世界最強

「アリス、そう言えば俺が死んだ後に生まれた俺達の子供がいるって本で読んだんだが。その子はいないのか?

 顔を見てみたかったんだが……」


「あぁ、フランメのこと。あの子なら父親であるデュランを超える最強の剣士になる! って、言ってずっと世界中を旅しているよ。

 あの子もデュランに会えたならすごく喜ぶでしょうね、あこがれの剣士なんですものっ」


「そうなのか、少しれるな」


 デュランがそう言いながらほおを紅くしていると「これがフランメの写真よ」とアリスから一枚の写真を手わたされた。 


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093073855100677


 見てみると写真には一人の美しい女性が映っており、余計に会ってみたくなったが。いないんだからしょうがないとあきらめた。

 それからアリスとの会話を思い出してからフランメも最強の剣士を目指しているのならライバルでもあるなと、気持ちを引きめてから「アリス、俺も世界最強を目指してまた旅をしようと思ってるんだけど。一緒に行くか?」とアリスへと話しかけた。


「うんっ! もちろん一緒に行くよ!! ……けど世界最強?

 前世の頃からデュランは最強の剣士だったし、今さら目指すようなものなのかな??」


「確かに前世の時から俺は強かったけどさ、色々とやることがあったから純粋じゅんすいに強さだけを追い求めたことってなかっただろ?

 だからもうやることは前世で全部終わらせているし、今度は世界最強って確信かくしんできるまで強さだけを追い求めてみたいと思ったんだ。俺も男だからな」


 デュランがそう言ってから笑うとアリスは目をキラキラとかがやかせながら「それすごく素敵すてきな夢だと思うよデュラン! それとデュランの夢は妻である僕の夢でもありますからね、応援します!!」と宣言した。

 デュランが相変わらずぐなアリスの姿にれ直しながら体がある程度出来上がる十歳を迎えたら旅へ出ることを伝えると、アリスはそれまでの間はメイドとしてクラインハルト家でデュランの世話をしたいと言ってきた。

 デュランは突然の提案に目を見開いておどろきながらも「俺は別にいいよ」とアリスへ返事をした。


「やった! じゃあ僕はデュランのお母様に働く許可をもらってくるね!!」


「アリス、だいぶ興奮おうふんしてるな。転ばないように気をつけろよ」


「うん! 気をつける!!」


 そう返事をしながら飛び出していったアリスを見送った後、デュランはアリスのメイド服姿を想像して笑みを浮べていたが。

 戻ってきたアリスは娘であるステラも一緒にメイドとしてクラインハルト家で働くことになったとムスッとしていたので、アリスが可愛いとさけんでいた体を使って全力であまえてアリスのご機嫌きげんを取った。

 デュランの男としてのプライドが傷ついたが最愛の妻であるアリスのためそれを表へ出すことなく、アリスにたくさん可愛がられた。

 ……このリア充共め! 末永すえながく爆発してろ!! 







 かつて人族じんぞく起源神きげんしんに選ばれた種族であり、他の種族を支配して世界を統一するべきだという考えから世界を支配した悪の組織――起源きげん統一教団とういつきょうだん

 剣神けんじんデュラン・ライオットの手で完膚かんぷなきまでに叩きのめされ、黒神こくじんナイト・エンペラーによってほろぼされた起源統一教団の生き残り達はいつか再び世界を征服せいふくし支配するため長い間潜伏せんぷくしていたが。

 研究を続けていた生物兵器が完成したことで調子に乗り、意気いき揚々ようよう拠点きょてん近くの街へとやってきていた。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093074672974804


 しかし今となっては知る者などいないはずの彼らの前になぞの人物がふさがり、殺気を向けてきたため。彼らは動揺どうようしてバイクを止めた。


「ッ!!? ――貴様、何者だッ!!」


「オレか? ――オレはお前達悪党あくとうの敵! そしてしいたげられる人々の味方!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093076254257011


剣帝けんていフランメ・ライオット!! ここから先には進ませんぞ!!! 起源統一教団悪党共!!!!」


「何ィッ!? あの忌々いまいましい剣神の娘だと!!? 

 ……ならばちょうどいい、貴様でこいつの実力を確かめてやる! ネフィリム!! この娘を殺せェッ!!!」


 そうさけんだ謎の人物――フランメ・ライオットの正体を知った起源統一教団の生き残り達は怒りで顔を真っ赤に染め上げ、生物兵器であるネフィリムへ向けてそう命令した


『―――――ッ!』


「……かなり強そうだな、少し時間がかかりそうだッ!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093074677849265


 ネフィリムはかみ逆立さかだつほどの魔力を体にまといながら巨大な大剣を振るってフランメを殺そうとしたが、フランメの刀で攻撃を受け流された。

 そしてかえかたな四肢ししを斬られたが、分厚ぶあつい筋肉きんにくのおかげで致命傷ちめいしょううことはなかった。

 ネフィリムはすぐに反撃の一撃を放ったがフランメは横なぎに振るわれた大剣の上へ乗ることで攻撃をわし、そのままネフィリムの首を斬り飛ばした。


「ば、バカなッ!? ネフィリムはあの忌々いまいましい剣神のクローンを強化した生物兵器せいぶつへいきだぞ!!! それをたった一撃でッ!!!!」


「当たり前だろ、どれだけ力が強かろうと心がなく技術も足りないのでは片手落ちもいいところ――自意識をうばったお前らのミスだ」


 フランメはそう言うと目を閉じ。悪党共のアジトで目にした大勢おおぜいの子供達の亡骸なきがらと、実験室へ辿たどり着いた時には手遅ておくれだった実験体じっけんたいの少女が死ぬ前に流した一条ひとすじの涙を脳裏のうりへよぎらせながらその目を開けた。

 死にたくないと、そう言っていた少女達のかたきつため。

 そして何よりもこれ以上の犠牲者ぎせいしゃをださないためにフランメはその目へ殺意さつい宿やどし、少女達の無念むねんに飛び出した。


 そしてその場にいた全員を殺し終えると別働隊べつどうたいを迎えっていたルビーと合流し、再び父親であるデュランと剣神である兄ヘルトを超える剣士となるための旅を再開した。

 彼女が憧れの剣士である父親と会うことになるのはまだ……少しだけ未来の話。

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