結婚

「……デュラン、君は百年前にくなった剣神けんじんデュラン・ライオットの生まれ変わりかい? 答えたくなければ答えなくてもいいけど」


「――俺が生まれたときから知ってたよな、前世と同じ名前であるデュラン・・・・って名付けたんだから。今さら改まってくようなことなのか?

 髪と目の色が黄色だから気がついたんだろ、光竜こうりゅうライオード以外だとこの色を持っているのは俺だけだからな」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818023213891921423


 クラインハルト家の庭で父親であるレウスへそう投げやり気味ぎみげたデュランは生まれ変わってからもう五年も経つのにも関わらず、何故今さら前世のことを訊いてくるのか分からなかったが。

 レウスは無駄むだなことをしないことをよく理解していたため、そう質問してみると――


「アンナと相談して決めたんだ。デュランの自意識がハッキリするだろう五歳の誕生日までデュランのことを剣神様じゃなく、ただの子供として育てようってね。

 デュランの前世が誰であれ、今はぼく達夫婦の子供なのだから特別扱いしたくなかったんだ。家族だから・・・・・


 ――という予想外の言葉が返ってきたため。デュランはポカンと大きく口を開けた後、腹を抱えて笑い出した。

 何故デュランが笑っているのか分からなかったレウスは困惑こんわくしていたが、しばらくして笑いが収まったデュランが「レウス達はやっぱりいい親だな、結構好きだぜそういうところ」と言ったのを耳にするとほおを紅く染め上げた。

 ……あこがれの剣士であるデュランからの言葉がクリーンヒットしたようである、可哀想かわいそうに。


「まあ、何はともあれ訊いてきたってことは何かしらあるんだろ、国へ報告でもするのか?」


「……するどいなデュラン、その通りだ。伝説の剣士の生まれ変わりがいるだなんて世間に知れたら大事おおごとになるからね、この五年間はまだそうとは確定して・・・・・・・・・・いなかったから・・・・・・・国へは報告しなくとも問題はなかった。

 だけどデュランが剣神様の生まれ変わりであることが分かったからにはもうかくすことはできない、ぼくも剣帝けんていの一人である以上はね」


「剣帝? ……あぁ、俺が創った剣士に関する制度の最高階級かいきゅうだったか、百年も経つのにまだ続いてたのか。

 この分だと俺に関する祭りとかも続いてそうだな、面倒めんどうくさい」


 デュランはそうしてため息を吐きながらもアリス達と会えるのであればまた祭り上げられるのも一興いっきょうかと思ったが、よくよく考えたら別にアリス達と会うだけだったら祭り上げられる必要性はないなと判断し。レウスへ「じゃあ、今からウィンクルム連合王国れんごうおうこくへ行こう」と言った。


「えっ、何故だい。普通に神聖プライド王国へ報告を上げればよくないかい?」


「このことを知っている人間が増えれば増えるほど大事になるからな、直接会った方が早い。

 剣帝は確か剣神に会える権利を持っているだろ、午前中で許可を取ってきてくれ」


「分かった、デュランはその間どうしてる?」


「修行してる、少しでも早く前世の水準まで戻したいからな」


 そう話してレウスと分かれたデュランは木刀を手に修行を再開するため意識を集中し、前世の自分自身であるデュラン・ライオットの最も強かった時期のうつを光属性の魔力を使ってその場へと創り出した。


 ――そして一瞬で移動した現し身にはじき飛ばされ、木の葉のように空をった。


「ッ!! ――まだだッ!!」


 デュランは木刀で現し身の攻撃を完璧かんぺきに受け流した上で・・余波よはだけで意識をり取られかけたことをおどろくこともなく、空中で体勢たいせいを立て直すと光属性の魔力で創り出した足場をって突撃とつげきした。

 現し身は向かってくるデュランを叩き落とすため木刀を上段に構えているがまず間違いなくアレはブラフだろう・・・・・・、何故なら現し身は今の弱体化じゃくたいかしたデュランとは違って斬撃ざんげきを飛ばせるのだから待ち構える必要性はない。

 それでも上段に構えたということは――


嵐流刃らんりゅうじん


「――そいつを待ってたぜッ!!!」


 ――気合きあいで叩き落とした上でデカいのをぶち込んでくるッ!


