3.呪詛の像
3-1.呪詛の像1
――
帝の
それに伴って、
※追伸
――
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
都に冬が訪れて、本格的な寒さを迎えて、時折、雪がちらつくようになっても
――砦への物資搬入が雪で閉ざされています。
――寒さで兵士が体を壊して、行軍がままならなりません。
――逃亡兵が相次ぎ、包囲網が崩れつつあります。
どうせ失脚させたところで、別の
結局、
本当は、もっと優先したい心配事があるのに。
もちろん、それは
初めての
「彼女もあれから、多少は割り切れるようになったみたいね」
「意外と、近くで見つかったぞ」
「もう見つけたのか」
「ああ。幻の十三体目ってやつだが、どうやら献上品として北方から運ばれていたようだ」
「……北方から? そうか、意外だな」
「おそらくは北から始まって、幾人かの手を渡ってきたようだが……さすがに詳しい
しかし、
武器の発注に目を向けさせて、その裏で『神託の像』を密かに運び入れたかったと。
「ここに書いてある通り、ただの家具や装飾品に混ざって運び込まれていた」
「もしも俺の部下が真面目な奴でなかったら見落としていただろう。俺には、なぜそんな手間をかけてまで運んだのか分からん。禁止されている薬や毒物ならともかく、正式に献上しろと言われている神託の像を、どうしてわざわざ隠す必要がある?」
「お前が言ったろう、もとは北方から運ばれたと。前々から帝は神託の像に執着していた。古来の民とかいう滅びた民族の信仰の証だったが、十二個の像は各地に散らばっていて、貴族どもは
「……なるほど、
「
北方民族と、東方の
北は、賢妃・
東は、
「武力は
「しかも拾ったと言ったか。どういう意味だ?」
「商人が死んでいたからな」
「……なんだって?」
「正門を抜ける前の、荷の搬入記録からだ。都に運び入れる手前で、仲介した北方の商人が不審な死を遂げていた。都の近隣の町では、ちょっとした話題になっていてな、人づてに話を聞いたから分かった。つまりお前の推測を合わせると、都の手前までは
「……噂は本当だったか」
――
「十三体目の像は、何と呼ばれているか知っているか?」
「町の連中が何か言っていたな。確か……
「そうだ。名前の通りに『十三番目の
「まさか……お前、商人が死んだのは呪いのせいだと。そんなものを信じているのか?」
「いいや、俺は信じていないが、信じている連中は多い。実際に不審死が相次いでいるらしい」
「……妙だな。されているとか、らしいとか言って、そもそも十三体目は幻なんだから、幻のくせに不審死が多いとか意味が分からん」
「しかし、実際に商人は死んだのだろう?」
「……まあ、そうだが」
「商人の件も追ってくれるか。どういう死因だったのかを明確にしたい」
「分かった、引き受けよう。宮廷にそんな訳の分からない物が運び込まれたとなれば放ってはおけない」
ここで
「それに、義弟の頼みとあれば、仕方がないからな」
こんな冗談を言う。
「……あのな、さすがに義弟と呼ぶのは止めろ」
他人に聞かれては洒落にならない。もっとも、これは
(後宮にまで、関与していなければいいが)
宮廷に運び込まれた像の行方は分かっていない。
何も起きなければいいのだが。
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