデュラン達へ秘密ひみつを話してもいいよ」というあまりにもヴィンデにとって都合つごうがよすぎる物だったため。目を見開いた。


「――それは本当かクラウン!! うそじゃないだろうな!!!」


勿論もちろん本当だとも、その方が面白くなりそうだからね。

 ただししゃべっちゃダメなこともいくつかあるけどね、それに関しては後でまとめるとして。

 一つだけ条件があるんだけど、いいかな?」


「……何」


 確認を取れて少し落ち着いたヴィンデは目の前のクズの性格を思い出し、どうせろくでもない条件だと思いながらも話を聞くことにした。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093077536278467


 するとクラウンは二チャリとした笑みを浮べながらヴィンデの耳元へと口をせた。


「負け犬が今も大事にかかえているその銃を破壊はかいしてくれ、今ここで」


「――えっ」


 クラウンの言葉を聞いたヴィンデは思わず小さな子供のようにふるえながら形見のリボルバーをクラウンから隠し、聞き間違えではないかと願いながらクラウンの方へ視線を向けたが。

 まるでヴィンデの心を理解しているかのようにもう一度同じことを言ったクラウンへヴィンデは涙を流しながらその場で土下座どげざすると「すいません、それだけは勘弁かんべんしてくださいッ!!」とさけんだ。


「ブフフ、いいでござるよww。見たかった物は見せてもらったでござるからなww」


「ほ、本当ですか!」


「我が輩は嘘は・・つかんよ、それじゃあこのリボルバーをあずかるだけにしておいてあげるでござる。

 このゲームにヴィンデ殿が勝利すればきちんと返すでござる、これでいいでござるな」


「はい……それで、お願いします」


 そうしてクラウンは土下座するヴィンデの目の前からリボルバーを取り上げると背後に創り出した異空間へと投げ込み、禁則事項きんそくじこうについて長々と語った後。

 ヴィンデへ「我が輩は十年後にデュラン殿へ闘いを仕掛けるでござる、それとこのスワンプマンの剣神をデュラン殿の修行相手として送るのでよろしくと言っておいてでござるww」そう伝えてから部屋を出て行った。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093077536216074


 ヴィンデは悔しさから言葉にならない叫び声を上げながら自身の弱さをのろい、しばらくの間土下座したままだったが。

 少しでも速くデュラン達へ情報を伝えるため、涙をいて立ち上がるとクラインハルト家を目指して飛んでいった。


 こうして世界を取り戻せるかどうかの闘いの火蓋ひぶたは切られたのだった――この闘いの勝者は神にも分からない。







 ――一方その頃、デュランは。


「あ、アリスにゃ・・――こ、こういう格好かっこうは俺には似合にあってないと思うにゃー? それと語尾ごびに『にゃ』がつく魔法は解除してくれにゃ。

 けっこうにゃ、恥ずかしいにゃよ??」


「勝手に修行したおしおきなんだからダ~~メ♡♡♡、もっと可愛い顔をみせてよ。デュランちゃんっ・・・・♡♡♡♡♡」


「――おににゃ! 悪魔あくまにゃ!! 人でなしだにゃっ!!!」


「デュランったらそんなこと言っていいのかな~~♡♡、アリスお姉ちゃんはこの写真をいつでもばらまけるんだよ~~♡♡♡。

 ざーこ♡、ざーこ♡♡」


 崖登り修行をしたおしおきでアリスに魔法で猫耳ねこみみ尻尾しっぽを生やされ、語尾を『にゃ』に変えられた上でピンク色のメイド服を着せられていた。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093079294651068


 デュランはあまりの恥ずかしさに全力で抵抗していたが口でも力でもアリスに勝てなかったため、最終的にアリスのひざの上で死んだ目で考えるのを止めた。

 ……この部屋へ入った上で自分のやらかしを話さなくてはならないのかヴィンデは、流石さすが可哀想かわいそう同情どうじょうする。強く生きて。

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