第5話:安倍 晴明。

「じゃ〜どうしても身護守玉みごもりのたまを取り返さなきゃ」


予母都志許売ヨモツシコメに魂食われても知らんぞ」


「とにかくヨモツシコメの屋敷の近くまででいいから連れってください、

おばあちゃん」


「ここが黄泉国よもつくにじゃ・・・」


俺は黄泉国の景色・・・光景を目の当たりにして驚愕した。


空は深く青く・・・雲は渦巻きながら流れそこは桃源郷かって思うくらい

美しく、遠くそびえる山々はまるで中国の山水画に出てきそうな光景だった。

下を見ると九寨溝 みたいな場所もあって積み重なるように複雑に立ち並んだ

家並み・・・そこは一つの街を形成していた。


「ほら、あそこに見える大き目の建物がヨモツシコメの屋敷じゃ」


そこには、湖のど真ん中に建つヨモツシコメの真っ赤な屋敷が見えた。

まるで中国の重慶にある洪崖洞ホンヤー・トンみたいな建物だった。


「ありがとう、おばあちゃん」


「ワシはここまでじゃ」


「紅姫ちゃん、身護守玉を取り戻して無事に人間界に帰れよ」

「福ちゃんもな・・・」


「はい・・・がんばります、おばあちゃん恩にきます」


にっこり笑った正塚婆しょうづかのばばは俺たちに手を振って去っていった。


「さあ、行くぞ紅」


そう言って俺は紅の手をつないで引っ張った。


「来た時は夢中だったから、ここって黄泉国ってこんな豪華絢爛だったんだ」


「え〜見てなかったのかよ」


「だって不安だったんだもん・・・必死で出てきたんだよ」


「まあな、今だって鑑賞してる余裕なんてないもんな」


歩きながら見るとヨモツシコメの屋敷が少しづつデカく見えてきた。


「だけどどさ・・・あの屋敷まで行くのにどうやって湖を渡りゃいいんだよ」


「船とかないのかな?」


「船な〜・・・あまり乗りたくないよな」

「そうだよ、こういう時、俺のご先祖様がいてくれたらいろいろアドバイス

貰えたんだろうけどな・・・」

「なんか黄泉の国のこととかめちゃ詳しそうだしさ・・・」


「福ちゃんのご先祖様って誰?」


安倍 晴明あべのせいめい・・・」


「え?晴明さん?・・私よく知ってる安倍 晴明」


「え?知ってるって?・・・まじで?なんで?」


「超有名な陰陽師さん・・・懐かしい」


「懐かしいって・・・紅いつから生きてるんだよ」


「太古の昔から生きてるよ・・・私、不老不死だもん」


「ゲゲッ・・・それはまた・・・寝耳の水な話だな・・・」

「びっくりだわ・・・紅の過去の話は無事にここから帰れたらまた聞くとして」

「だからさ、ご先祖が晴明さんが今ここにいてくれたらベストなアドバイス

貰えるのになって言ってんの・・・」


「大丈夫だよ・・・私、晴明さん呼び出せると思うから・・・」


「え?呼び出せるって?・・・まじで言ってる?」


「来るよ、会えるよ、福ちゃんのご先祖様に・・・」


「おまえさ・・・まだびっくりするようなネタ持ってるだろ?」


つづく。

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