第40話 気のせい

 いつか見かけるだろうか

 気づいたら目を走らせていた

 人混みの中

 知っている人なんて

 いるはずもないのに

 どこかで期待して

 また、気をとりなおして


 ずっと、期待の入り混じった気のせいを

 行き来して

 追いかけては、立ち止まる

 あの時が恋しく

 現実を受け入れたくなくて

 時の流れだけが

 静かにほほをかすめていく


 願っても仕方がないことが

 希望になって、空虚くうきょな嬉しさが

 何度も苦しめた


 あの時を何度も思い出しては

 味のしないガムを何度もむように

 もう一度、甘い味を思い出したくて

 仕方のない何かを探してる


 きっと、意味のないことかもしれない

 楽しかった時がいほど

 もう一度を、どこかで求めてて

 上げた足を静かに下す


 振り返って

 この気のせいが

 心の中で

 ずっと居座いすわっている

















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