第6話:晴明の助言。

「ちょとまってね」


そう言うと紅は胡座をかいて座禅を組むような格好をして合掌した。

しばらく何かを唱えていると紅の前に、ぼんやりと人の姿が現れだした。


徐々にはっきりとした形が現れて、その人は平安時代のお公家さんみたいな

格好をした人だった。


「え?ご先祖さん?」


「紅・・・晴明さん?・・・あはは、まじで呼び出せるんだ」


「うん・・・黄泉の・・・この国からおいで願ったんだよ」


「ワシを呼び出したのは?・・・紅姫か?」

「懐かしいのう・・・息災にしておったか?」


「お久しぶりです、晴明様」


「ご先祖様・・・お初にお目にかかります、俺、あたなの子孫です」


晴明さんの凛とした佇まい。

俺ははじめて見る安倍晴明さんに畏敬の念を抱いた。


「福太郎じゃな・・・知っておる」

「ワシはすべてお見通し・・・今会の件も説明せんでもすべて知っておる」

身護守玉みごもりのたまを取り戻しにヨモツシコメのところへ行くので

あろう?」

「ワシの力を借りたくて呼び出したか?・・・」


「ヨモツシコメの屋敷にただ忍び込んでやみくもに進んで万が一にも見つかったら

たちどころにあの化け物女の餌食になるぞ」


「コモツシコメを知ってるんですか?」


「まあな・・・話せば長くなるゆえ、やめておくがな・・・」


「さてそこでじゃ私の式札を福太郎、そなたに渡しておくから肌身離さず身に

つけておけ・・・よいか離さんようにな」

「ここぞという時まで式札は持っておれ」


「いざという時はワシの式神がお前たちを助けてくれる」

「よいか、その隙におまえたちはヨモツシコメから玉を奪い返せ」


「玉を取り返したら、すぐに部屋の奥へ行け」

「部屋の奥に「憑魂の鏡ようこんのかがみ」と言う鏡がある」

「人がひとり通れるくらいの鏡じゃ・・・その鏡は黄泉国と人間化をつなぐ

鏡じゃ・・・そこを通って人間界へ戻どれ」


「もし、すべて段取りどうりいけば、おまえらは無事ラブラブな生活に戻る

ことができるからの」


そうい言って晴明さんは人形型をした「式札(しきふだ)」を二枚俺に渡した。


「ここぞという時が来たら、その式神を化け物に向かって投げろ」

悪行罰示神あくぎょうばっししきがみが現れておまえらを守ってくれる」


「あくぎょうばっししきがみ?・・・って?」


「昔、悪さをしていた悪神じゃ・・・わしが改心させて式神として使っておる

のじゃ」

「私ができるのはここまで・・・直接は手助けはできんからあとは自分たちの

運命は自分たちで切り開け」


「それからヨモツシコメの屋敷に行く途中で「鴻鈞道人こうきんどうじん」いう

仙人に出会うはずじゃ」

「そのものはワシの昔からの知り合いじゃ」

「その仙人がヨモツシコメのところまで連れて行ってくれるゆえ、鴻鈞道人を頼れ」


「がんばれよ・・・紅姫を連れて無事に人間化に帰れるよう祈っておる」


そう言って安倍晴明は消えていった。


「福ちゃん・・・なんだか大袈裟なことになりそう・・・どうしよう?」


「そうだな・・・身護守の玉もないし・・・ヨモツシコメの部屋の鏡を通らなきゃ

黄泉国からは出られそうにないみたいだな」


「まあ、行くしかないだろうな・・きっと、うまくいくよ」


「成功させて生きて帰るぞ、紅」

「こんなところに一生閉じ込められてるのは俺はごめんだからな」


「俺には紅姫って鬼の女神様がついてるからな・・・紅は俺の守り神・・・

大丈夫さ」


俺はそう言って自分の気持ちを奮い立たせた。


「さあ、行こう」


「うん・・・」


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る