第27話 好敵手との対面① side:美白璃奈

「「……」」


 放課後、私は高峰さんと合流してから近くの喫茶店に入店し、紅茶とコーヒーを注文した後テーブルを挟んで対面する様に座っています。

 …ですが半ば勢いで誘ってしまったのもあり、喋った事もない高峰さんと二人きり…どう切り出しましょう…?やはりズバッと行くべきでしょうか…?


 それにしても…高峰さんはものすごい美人さんです…綺麗なブロンド色の長い髪は毛先まで手入れされていて、身長も私より少し高くスタイルも完璧…それに加えて大きな瞳の下にある泣き黒子がとっても色っぽいです…


 自分で言うのもあれですが、今まで私が同性の方にそう思った事がないので…少し気後れしちゃってますね…


(…いや弱気になっちゃダメ!この人はライバルなんだから!)


 そう思いなおした私は少し深呼吸をして調子を整えます。


『おい…あそこの二人めちゃくちゃ可愛くね!?芸能人かな?』

『うわホントだ…見ろよあの顔にあの身体!最高だな…』


 …今は高峰さんと一緒に居るのもあって、いつもより男性の学生やサラリーマンに見られている視線が多くなるのは仕方ないですが…少々不愉快ですね。やはり綾人君が特別と言う事でしょうか………。


「あのさ?そろそろ話していいかな?それと朝の教室ではごめんね?煽っちゃって。改めて自己紹介、アタシは高峰鈴華。クラスは1年2組。ヨロシクね」


「す、すみません!いえいえお気になさらず…改めまして私は美白璃奈と申します。クラスは辻な…綾人君と一緒の1年3組です。よろしくお願いしますね?」


「……へぇ〜?アヤトの事を呼び直すってことは…美白さんもなんでしょ?」


 私は笑顔で高峰さんに挨拶を返すと、先ほどの笑顔ではなく真剣な表情でそう聞いて来ました。…早速仕掛けて来ましたか、ですが私も引きませんよ?


「…その通りです。私は辻凪綾人君のことが好きですし、愛しています。他でもない男性として…そして人として」


「ふぅ〜ん…ちょっとははぐらかすかな?なんて思ってたけど、意外と食えない性格してるのね。当然アタシもアヤトのことが大好きだよ?美白さんに負けないくらいね?」


「では私達は…」


「当然同じ男の人を巡って争う敵って事になるわね?」


 バチバチッ!


 またもやそう音がなりそうな程、私たちの間に稲妻が走ります。数十秒ほど視線を交わして居ると、高峰さんが息を吐きながら言って来ます。


「……はぁ〜辞め辞め、アヤトが居ないとこで取り合ってても意味無いしね。それにアタシは美白さんに聞きたい事あるんだから」


「…そうですね、私も聞きたい事があるんですから!週末綾人君がと一体何があったんですか!」


「ふふ〜ん♪そんなに聞きたいんだぁ〜?じゃあ先にアタシの質問に答えてくれたら教えてあげる」


「…何ですか?」


「簡単な話だけどね、美白さんはさ…アヤトのどこが好きになったワケ?アタシが言うのもあれだけどさ、アヤトって別に目立つ様なイケメンでも無いし…アタシが好きになった理由もアヤトの見た目じゃ無いからこそ気になるんだよね。…それこそ美白さんみたいな美人なら余計に」


 …私もそれは気になっていました。そうですか…高峰さんは本当の意味で綾人君のことが好きなんですね…


 元々嘘を付く気はありませんでしたが、この人にはきちんと向き合っていかないといけませんね。…ライバルとして。


「…確かに見た目は私が好きになった頃の彼とは随分と違います。…しかしそれが何だと言うのでしょうか。私は綾人君の優しい所、不器用な所、放っておけない所……それでいて自分がした事に見返りを一切求めない所…そんな彼が私は大好きなんです。見た目や名前が変わっていようと何であろうと…中身が彼そのものであれば、私は彼がどんな見た目であっても探し出してまた好きになります。それが私の理由です」


「…っ!?そう…なのね、美白さんも…」


「も、と言うことは…高峰さんも?」


「そうよ、アタシも全く一緒。アヤトの強い所、女の子慣れしてない可愛い所……それにアイツ…ふとした時に消えちゃいそうな雰囲気になるでしょ?だからほっとけなくて」


 私に自分自身の心を少し見せてくれた高峰さん。…これは本物ですね。


「…どうやら本当に軽い気持ちでは無いようですね」


「それはお互い様でしょ?…あ〜あ美白さんがアヤトの事を騙そうとして近寄ってくれてたら、そこを慰めるって言う体で一緒にいて一気に彼女コースだったのに…しっかりライバルじゃん…」


「それはお互い様です!」


「…まぁこうなった理由を作った罪な男アヤトはアタシたちの気持ちに全く気が付いてないっぽいケドね〜…週末もあくまでお友達の距離しか詰めれなかったし…」


 そう拗ねたように言いながら高峰さんはコーヒーを一口飲みました。…そうです!それを聞かないと!!!


「ちょ、ちょっと!その話が聞きたいんですよ!何があったんですか!」


「あっちゃ〜はぐらかそうとしてたのになぁ…仕方ない、話してあげる♪」


 あ、危ないです…危うくはぐらかされる所でした…それにしても高峰さんも食えない性格じゃないですか!私のさっきの信用を返してください!!


 そんな事を思いながら私は高峰さんの話を聞くことにしました。

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