エピローグ 夢の終わり
茜ちゃんを送って行った後、俺も家に帰った。今日父さんも母さんも仕事で遅くなるが家に帰ると連絡があったので、着替えた後スーパーに出かけて買ってきた食材を使って、二人の分の簡単な夕飯の準備をしておいた。…なにせ俺作のまずい夕飯は食べさせられないからな…母さん達には…
俺は食うしかなかったけど、相も変わらず人様にお出しできるものではなかった事だけは確かだ。
それから俺は風呂からあがってゆっくりしていると不意に携帯が鳴った。
「誰だ?こんな時間に?」
時刻を見ると午後23時半、普通に遅い時間ではあるが母さん達の帰る連絡には、まだ時間が少し早い。スマホの通知を確認すると【美白 璃奈】の文字。
連絡先を交換したのは確か文化祭の実行委員で一緒になった時だっけな。……そういえば卒業式の後での話をしとかないとなと思いながらチャットアプリを開く。
〈美白:こんばんは草薙君。今日は本当にありがとうね。あと腰大丈夫かな?私を助ける時に打ってたみたいだけど… 〉
〈草薙:ああ大丈夫だよ、気にすんな。そうそう美白に言わなきゃいけない事があったんだ。聞いてくれるか?〉
〈美白:えっ?!う、うん何かな?〉
〈草薙:えっとな、明日の卒業式の後に美白が話があるって言ってたじゃん?〉
〈美白:うん…〉
〈草薙:今日もう一人俺と話したいって人が居たんだよ。だからどうしたら良いかなって〉
〈美白:………それは女の子で草薙君と仲の良い人かな?〉
〈草薙:よく分かったな…そうだよ。なんの用事か分からないけど。あぁあと『絶対に負けないから!』って伝えといてって言われたんだが…どう言う意味だ?〉
〈美白:……よく分かったわ。ごめんなさい草薙君、急用が出来たから今日は失礼するわね。おやすみなさい〉
そう言って美白からの連絡は止まった。一体なんだったんだ?と思いながら茜ちゃんにその事を伝えた旨の連絡を入れた。
するとすぐに可愛い兎の了解スタンプが送られてきた。茜ちゃんの連絡先はあの事件の時、瞳さんに連絡先を聞きに言った時に登録したものだ。
「さーてテレビでも…なんだ?また携帯か」
画面を見ると今度は【高峰 鈴華】の文字。…しかも通話だ。アイツはいっつもこれだ、気まぐれにこうしてちょくちょく電話をかけてくる。
……あんな事があったとはいえ、無理やり交換させなければよかったかななんて思うときもあるが…取り敢えず出るか。
「はいもしもし?」
『おっす〜こーすけ〜!ちゃんと3コール以内に出たね〜偉い偉い!』
「たまたま他の子と連絡しあってたから出れただけだ、そんで?なんか用か?」
『アタシの用の前に…その連絡してたのって…絶対女の子でしょ?』
何で今日連絡してくる奴らはこんなに勘がいいんだ?俺何にも言ってないよな?
『それが女の勘って奴よ、こーすけ』
「なぁナチュラルに俺の心読むのやめてくんない?普通に怖いから」
『読みやすいアンタが悪いのよ、はぁ〜〜まったくアタシが居ながら浮気するなんて…サイテーねこーすけは』
「おい事実の捏造はやめろ?俺らは別に付き合ってるとかじゃないだろーが」
『うそうそジョーダンよ♪(…まだね)』
そうキャッキャと楽しそうにはしゃいでいる高峰…こいつはホントに何の為に電話かけてきたんだ?只々暇だっただけか?
「んで?用事って?」
『ん?あ〜簡単よ、明日の卒業式の後アタシから話があるから顔貸しなさい、こーすけ』
「お前もか?そんなに何話したいんだ?お前ら」
『(お前も…?もしかして…う〜んまぁ今はいいか…)ちょっとその質問はデリカシー無いんじゃないの〜?乙女のヒミツよ♪』
話したい事があるなら今話せばいいと思うんだがなぁ…この考え方がデリカシーがないと言われる原因なんだろうか?
『それで?勿論アタシの用事聞き入れてくれるわよね?こーすけ?』
「分かったよ、卒業式の後ね了解。でもあと二人同じ用のある奴が二人いるから、そいつらにも話しとくな」
『へぇ………アタシ以外に二人も……へえぇ〜〜〜……(でもまぁ…まだ少ない方よね…こいつの事だし、十人以上たらし込んでてもおかしく無いし…)』
…なんかボソボソ言ってて聞こえないが高峰は少し不機嫌そうな声でウンウンと唸っているようだ。どうしたんだ?ホントに…
『まぁいいわ!アタシがナンバーワンになれば何の問題も無いわけだし?蹴散らしてやるわ!こーすけ!その二人に「アタシが一番になって貰うから!」って言っときなさいよ!』
「お、おう…お前も圧が凄いのな…」
『当たり前でしょ!こっちにだって譲れないものがあるのよ…戦争よ?戦争!とにかく明日頼んだわよこーすけ!風邪なんて引いたら許さないから!じゃあね♪』
と、そう大声で言いながら高峰が通話を切った。貰う貰わないとか、負けないとか一体何の話なんだ???…もしかして俺の第二ボタンでも取り合ってたりして…?!
「なんてな…そんなことある訳ないか。だって相手はイケメンにモテまくり、引く手数多の【三大美女】様方だぞ?ないない」
そもそも俺に好意を寄せる要素が無いじゃないか。流石は俺の夢、経験がないからってこう言うところはご都合主義で誤魔化そうとしてるな〜
そんな事を思いながら美白と茜ちゃんに高峰が言っていた内容を伝え、二人とも既読がついたところでいい時間になったので早めに寝ることにした。
「寝るか…おやすみ…」
『ありがとう…
不意に懐かしい俺の本名でそう呼ばれたような気がしたと思ったら、目の前が真っ白になって……俺の意識はそこで途絶えた。
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