序章 ゲームを出るまでの学生生活
とても長い夢のお話 一人目 美白璃奈
夢とは何か。一度はみんな思った事があるのではないだろうか。かくいう俺もその一人だ。昔の偉い人は人間の潜在意識が〜とか、深層意識がなんとか〜とか面白くもない理屈ばっかりで本当に面白くない。
結局のところそんなの誰にもわからないし、哲学的な話になって頭が痛くなってくる。
「…ぎ……なぎ!」
なら今俺がいる此処は一体なんなんだろう。夢にしたってあまりに長すぎるし、リアルさが今までの夢と段違いだ。
「…さなぎ!」
本当になんなんだろう…此処は。もう三年も経ったぞ?あれか?精神とほにゃららの部屋的なあんな感じの夢なのか?!
「草薙!!!聞いてるのか?!」
「はいっ!?なんですか元部先生?!」
「まったく…いつまでも教室でぼーっとしてるんじゃないぞ!早くお前も今日までの数学の課題を出してから帰るようにな。帰る用意ができたら職員室まで出しに来いよ、先生はもう戻るからな」
そういって俺こと
いかんいかん…ぼーっとし過ぎたみたいだ…しかしながら言い訳をさせてもらうと三年過ごしたとはいえ、この名前は自分のものじゃないからどうしても反応に遅れるんだよなぁ…そもそも俺の夢だし。
「ふふっ…いっつも元部先生に呼び戻されたあとの顔が、鳩が豆鉄砲を食らったような感じになっちゃってますよ?のんびり屋の草薙くん?」
「う、うるさいなぁ…いっつもからかいに来やがって…そっちは終わったのか?生徒会の手伝い。まったく任期終えたのに後輩の為に手伝ってあげるなんてな」
今俺をわざわざからかいに来たコイツは
しかも容姿だけでなくスタイル抜群と来たもんだ。まぁその…制服越しでも分かるくらいのボリュームって言うか…
そりゃ人気も出るだろうと想像に難くない。実際男子に告白されているところをしょっちゅう見かけるしな。
それに仕方ないだろ…あの先生いい人ではあるんだが顔が怖いんだよ…
「うふふ、照れてる草薙くんも可愛いですよ♪っと…長話してる時間はないわね。
今から後輩達の為に生徒会室に手伝いに行くところだったの。良かったら草薙くんと職員室まで一緒に行こうかなって思ってね♪」
「へいへいいつもの奴ね。面倒な荷物運びくらいやらせて頂きますよ、献身的な元生徒会長サマ」
そういう美白の横には山積みのプリント達が鎮座している。……うん正直クソめんどくさい。よく荷物持ちとしてパシらされてたからか、もう慣れた。
「うふふ♪じゃあ職員室までよろしくね草薙く…」
「ちょっと待てよ、そんな力が弱そうな奴より力のある俺が運んでやるからさ!そんな奴ほっといてよぉ…俺が持ってやるよ、璃奈ちゃん」
そういって割り込んで来たのはクラスの陽キャの…えっとなんだっけ…かませ犬みたいな名前の…
「申し訳ありません、釜瀬君。お気持ちは嬉しいのですが…このあと草薙くんに個人的な用がありますので…すみませんがお引き取り頂いても?」
「い、嫌でもよ璃奈ちゃん?俺の方が向いてると思うんだけどよ?な?俺にしとこうぜ?」
そんな問答が繰り返されている間に美白の言った名前で思い出した!
そうだ!確か
と、そんなことをしみじみと思っていると、どうやら決着がつきそう。
「私は貴方に名前で呼ばれるほど親しくなった記憶は無いのですが。釜瀬君。
それに人を差別するような発言は控えて頂けますか?気分が良くありませんので。お引き取りくださいな」
「…っ!わ、分かったよ璃奈ちゃ…美白さん」
そう言って美白の怖い顔に怯んで僕の近くに来る釜瀬君。
「チッ…調子乗んなよ、インキャが…」
今度はそんな怖い顔を俺に向けて舌打ちをしながら教室を去って行く釜瀬君。いや僕何にもして無いじゃんと思いながらもプリントの束を持つ俺。
…本当にめんどくさいな、俺としては変わっても良かったんだけどなぁ…
「さっ♪行きましょっか!草薙くん♪」
「おう、さっさと運ぼうぜ、美白」
さっきまでの怖い顔は何処へやら、満開の桜のように綺麗な笑顔で振り返った美白を見て俺はプリントを持って教室を出る。
「…もう、君になら璃奈って呼んで欲しいのに…康介くん…(ボソッ)」
「おい?どうしたんだ?美白?」
「っ?!な、なんでもにゃいよ?!さ、さあ行こっか!草薙くん!!」
「お、おう…」
何故か耳まで真っ赤にして俺の前を通り過ぎていく美白。なんだ?あいつがしつこかったから怒ってんのかな?にしてもなんか噛んだり、ボソボソ言ってたような…まぁ気のせいか。
そう納得した俺は先に行った美白を追いかけて職員室へ向かうことにした。
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