3-8.神連れ3
先週に
「
「自殺なんだっけ?
「誰かに狙われてたんじゃない? ほら、貴妃の派閥だったから別の妃から目を付けられたのかも」
「きっと呪いのせいよ。以前に香梅堂にいた妃は無実の罪に問われて処断されたんだって」
「でも香梅堂に行く前から体調が悪かったって聞いたよ。奇病だから隔離すべきってのが引っ越しの理由だったみたいだし」
ここ最近は
しかし
しかも、これでは皇帝からの
呪いであれ、病であれ、元凶が判明して浄化されるまでは帝に触れさせるわけにはいかない。もしかすると
では、わざわざ
もちろん、
皇后、四夫人を筆頭に、後宮外では高位の文官や
もしくは、深い思慮のない雑な判断による、雑な人事だった可能性も考えられる。
それが、ここにある『呪詛の像』が後宮内にあったとなれば状況は変わってくる。
呪いの真偽はともかく、こういう性質の物が外部から持ち込まれたとなれば陰謀説を疑いたくもなる。
「これは、どこに置かれていたのか」
「名の知らない宮女が持ってきたのですって」
「他所から持ってきたとなれば……
「さあ……持ってきた宮女は異国の物のようだからこちらに引き渡しますと言っていたらしいけど、
「……少なくとも敵ではなさそうだ」
「ここに持っていくように指示した奴は、それなりの聡明さを持ち合わせている。これが噂の元凶ではないかと、謀略の一端ではないかと見抜いたからこそ、内侍の手に渡すのは危険と判断している。外部から後宮に持ち込んだのは宦官の可能性が高いのだから、それで内侍に戻せば首謀者に知れると読んでのことだろう」
「ちょっと考えすぎかも。案外、理由がないこともあるから。最初は内侍に持って行ったけど、こっちに持っていくように言われたのかもしれない。一介の宮女が、はたして
「偶然であれば、それで良い。意図的であったのなら、ここに持ってきた宮女が首謀者とは関係ないと分かればいい。問題は、
「……あなたの中では、陰謀説に傾いているようね」
こう尋ねる
「何か根拠があるの?」
「像を宮廷に運び入れたのは
「政敵を排除するのに呪いを頼ったわけ。随分と遠回しなやり方ね」
「運び入れる最中に商人が不慮の死に陥ったらしいから、事前に安全性を試した可能性がある。呪いで
「それで本当に死んだから、そのまま
「ちなみに、実行犯は別にいるのだけど」
「……そういえば君はさっき、人災と言っていたな。何か確信があるようだが」
「私が知っているのは、誰が企んでいるか、ではなくて、不幸を
「面白そうだ。是非、教えてくれると有難い」
「それ、食べていい? お腹が空いているの」
承諾を待つこともなく、皿を自分に引き寄せた。
「ちなみに神託の像には、何が書かれているか知ってる?」
「いや……特に聞いてはいない」
「十二体の像にはね、製法や技術について記されているらしいの。例えば水源を探り当てる方法や製鉄技術、薬の調合だったり……国を建てるのに役に立った知識を守護として崇めたと記録に残っている――それでね、じゃあ、十三体目には何が書かれているのかって考えてみたわけ。そこで、この像に刻まれているのは文章というより、単語ばかりだと思わない?」
「さっきも言ったけど『神連レ』は本当の神を連れてくるという、王への報復の言葉を表しているのだけど、実在する花の名前でもあるわけ。遥か西の国の花で、ここまで種が流れてきたのか、もともと生息していたのか、古の民の山にもその花はあって芳香剤として用いられたのですって」
「花を……まさか香木の製法が書かれている? いや、そんな可愛い性質のものではないか」
「もちろん、もっと物騒な代物ね。使っている花は材料のほんの一部で、怪しまれないように花の香りを混ぜているってこと」
「なるほど……つまりは、毒か」
「その像に害はないから安心して。これは単純な毒じゃない。もっと複雑な性質を持っているから」
そう言って
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