「寒空」

 寒空の下は何もない。あるがあるにもいつもの景色だけである。しかし今日の景色には彼がいた。

 可愛い可愛い彼だ。やっと髪さえ生えてきた赤ちゃんである。最近の天使もまた青い服を着るのだ。

 母に抱かれて、彼は後ろ姿でダンススクールに向かっている。いや、過ぎただけであった。

 その子どもに思うには、寒そうな頬をしているという事である。

 子どもだからか分からないが、彼の頬は赤い。まるで愛らしさで腫れているようである。

 このひとときの主人公、私と言う読者に見られる彼は、雪のような白犬を見つけた。気のせいか瞳孔が広くなっているように見える。

 唐突に笑った。天使が笑った。犬の何気ないしっぽ、それが震えるしかわたしには認識出来ないのだから、きっとこのためで笑っているのだろう。

 信号で九十度に至る分離をした後、彼は興味を人の群れに向けた。今日の地面は白い根雪だからさらに人たちが映えてるのだろう。

 雪よりも無垢な彼には、興味のままに不幸や幸が降ると良い。賛同した様に、雪降り始める。

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