【再掲】ゲーム世界から帰還した自己肯定感皆無の拗らせ君。二次元から追いかけて来たヒロイン達に迫られますが、惚れられる様なことをした覚えが全く無いのでとりあえず逃げたいと思います。
第28話 好敵手との対面② side:高峰鈴華
第28話 好敵手との対面② side:高峰鈴華
「…って感じね。嘘偽りは無いけど、疑わしいならアヤトに聞いても良いわよ?」
「あ、綾人君とデート………もう初デートが盗られているなんて…」
週末にあった事を目の前にいる美白さんに話すと、少しショックを受けたようにブツブツと呟いている。…ちょっと優越感を感じるわね♪
…それにしてもまさかアタシ以外にアヤトの事が好きな人がもういるなんてね…確かにアヤトはアタシから見たら世界一カッコいいから、そういう人が居てもおかしく無いんだけど…アタシと並ぶくらいの美人なんてね…
艶のある男が好きそうな清楚な長い黒髪をサイドに流して、スッキリした鼻筋と輪郭に完璧に配置された顔のパーツ…それにスタイルもバランスが良くて…胸はアタシよりちょっと大きそうだし…
それに髪とか唇の手入れに一切手を抜いてないのも分かるから、それだけでもアヤトへの想いの強さが伝わってくる。
今はアヤトとの距離を詰めれてるアタシが有利だけど…今後はどうなるか…アタシといる時に美白さんの誕生日を思い出すくらいだし…
「…ホントに連絡先の交換と下の名前呼びしかしてないんですよね?いやどちらも大きな問題ですけど!」
「悔しいけどね…それ以上はいけなかったわ。…でもそれでも公認のアヤト呼びと連絡先を持ってるって言うのは大きいアドだからね〜♪」
「ぐぬぬぬぬぅ…ズルイです!そう言う事なら私だって考えがありますからね!」
「…へぇ?例えば?」
「私と綾人君は席が隣ですし学級委員として二人でいる事も多いです。と言うことはいろいろな事ができますよね?」
「なぁっ…!?そ、それは反則でしょっ!?」
「そんなに声を荒げないで下さい、これはもう運命なんですよ。綾人君と一緒になりなさいって神様が言ってくれてるんです!」
「ふんっ!そんな事神様は言ってないし、そうだとしてもそんなフラグはアタシがへし折って書き変えてやるわ?」
「折れるものなら折ってほしいですね!無理でしょうけど!」
「やってやるわよ!徹底的にね!」
アタシたちはお互いに同じ男の人を取り合うライバル…だけどアタシは心の中に妙な感情が湧いて居た。…こんなに対等に自然体で言い合える人なんて同性にはいなかったな。
そんな事をアタシが思っていると、不意に美白さんが紅茶を飲んだ後小さくこぼした。
「…ですが不思議ですね、私たちは綾人君を取り合う者同士…良好な関係とは無縁だと思っていましたが…こうして心置き無く何かを言い合える相手なんて家族以外だと初めてです」
「…美白さんもそうなんだ?」
「えぇ…今まで出会った人達は私の顔色を窺ったり、外見だけを見ていたり…そんな人達ばかりでしたから…だからこそ心を見てくれた綾人君に惹かれたわけですが…同性だと高峰さんが初めてですね」
「アタシも似たような事がありまくりだったわ…そう考えると意外とアタシたちって似た者同士なのかもね」
「そうかもしれませんね…」
アタシたちはそう何か通じ合うものを感じていたけど、それは一瞬だけ。
「だけど…」「ですが…」
「「アヤト(綾人君)は絶対に渡さないから(渡しませんから)!」」
またまたバチバチッと火花が散るテーブル。通じ合うものがあったとしても、アタシたちは
「まぁ?美白さんがどれだけアヤトの事を思ってるかは分かったわ」
「私もです。ですがそれでも負けるつもりはありませんからね!」
「アタシもよ。…でも気がかりな事がまだ1つだけ残ってるのよね」
「奇遇ですね、私も後1つだけ高峰さんに聞こうと思っていた事があったんです」
…美白さんの真剣な表情の中にあるちょっと不安そうな感じ…もしかしたら一緒のことを聞こうとしてたりして。
「…アタシの聞きたい事っていうのは、美白さんのクラスにアヤトの事を狙ってる女子はいないかって事ね。ただでさえ今、目の前に大きな障害があるのに…これ以上万が一同じレベルの女が〜となると大変だしね」
「!…私も同じ事を聞こうとしてました。高峰さんの周りではそういう方がいらっしゃらないかと…」
やっぱり聞きたいのはそこよね。アタシや美白さんクラスの美人のライバルが増えるとなると、いくらアタシでも二人以上からヘイトを買ってしまうとやりづらくなっちゃうからね…今は情報が足りな過ぎる。
…ここで嘘をついてもいいけど、曖昧な情報でごちゃつくのはアタシにとってもマイナスに働きかねないし、面倒だから素直に答えようかな。
「少なくともアタシの周りにはいない…っていうかアヤトの存在すら知らないと思うわ。だからアタシとしても簡単だと思ってたわけだし」
「私の周りでもいないですね。周囲の方達は綾人君の友人の小柳君の話で持ちきりですし、高峰さんと出会うまではライバルらしいライバルはいませんでした」
…この感じは嘘はついてなさそうね。そもそもここで嘘をつけば自分にも不利益があるかもしれない事が分かってるからかな。
そうであれば…この手段を取るしか無いわね。
「なるほどね、今のところはアタシたちだけの可能性が高いわけね」
「そうなりますね、お互いにここで嘘をつくのはリスクが大きいですし」
やっぱり分かってたわね、本当に食えない性格してるわ…まぁアタシもなんだけど。
「じゃあこうしない?美白さん。アタシと連絡先交換しましょ?」
「え?」
「ほらお互いにアヤトの周りに女の子が来て欲しく無いわけでしょ?ならお互いに情報交換が簡単にできた方が便利だと思わない?」
「…なるほど、綾人君の近くに寄ってきそうな女性の情報を交換して、それを阻止しつつ私たち二人だけの勝負の舞台を整える…と?」
「そういう事、ほら交換しましょ?アタシたち二人にとってライバルが増えないっていうのは大きなメリットだと思うけど?」
「そうですね…仕方がありません。何事もまずは地固めからですしね…では交換しましょうか」
そう言ってアタシたちは連絡先を交換して、喫茶店を出てから各々の自宅へと帰宅した。
(……でもまだ何かモヤモヤするのよね…何も見落としてないとは思うけど…)
そうアタシの中にあるモヤモヤは、家に帰ってからもなくなる事は無かった。
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