第9話:前鬼と後鬼。
俺がヨモツシコメに投げた式札二枚は、空中で何かに変身した。
式札は、デカくなると見る間に化け物に変わっていった。
それはに二匹の鬼だった。
たぶん鬼だろうって俺は思った・・・。
でも見ると、ひとりは赤鬼、もうひとりは青鬼で二人とも凄まじい形相をしていた。
「あ、
紅が言った。
床に降りた鬼たちは紅に向かって言った。
「紅ちゃん、久しぶりだのう」
「久しぶり・・・前鬼の兄さんと後鬼の姉さん」
「福ちゃん・・・前鬼と後鬼さん・・・私の昔からのお知り合いだよ」
「まじでか?・・・紅って知り合いたくさんいるんだな?」
見ると赤いほう「前鬼」の鬼はデカい釜を持っていて青い鬼「後鬼」のほうは
デカい
この式神たちのことを、これまたのちに晴明さんに聞いたら、なんでも夫婦の
鬼なんだそうで前鬼が旦那で後鬼が嫁さんだって教えてくれた。
ラブラブカップルな鬼だったみたいだ。
つうかのんびり会話などしてる場合か。
「え〜いなんじゃ・・・式神か・・・」
ヨモツシコメも、式神くらいは知ってるようだった。
「紅ちゃん私たちがあいつの相手をしてる間どこかに隠れてなさい」
嫁さんの後鬼が言った。
「分かりました・・・隠れてます」
「紅・・・絶対俺から離れるなよ」
「くっついてるよ福ちゃん」
紅は俺のシャツにいっかりしがみついた。
「おまえらの狙いはなんじゃ?・・・人間め、おまえら生き魂だな・・・」
「はは〜
ヨモツシコメが俺たちを襲おうと迫ってきた。
そこにすかさず後鬼が瓢箪の栓を開けて中の水らしきモノをヨモツシコメに
ぶっかけた。
瓢箪の水は浄真水って水が入っていて化け物はその水を浴びせらて苦しさで
のたうち回った。
式神とヨモツシコメが戦いが始まったので風呂に入っていた綺麗どころは
蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
「福ちゃんおじいちゃん食べられちゃったね・・・かわいそう」
「しかたないよ・・・もう、あの化け物の腹に中で消化されてるかもな、諦めよう」
雄叫びをあげたヨモツシコメはいつの間にか右手にデカい
ヨモツシコメが持っている武器は
ヨモツシコメの青龍偃月刀をギリのところでかわした前鬼は持っていた釜を思い切り化け物女の首めがけて振り回した。
ヨモツシコメは青龍偃月刀でカバーしたが前鬼の釜は青龍偃月刀を真っ二つに叩き切ってヨモツシコメの首をすっぱり切り飛ばした。
まさに一瞬の出来事だった。
「すげえ・・・」
「紅は見るな・・・」
そう言って俺は紅の目を手で覆った。
断末魔の叫び声をあげてヨモツシコメの頭は体から離れて天井近くまで
跳ね上がって苦渋に歪んでボトッと床に落ちて転げた。
残った体はすごいそデカい音を立てて床に倒れこんだ。
しばらくすると倒れたヨモツシコメの腹が大きく膨らんでなんと腹を破って
「じいさん・・・」
紅は自分の目を覆っていた俺の手をどけて腹から出てきた鴻鈞道人を見た。
「あ、おじいちゃんだ・・・生きてたんだ」
「福ちゃん・・・おじいちゃん溶けてないよ」
「あはは・・・生きてたんだ、しぶといじいさんだな・・・」
宙に飛び上がった鴻鈞道人はそのまま頭から床に落ちた。
「あいたたた・・・バカ女めが・・・」
「あ〜汚ねえ・・・身体中コモツシコメの胃液だらけじゃ・・・」
「おじいちゃん・・・よく生きてたね・・・よかった」
鴻鈞道人は文句を言いながら、俺たちのところまでやって来た。
「紅姫・・・わしはこのくらいでは死なんて・・・」
「しかしながら、やっぱり式神には助けられたな・・」
「お前のご先祖様はやりおるのう・・・福」
コモツシコメが倒れた場所を見るとすでに前鬼と後鬼は人型に戻っていた。
「あの夫婦の鬼にお礼がいいたかったな・・・」
俺は落ちてる人型を拾ってズボンのポケットにしまった。
「さあ、身護守玉を奪い返して、ささと鏡から俺たちの世界に帰ろうぜ」
倒れたヨモツシコメの首から巾着を取って俺たちは鏡の前まで来た。
のはいいんだけど・・・。
「どうやったら帰れるんだ?」
「これをただの鏡じゃと思うからいけないんじゃ」
「だってただの鏡じゃないかよ・・・じいさん」
「鏡の表面を手で触ってみ?」
じいさんにそう言われて俺は、手を鏡の表面に触れた。
そしたら通常の鏡みたいな硬さはなく表面が柔ない・・・試しに腕を突っ込む
とすんなり腕が中に入っていった。
「いけそうじゃな、福・・・」
「それじゃ紅・・・じいさん帰るぞ」
「でも福ちゃん・・・この鏡を通って私たちどこに出るんだろ?」
「俺にも分かんないけど・・・でも行かなきゃ」
「ここにいたって俺たちに未来はないからな・・・」
そう言うと俺は紅を連れて恐る恐る鏡の中に入っていった。
「こら、おまえら待て待て・・・年寄りを置いていくな」
そう言って鴻鈞道人は俺たちの後をついてきた。
鏡の中をやみくもに進むとしばらくして見たことある場所にいきなり出た。
そこは女妊洞を出たところだった。
俺たちは一気に黄泉比良坂に帰ってきたみたいだった。
つづく。
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