第10話:生還した三人。
「ここに出るのか?」
「だけど身護守玉があるから、ここ通れるよ・・・黄泉国に引き戻される
ことないよ、福ちゃん」
「そうか・・・帰ってきたんだな俺たち」
「よかったね」
とうぜん俺は紅を抱きしめた。
感慨深いじゃないか・・・。
「もうどこにも行かせないからな・・・これからはずっと一緒だ」
「おお、ついに人間界か・・・自由じゃのう」
「わわっ・・・お、そうかじいちゃんも連れて帰ってたんだ」
「さっきから、おるのに無視して鬼娘とイチャイチャしおって 」
「じいちゃん・・・今回は世話になったな・・・」
「ラーメンおごるぞ」
「ありがとう、おじいちゃん」
「どういたしまして」
「ふたりとももう大丈夫だ・・・このまま黄泉比良坂を抜けて帰ろう」
「それにしても玉を取り返すためとはいえヨモツシコメには悪いことをしたな」
「俺たちさえ
「あの女も散々悪さしてきたんじゃ、あれがヨモツシコメの定めだったんじゃよ」
「気にすることはない・・・それにワシの友達の仇も打てたしな・・・」
「たとえ悪人でも誰も死んで欲しくなかったんだけど・・・」
「おまえは優しいやつじゃのう・・・福」
「さ、もう終わったんじゃ・・・おまえらはおまえらの道をラブラブな未来を行け」
化け物どもが夢のあと・・・しみじみと感じながら俺は紅と鴻鈞道人を連れて店に帰った。
で俺の店で鬼の娘と珍しい小ぶりのじいさんが餃子やラーメンを運んでいた。
「ジロジロ人を見おって・・・そんなにわしが珍しいか」
「そりゃ、珍しいだろ」
「じいさんみたいな人、人間の世界にはいないし・・・」
「子泣きじじいみたいな妖怪にしか見えないよ」
「なんじゃ、その子泣きじじっちゅうのは?」
「俺たちの世界、日本ってところには妖怪って想像上のお化けがいるんだよ」
「その中に子泣きじじって妖怪がいるんだ・・・」
「失礼な・・・わしを、その妖怪とやらと一緒にするな」
「おじいちゃん、子泣きじじいよりいいキャラしてるよ」
「キャラ?・・・紅ちゃん、なんじゃそのキャラっちゅうのは?」
「キャラはキャラだよ・・・意味なんか分かんない」
「なんでもよいわ・・・それにしても忙しいのう」
「お昼時はお客さんがたくさん来るからね」
「あ、そうだ・・・じいさん俺たちを助けてくれたからラーメンおごって
やんないとな・・・」
じいさんは俺が作ったラーメンを「美味い、美味い」って連呼しながら食った。
そのくせに・・・。
「わしは何も食わんでも百年は生きるがの・・・」
「え〜百年も生きるの?おじいちゃん」
「少ないね・・・わたしは千年以上生きてるよ」
「ふん・・・ワシはまともで、おまえがおかしいんじゃ」
「今現在、九十九年と3ヶ月更新中じゃ」
だけどその計算で行くとあと9ヶ月でじいちゃん死んじゃうじゃん。
俺は俺たちを助けてくれた前鬼と後鬼の式札を店の神棚に祀った。
店も守ってもらおうと思って・・・。
これで俺の店に鬼が三人になった。
一連のこの非現実的な出来事は本当にあったことなんだよな。
誰も経験したことにない絵空事みたいな話。
話したところで誰も信じないだろうけど・・。
そもそも、紅が鬼だって・・・俺の彼女が鬼だって誰が信じるよ。
つづく。
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