3-4.香梅堂2
待遇が良くなると聞いていたのに面積が広くなっただけで人数が変わらないのだから、これでは手間が増えただけ。しかも
もともと、この場所は梅の花を植えた庭園だったらしい。
皇帝の一時的な訪問所としたのが始まりだったようで、梅の花に飽きた皇帝が来なくなったから、代わりに
――あの堂は、呪われているんですよ。
こんな世迷言のせいで、みんながこの場所を恐れて、誰も手伝いがやって来ない。手伝わないだけならまだしも、本来やるべき職務さえ放棄されている。
――贈り物を取りに来てください。
――料理を取りに来てください。
――茶葉を取りに来てください。
門の前の投函箱に、紙だけが届いている。
『投函のついでに、自分で持ってこればいいのに!』
『本来は、
『だけど、まだ
『まあ、実際に
『せめて、掃除や料理くらいは私がするから』
『え~、皇帝の妃は料理なんてしちゃいけないんだよぉ』
『しちゃいけない……ってことはないと思う。ここの中だけの決まりなら自由にすればいいの。とにかく、私ばっかり待ってても落ち着かないから……ねえ、
『装飾品だったよ。殺風景のままだとあれだからって、私たちにしては珍しく贈り物が届いてるんだって。まあ、
『うわぁ……すごい、綺麗だね』
『あんまり派手なのは……私に似合うかな』
『
『……そうかな。じゃあ、
『はいはーい、賛成でーす』
調理は
なぜなら、本当は
まず、
『これ、最初からあった?』
まるで部屋に溶けているように、自然と置かれている。
銀色だから目立つはずなのに、なぜか目立っていない。そこにあって当然のように違和感がない。
『来たほきから、そこに置いてふぁったと思ふ』
『そっか。じゃあ、動かさない方がいいのかな』
とりあえず、このままにしておくことにした。
おおよそ、飾り付けが終わったところで、そろそろ遅めの昼食を取ろうかと腰を休めたあたりで、玄関の外から大きな声がした。
「どうしてさっさと出てこないのかしら! 私の足音で気が付きなさいよ!」
さすがに足音では分からない。声を聞いたからすぐに分かる。それほどに聞き慣らされている。
慌てて、外に出る。
もちろん、待っていたのは
「ご機嫌、麗しゅう、
いつも通りに
「は? 今、何て言ったの?」
なぜか今日の
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