友達

「……本物の剣神けんじん、か。ヘルトが言っていたことは本当だったんだな」


お前も・・・髪と目の色を変えているみたいだが黒神こくじんだな、お前も生まれ変わってたんだな? お互いにこの時代に生まれ変わってるなんてみょうえんを感じるな。

 ――それで。今日はどうしたんだ、黒神」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093076294417960


 アリスからの接待せったいプレイを受けた翌日、神聖プライド王国にあるクラインハルトていへ帰ろうとしていたデュラン達はヘルトから「あってほしい人がいるのですが、帰る前に少し時間をもらってもいいですか?」と言われ、案内された場所で出会った髪と目が赤い謎の少年の姿を目にしたデュランはすぐにその正体がかつて世界の存亡そんぼうをかけて闘った黒神だと気が付いた。

 決着がつき転生した今となっては特に思うところもなかったため、デュランは世間話せけんばなしをするかのような気楽さで話しかけたが。

 黒神の表情が暗いことに気が付き、その表情を真剣しんけんなものへと変えた。


「どうしたんだ、お前。やけに暗い顔をしているけど、何かなやみごとでもあるのか?」


「――悩み、か。たしかに悩みといえば、悩みだな。

 剣神、今日はお前に一つ頼みがあって会いにきた」


 デュランは黒神の頼みというものがとても困難こんなんものだと予測がついたが、好敵手こうてきしゅである黒神の頼みだしできる限りかなえようと思いながら口を開いた。


「何を頼みたいんだ? できる限り叶えてやる」


「ありがとう剣神、頼みはそんなにむずかしいものじゃない。

 私の首を剣神――いや、友である君に切ってほしいという簡単なものだ。心配しなくても大丈夫だ」


「――ふざけてるのかテメェッ!!」


 だが黒神の首をれというふざけた頼みにデュランは一瞬で頭へと血が上り、黒神の頭を鷲掴わしづかみにしながら目の前のテーブルへ叩きつけた。

 大きな音がひびき。周囲で見守っていたアリス達がおどろいていたが、デュランはそれを気にすることなく黒神の頭を持ち上げて目線を合わせてからにらみつけた。


「いいか黒神! 俺とお前は敵同士だったけどな、頼まれたからってその首をあっさりと斬れるほど俺はお前のことをきらっていない!! 見くびるなよ!!!

 ……お前がそんなことを頼んできた理由はさっしがついている、つぐないたいんだろ。お前がうばってしまったたくさんの命に対して」


「ッ!!? ――そうだ、償いだ! 私は私のエゴで殺してしまった数多くの命へ対して償う義務ぎむがあるのだ!!」


「その考えは間違っているぞ! お前一人が死んだところでお前が奪った命がよみがるわけじゃない!! お前が死んだところで何も変わらないんだよ!!! このバカが!!!!」


 デュランは涙を流しながらそう口に出した黒神へそう言い返し、睨みつけながら「死んだって罪滅つみほろぼしにはならねえぞ!!!」とさけんだ。


「ッ!」


「そうやって逃げてんじゃねェ!!

 死んで罪を償うなんて、卑怯者ひきょうもののやることだ!!!」


「じゃあどうやって償えばいいんだ!!! 

 奪ってしまったありとあらゆる命に、どうやって……」


 デュランはそう言いながら顔をゆがめた黒神の頭を放してから「バカか、テメェ」と言うと、床へ倒れこんだ黒神に手を差し伸べた。


「お前が今の人生を精一杯せいいっぱい生き抜くのが一番の償いだ。

 俺も友達として・・・・・手を貸してやるからよ、一緒に生きようぜ。黒神」


「そんな、そんなことが償いになるわけ」


「バーカ、お前が奪った命の分もお前が背負せおって生きてくんだ。

 お前が想像してる以上につらくてくるしいよ、実際に生き抜いた俺が言うんだから間違いない。

 それでも納得なっとくできないのなら奪った以上の命を救ったらどうだ?

