「夜空」

「綺麗だね」

「流星群でしょ」

「うん……」

 私たちは珍しの星見をしていた。今夜は晴れているから見やすいものである。

 色々な体制を試した二人、行き着くは仰向けに観測する事であった。地平線となり眺める夜空はまるで暗い色の地図であった。

「あれ、今流れなかった」

 彼女ゆめは地図より彼が気になっていた。当然である。この観測は観測として目的づいているわけではなく、彼と繋がりを作るためのものである。

 その割には、手すら繋がっていないのだが。

「確か、今流れた所にくさ座? ダニ座があったはずだよ」

 彼よしきは本当に星ばかである。見えぬ星座が見える割には、近くの人ほど見え得ぬ人ばかでもあった。

 こっそりマンションの屋上で二人見ていたのだけれど、右のフェンスからすり抜けた風に私は吹かれた。寒くて彼の方に手をやり、思わず彼の手に手が当たってしまった。

 明らかな反射の速度、赤ん坊のごとく彼は私を握り返した。

 左や右のこめかみ側、流れ星が一滴走ったのが分かった。

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