第13話:死返玉(まかるがえしのたま)

「紅を取り戻しに人間界にやってきた「天婦羅童子」のせいで俺は雷を落とされて

死んであの世「黄泉国」にいっちゃった。


紅からののしられて脅された天婦羅童子はビビってすごすごとオニーガシマ国へ

帰って行った。


さて俺は死んじゃったから、たぶんまた黄泉国へ行くんだろうけど・・・

紅には俺を黄泉国から救い出すための考えがひとつだけあったみたいだ。


十種神宝とくさのかんだからって宝物の中に死者の魂を蘇らせることが

できるって言う死返玉まかるがえしのたまと言う勾玉があるらしい。

紅はその勾玉を使って俺は生き返るつもりらしい。


つうことで勾玉を借りるため紅は東北地方の前人未到の山中に存在するって言う

霊場「過密黄泉戸かみつよみど」ってところに向かった。


もちろんバスや電車に乗ってのんびり出かけた訳じゃない。

紅は普通に空も飛べるからね。


死返玉まかるがえしのたまは今は横甕槌神よこみかづちが持つ瑞宝のひとつ。

色違いふたつの勾玉。


紅は幼いころ、父親の修行のため父親と一緒に霊場「過密黄泉戸かみつよみど」ってところに行ったことがあって滞在している間、横甕槌神よこみかづちの寵愛を受けたそうで初めて訪れる訳ではなかった。


横甕槌神よこみかづち・・・彼の佇まいは品があって威厳に満ち溢れていて

仕草もしゃべりも中性的・・・で、かなりのイケメン。


紅は過密黄泉戸かみつよみど」で横甕槌神よこみかづちに再開した。


「紅、久しぶりよのう・・・息災であったか?」


「はい・・・私もお父さんもお母さんもみんな元気だよ」


「今日は?・・・いきなり来たと言うことはよほどの理由があってのことか?」


「実はお願いがあって・・・」


紅はことの詳細を話して死返玉まかるがえしのたまを貸してくれるよう横甕槌神よこみかづちに頼んだ。

だが意に反して死返玉まかるがえしのたまは門外不出と言うことで借り受ける

ことはできなかった。


俺を蘇らせる道を断たれた紅は、意気消沈してなくなく山を降りようとした。

そしたら後ろから横甕槌神よこみかづちに呼び止められた。


「紅・・・勾玉は門外不出ゆえ貸せぬと申したが・・・あれはみなの手前そう

言わざるを得なかっただけで貸さぬ訳ではない・・・」


「ほれ・・・持って行くがよい」


そう言って横甕槌神よこみかづちは懐から死返玉まかるがえしのたまを出した。


「愛しい人の魂を蘇らせておやりなさい」


「横ちゃん、ありがとう恩に着るね」


「うん・・頑張ってね・・・吉報を待っておるぞ」

「勾玉、無くしたり落としたりしないようにね」


紅は死返玉まかるがえしのたまを大切に抱え山を降りて行った。


一度、中華料理屋「蓬莱山ほうらいさん」に帰った紅は鴻鈞道人こうきんどうじんを連れて黄泉比良坂に向おうと思った。


「なんでワシがまた黄泉国よもつくにになんか行かにゃいかんの?」


「おじいちゃん連れてると、いいふうに風向きが変わりそうだから」


「そんな漠然とした理由でか?」

「ワシは福の神ではないぞい・・・どっちかって言うと不幸をもたらすかも

しれんな〜」


「そんな自虐的にならないの」

「福ちゃんを助けるためだから、協力して!!」

「ヨモツシコメと戦った仲でしょ?」

「毎日美味しいラーメンやチャーハンだって食べてるじゃん」

「福ちゃんちにだってお世話になってるでしょ?」


「そうじゃな・・・他のやつの頼みならお願いされても断るところじゃが」

「紅ちゃんの頼みなら断われんか」


「嫌なら別にいいよ・・・私一人で黄泉国へ行ってくるから・・・」


「嫌だとは言っておらんじゃろうが・・・人の話を聞いておらんのか?」


「あのさ、時間がないの・・・来るの来ないの?どっち?」


「行くっちゅうとろうが!!」


紅と鴻鈞道人こうきんどうじんはさっそく俺の祖父の田舎へ向かった。

紅は空を飛んで、鴻鈞道人こうきんどうじんは豚に変身して・・・。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る