 ――まあ。俺はそんなかったるいこと、死んでもごめ・・・・・・んだがな・・・・


 デュランはそう言葉をはっしてから黒神の手をつかんで立ち上がらせ、顔をテーブルへ叩きつけたことをびてからアリス達とクラインハルト邸に帰ろうとしたが。黒神から呼び止められて立ち止まった。


「どうしたんだ黒神、頭痛いのか?」


「頭は大丈夫だ、別れの挨拶がしたいだけだ。

 それと私の今の名前はナハト・ノイモーントだ。黒神じゃないぞ、デュラン・・・・

 ……私も名前で呼ぶから黒神は止めろ」


「分かった、これからよろしくな。ナハト」


 デュランがそう返事しながら手を差し出すとナハトはうれしそうに微笑ほほえみながら「あぁ、よろしく頼む。デュラン」と言ってからデュランの手を力強くつかんだ。

 デュランはなんとか死ぬことを止めさせることができたと内心ほっとしながら「ノイモーントか、つくづく妙な縁だな」とつぶやいた。


「うんっ? 何がだデュラン??」


「まあ、簡単に言っちまうとノイモーントはウィンクルム連邦国・・・の住人で唯一生き残った侍の男へ俺がやった家名かめいなんだ。

 何せ名前をたずねても『あるじであるナイト様を守れなかった拙者せっしゃに名前など贅沢ぜいたくすぎます』って言ってそれがしとしか名乗らなくてな、仕方なく俺が名字をやったんだよ」


「なっ、それは本当かデュラン!! ま――」


「――おいッ!! 名前を言おうとするなよ!!! 

 もう死んでいるとはいえ俺はあいつと約束したんだよ、何があろうと絶対にあいつの名前を知ろうとしないって。

 男と男の約束なんだ!! 絶対に言うなよ、分かったなッ!!!」


 デュランは某の名前を言おうとしたナハトの口を押さえつけながらそう叫び、ナハトがうなづくと口から手を放した。

 そして頭を手でかきながらつまんで某との会話と出会いを某の主であるナイト・エンペラーもといナハトに話した。

 ……自身の臣下でありナハトの臣下でもあるとかややこしいなと思いながらもデュランは口には出さなかった。


「――とまあ、こんな感じだ。某は本当に仕事ができるやつで助かったぞ。

 あいつがいなければ俺が死ぬまでにこの国をアリスへ残すことができなかったからな……本当に某には感謝かんしゃしている」


「私からもお礼を言わせてくれ、私の臣下を救ってくれてありがとう。

 その上ウィンクルムの名をぐ国を建国してくれるなど、感謝してもしきれない」


「お互い様だ。じゃあな、ナハト。

 今度会う時は思いっきり闘おうぜ、ナハトは強いからな。闘えれば俺の目標に近づけるからな!!」


「目標? 何かやりたいことがあるのか、デュラン??」


 ナハトからそう言われたデュランはニヤリと笑いながら「俺の目標は世界最強だッ!!」と声を上げた。

 ナハトはその目標を聞くと涙が出るほど笑った後「相変わらずすごいなデュランは。その夢・・・、応援するよ」とデュランの手をにぎった。


 こうしてかつて敵だったナハトと友達になったデュランはクラインハルト邸へ戻ると再び現し身と死ぬことが前提ぜんていの修行を再開したが、デュランが死ぬ光景を目の当たりにしたアリスからお説教されて少し反省していた。


「分かった、今度からは死ぬ寸前でめとく。これでいいか、アリス?」


「いい訳がないでしょうがっ! このおバカ!! そこに正座せいざしなさい!!!」


 なので次からは死ぬギリギリで止めとくと言ったのだが、何故かアリスから正座るように言われてこんこんと説教された。

 そのことに対してデュランはせぬと思いながらもメイド服を着たアリスは可愛いなぁと思いながら聞き流していたが、何故かアリスにバレて投げ飛ばされた。


 後からいてみると「デュランが何を考えているかくらい分かります!!」と言われて思わず笑顔になったデュランはその可愛らしい姿でアリスをノックアウトし、デュランは何故か鼻血はなぢを吹き出しながら気絶したアリスのことを心配しているのでした。 

 ……アンジャッシュで草ァ!

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