1-3.任暁(レンシャオ)将軍
――門下省。
装飾窓から明るい陽が差して、天井の
「軽率なことを。妹だからといって、後宮の妃に恋文と勘違いされるようなことをするとは……
この部屋には
「立ったまま書いたわりには……
などと言う。反省の色が薄いので、もう一度、
同じ師から学問を教わった仲で、今でこそ立場は
つまり二人は対極の印象だ。
「せめて
「妹への手紙だ、故郷の言葉で書いた方が安心するに決まっている」
「お前な……妹が後宮入りしていることをもっと意識しろ。地元では許されても、ここではまかり通らん。こういうのが続くと、せっかく都への滞在が認められたのに地方の監察に戻されることになる」
「だから悪いとは思っているさ。伝言はお前に頼むべきだったし、次からはそうする。俺の失敗は、お前の失敗。お前の失敗は、俺の失敗だ。そして、残念ながら上官はそっちだ」
「やれやれ、顔馴染みだと上官である方が損だ……まあいい。この件はこれで終わりにしよう。ところで、せっかく都に来たのだ」
「都への
「気が利くな。お前が将軍になった祝いでもあるか」
「……将軍とはいえ、
「言うな。少なくとも今は、酒と権力に酔えばいい」
二人は
戦で共に戦ったこと。
少年時代に師に
ほどほどの酒の量に達したところで、再び話題が妹へと戻った。
「さっきの件はもう終わったと言ったが……」
「文を読んだ者が
「それなら、もう行ってきた。てっきり同郷の者かと思ったが、そっちの言葉は知らんと」
「……ほう?」
「……西南の言葉を知らないのなら、全てを読んだのではなく名前だけを読み取ったのか。ちなみに――どんな奴だった? 九訳は女に代が変わったと聞いたが」
「そうだな……えらく冷静で
「……お前がそんな風に評するのは珍しいな」
「そうなると、上官としても礼は必要だな」
「なんだ、会うのか。下世話な趣味か」
「馬鹿を言え。これは
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