 デュランは現し身の気合いを気合いで相殺そうさつしてからサーフィンに使うボードのような物を創り出し、目の前へとせまる巨大な砲撃ほうげきの側面をすべった。

 そのまま現し身の至近しきん距離まで辿り着いたデュランは斬撃を放ち、現し身の木刀を斬った・・・・・・


「しまっ――」


 デュランが現し身が木刀をおとりに使ったと気がついた時、もううでつかまれておりどうしようもなかった。

 将棋しょうぎやチェスで言う王手チェックメイトをかけられたデュランは地面へ叩きつけられて気を失った――ふりをして反撃はんげきしようとしたが。

 油断ゆだんのない現し身に首の骨を足でへし折られ、今度こそ死んだ意識を失った







「アハハッ、負けた負けた! やっぱり前世の俺は強いな!!」


『……戦闘狂せんとうきょうにもほどがあるだろう、それだけ退屈たいくつだったのか。体を動かせない十年間は』


「まあな、当たり前に出来るはずのことが出来ないのはつらかったぜ。仮に無理をする前に戻れても同じことをするけどな!!

 ――それじゃあ、もう少しやろうぜッ!!」


『……やれやれ』


 現し身が首の骨を元通りに治したことで息を吹き返したデュランは現し身とそう会話を交わした後、地面から木刀をひろい上げて構えた。

 光属性の魔力で木刀を元に戻した現し身は今度は斬撃を飛ばしてデュランを斬ろうとしたが、デュランは最小限の力で斬撃の軌道きどうを曲げて突っ込んでくる。

 現し身は前世の五歳の頃よりもはるかに強いと思いながらもアリスと出会う前は惰性だせいで修行していたのだから当たり前かと思考を打ち切り、デュランの修行相手として全力で闘った。


 そしてデュランは結局今日も現し身へ一太刀も入れることが出来ず、百回ほど死んだ意識を失った

 ……死ぬことが前提ぜんていの修行とか頭おかしいだろ、イカれてらぁ。







「――でゅ、デュランッ!? 可愛いっ!!!」


「……前よりも更に綺麗きれいで美しくなったな、アリス。素敵すてきだ」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093076290482907


 デュランは百年経ってエルフとして大人となったアリスの姿が見られてうれしかったけど、涙を流して喜びながら可愛いと言われるのは色々と複雑ふくざつだったが。められてるんだし、別にいいかと思考をぶん投げた。

 それはそれとして本当に美しくなったと。アリスの顔を見つめながら短く息を吐いた後、今度は・・・こちらからプロポーズするためアリスの手を取った。 


「アリス……俺はあなたのことが大好きです、愛しています。

 必ず幸せにすると約束します――もう一度俺と結婚してくれませんか?」


「――はいっ、よろしくお願いします」


 デュランは自身がまだ子供であることを承知しょうちの上で今プロポーズした。

 何故ならこれほど素敵なアリスを狙う男は多いだろうと予測していたため、一分一秒だろうと結婚を先延さきのばしにして他の男にアリスをうばわれたくなかったのだ。

 ……ちなみにアリスはどこぞのボケナスのせいでのうかれているため、そんな可能性は一欠片ひとかけらもありません(笑)


「アリス、結婚式は十年後にしよう。

 式場の場所はどこにする? 新婚旅行はどこへ行きたい??」


「そういうのは別にいいよ、僕はデュランが一緒いっしょにいてくれるだけでうれしいから」


「いや、どちらも絶対にする。前世ではどちらも出来なかったからな」


 デュランがそう言い返すとアリスは苦笑くしょうしながら分かったと短く返事をし、式場や旅行先へついてなやんでいるデュランの顔を見つめながら嬉しそうに微笑ほほえんだ。

 周囲で二人を見守っていたレウス達もよかったとため息を吐き、幸せそうな二人の姿を見守った。


「待ってくださいお父様! 今結婚するのは早計そうけいじゃありませんか!! もっと好きな人が出来るかも知れないじゃないですか!!!」


絶対にないから・・・・・・・安心してくれ、ステラ。それと今少しいそがしいから話しかけないでくれ」


「――ガッ!??」


 若干じゃっかん一名。目の前の状況が全然よくない人物がいたが、デュランに言葉で斬り捨てられてくずれ落ちた。

 恋している相手であるデュランからの拒絶きょぜつはメチャクチャ効いたようだ、床の上でピクピクとふるえている。


「父上、ステラは私が連れて行くのでお二人でゆっくりしてください。

 レウス様達も隣の部屋でゆっくりとお茶でも飲みましょう、ついてきてください」


「あぁ、頼んだ。レウス達もまた後でな」


「……もう息子が結婚しちゃったよ、まあ知ってたけど」


「えぇっ、私達の子供ですものね!!」


 首をつかまれて引きずられるステラはラブラブなレウス達の姿で追加ダメージを受けて気絶し、そんなステラを無視してデュランとアリスは様々な話に花をかせている。

 ……デュラン達は娘であるステラへ対して少し薄情はくじょうかも知れないけど、ステラは過去に色々とやらかしているから仕方ないねww

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