第29話 雫

 一粒のしずくが落ちて来た

 見上げると雨だろうか

 さっきまで晴れだと思っていたのに


 笑顔でいるようにしている

 そうでないと自分には何もないから

 今までここに立ち止まって

 見上げていたことさえも


 唯一、数少ないつながりに甘んじてしまう

 上手くいかないことに

 グチって、あたってしまった

 分かったふりして順調を語って

 本当は現実と比較の中で傷ついて

 思い知らされて

 

 焦りと悔しさに見て見ぬ振りして

 ひそかに想っていた人さえも

 そうだよなって自信喪失のまま密かに失恋して

 遠くでうらやましく傍観者ぼうかんしゃになって

 終わってしまった

 

 しずくだけが、落ちて来てくれた

 残っているのは孤独と

 精一杯の笑顔だけ

 

 落ちて来たしずくほほを伝い

 静かに響き渡る


 残っている気力を振り絞れ

 目の光はまだ消えちゃいない

 じっと、暗い先を見つめたまま

 終わったなんて言うなよ

  

 誰がお前を笑ったんだよ

 誰がお前をあわれの目で見たんだよ

 誰が孤独なんだよ


 どんなに悔やもうが責めようが、これだけは言える

 

 一生懸命のお前には誰もかなわない

 

 精一杯の笑顔は雫に変わって

 これから保証してくれる




 











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