第14話:生き返っちゃった俺。
紅とじいさんは黄泉比良坂に来ていた。
そこから女妊洞を抜けて
「え〜いまたこのルートを行くのか・・・」
「どうしてもワシは黄泉国から離れられんのじゃな」
「それは私も同じね」
「それよりまずは福ちゃんを探さなくちゃ」
ふたりは黄泉比良坂を妊洞に向かって歩いて行った。
以前、ここに来た時は誰もいなかったのに、今回はやたらに魑魅魍魎が徘徊して
いた。
魑魅魍魎とは妖怪も意味不明の化け物も鬼も一蓮托生してそう呼ぶ。
「なんか、化けもんが多いのう」
「うん、油断しないようにしましょ・・・」
「もしかしたらヨモツシコメの一件でこのあたりも混沌としてきてるのかも?」
「紅、スキを見せるでないぞよ」
そして以前はなかったはずの場所に一軒の小屋が建っていた。
好奇心旺盛な紅は小屋に近ずくとそっと扉を開いて中を覗こうとした。
「紅・・・紅・・・」
「なに?おじいちゃん」
「ワシらの後ろに変なばばあがおるぞ」
そう言われて紅はその人のほうを見た。
「あら、
「おう紅ちゃんか・・・そろそろ来ると思っとったわい」
「で?そっちのじじいは
「ワシのほうも
「何百年も黄泉におって会うのは今日はじめてじゃがのう」
「ふん・・・それより紅、福が待っておるぞ」
「おばあちゃん福ちゃんが亡くなったの知ってるの?」
「全部、福から聞いた」
「紅ちゃんもアホな鬼の許婚のせいで苦労しとるのう?」
「許婚じゃないです・・・親が私にお無理やり押しつけた男です」
「なにもかもそいつのおバカのせい」
「だからこれから福ちゃんを生き返らせるために黄泉国へ行ってきます」
「黄泉国なんぞに行っても福はおらんぞ」
「え?じゃ〜福ちゃんはどこへ行ったんですか?・・・まさか地獄とか?」
「そんなところに行くわけなかろうが」
「福は生前、あこぎなことはしとらんじゃろ?」
「心配いらん、ここに迷い混んだ福をワシが見つけて小屋に匿っておるわ」
「紅・・・
「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ、プライベートなことは後にして!!」
「おばあちゃん、あの小屋・・・おばあちゃんの?」
「そうじゃ、ヨモツシコメが死んでからあの屋敷はもう誰も住んどらんで」
「あいつの持っていたお宝を少々拝借したんじゃ」
「で小屋を建てた」
「ってことで福が待っておる・・・さっそく小屋に入れ」
紅とじいさんは
「あ、福ちゃん」
俺は小屋の中で寝てたみたいだ。
「福ちゃん大丈夫?」
「福ちゃんてば、起きて」
もう死んじゃってるのに緊張感のない彼氏。
紅に体を揺さぶられて俺は目を覚ました。
「あ、紅・・・こんなところでなにしてる?」
「なにしてるじゃなくて・・・福ちゃんを生き返らせに来たの」
「生き返らせるだって?」
「え、どうやって?・・・長い人類の歴史の中で生き返ったってやつなんかいない
だろ?」
「人間の世界ではね・・」
「急がなきゃ・・・さっそくここで福ちゃんを生き返らせるから」
紅はそう言って
握らせた。
そして俺に呪文を教えた。
「いい?福ちゃん、生き返るって願いをこめてこう言って?」
「ふるべ ゆらゆらと ふるべ」
「それだけ、間違わずに言って」
「分かった?・・・そう言えば俺は生き返るのか?」
「そだよ・・早く私のもとに戻ってきて」
「じゃ〜言うよ」
俺は勾玉を握りしめて呪文を唱えた。
「ふるべ ゆらゆらと ふるべ」
って唱えたけど、だけど特になにも起こった気配はなかった。
「紅、呪文唱えたけど・・・なにも変わってないぞ」
「大丈夫じゃ・・・こう言うのはそんなに劇的なことが起きるもんじゃないわい」
「ワシにはちゃんと見えたぞ・・・お前の体に魂が戻ったのをな」
「おじいちゃん魂が見えるんだ・・やっぱり連れてきてよかった」
「さあさあ福が生き返ったなら急がんと、おまえらとっとと帰れ」
「おばあちゃん、どうして?そんなに急ぐの?」
「さっきまでは福は死んでおったがな・・・今は生き返っておる」
「ここに人間がいるってことがバレたら魑魅魍魎が黙ってないからじゃ」
「でも私とおじいちゃんは大丈夫だったよ」
「おまえらは人間じゃなかろう・・・おまえらも所詮は魑魅魍魎じゃろが・・・」
つづく。
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