崖登り

「やっぱり少しでも早く前世の水準に追いつくためには実戦経験を積むのが一番だと思うんだよな。けど死にかける修行方法は全てアリスに禁止されてしまった。

 ――と言うわけで俺は今からこのドラゴン共のであるがけを武器なしで駆け下りてここまで戻ってくるから、うつは俺の命が危なかったら助けに入ってくれ。分かったか?」


『……いくら死ぬ危険性が少ないとはいえ、バレたらアリスにまた怒られるぞ。いいのか?』


「平気平気! アリスてに今言ったのと同じ内容が書いてある手紙を残しておいたから大丈夫だと思うぞ!!」


『……やれやれ』


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093076356085803


 現し身は丸腰まるごしで崖の上に立っているデュランをなんとか説得しようとしたが、準備運動までしているしこれは止めるのは無理だなと悟って説得をあきらめた。

 現し身はデュランから預かった天晴てんせいと脇差しを腰に差し、助ける準備を終わらせた。

 デュランは準備が終わったのを見届けるとドラゴンのれの真横まよこけ下り、崖下の地面まで辿り着くとそのまま崖を駆け上ろうとしたが。

 怒り狂ったドラゴンの群れが放ったブレス攻撃が近くまでせまっていることに気がつき、崖をることで回避かいひすることは出来たが状況は最悪さいあくだった。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093076356782403


 四方八方をドラゴンの群れに囲まれて武器も持っていない子供、こう書けばこの状況の最悪具合ぐあいとこれを狙ってつくり出したデュランのイカれ具合がよく分かるだろう。

 ……こいつ、本当に頭おかしいわ。


「アハハッ、楽しくなってきたァッ!!!」


 そうさけんだデュランは光属性の魔力で創り出した強烈きょうれつな光でドラゴンの群れの視界を潰すと崖のぼりを再開した。

 しかしドラゴンは目が見えなくてもはな聴覚ちょうかく発達はったつしているため、状況はよくなってはおらず。

 ドラゴンがばらまくようにブレス攻撃をするようになったため、むしろ悪化していたが。デュランにとっては予定通りである。

 ――そうデュランの修行とはこの状況で崖上まで辿り着くといものなのである。よい子のみんなは真似まねしちゃダメですよ。


「――今最高に生きてるって感じがする、くぅ~やっぱり修行は楽しいぜ!!!」


 そう叫びながら自身を食おうとしてきたドラゴンの頭をだいにして跳躍ちょうやくし、別のドラゴンへ対しても同じような対応で崖上近くまで登ってきていたが、群れのボスと思わしき巨大なドラゴンがデュランをにらみつけており。一筋縄ひとすじなわではいかなそうだった。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093076358575435


「……アイツ強ぇな、流石に丸腰じゃ勝てねぇ。

 ――だが! 今は・・アイツに勝つための修行じゃねぇ!! 悪いが素通りさせてもらうぞ!!!」


「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」


 デュランは近くのドラゴンを踏み台に飛び上がると空中で体をひねりそのまま魔力で創り出した足場をって更に加速し、群れのボスの鼻先はなさきに全力のキックをぶち込んだ。

 そして群れのボスが上げる怨嗟えんさの声を無視してその背中を踏み台にして飛び上がり、なんとか崖上に辿り着くことが出来た。


「現し身! 武器を返してくれ!!」


『……なるほどここからは実戦経験を積むための修行をいかくるったドラゴン達相手にやるのか、正直あのドラゴン達には同情してしまうな。クハハッ』


 現し身はそうわらいながら武器をデュランへと返すと、自身の体を構成する魔力を使って刀を一本創り出した。

 現し身は群れのボスのブレス攻撃をそのまま返して見せたデュランの姿にこれはもう手助けはいらんだろ、と思いながらも万が一デュランが怪我けがをしてアリスが泣く姿を見たくなかったので真剣にデュランの修行を見守った。

 そして闘いが始まってから三十分後。現し身の予想通り、群れのボスを含めたドラゴンの群れは半壊はんかいしていた。

 デュランはこれ以上ドラゴンを殺すとこの山の生態系せいたいけいくずれてしまうため、ちょうどいいところで闘いを止めた。


 その後は下に降りて大量のドラゴンの死体を解体し、今日の晩飯ばんめし豪華ごうかになるな。と暢気のんきなことを考えながらデュランはクラインハルトていへと帰ったが。

 現し身の予想通り激怒げきどしていたアリスにボコボコにされ、顔を真っ赤にれ上げさせながら正座をさせられることになるのでした。


「こ゛へ゛ん゛な゛さ゛い゛、こ゛は゛ん゛く゛た゛さ゛い゛。……はら、へった」


「絶対にダメ! 丸一日そこで反省していなさい!! このおバカ!!!」


 ……私はバカですww、顔に直接書いてあって草。

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