第30話 先っちょだけでございます
魔物討伐が終わり、俺たちは氷魔の地に帰ってきた。
「教皇の好感度を稼ぐのに成功しましたね」
ニーニャは紅茶を煎れながら、そう呟く。
「うん。魔物による被害も止められたし、大成功だ」
「あれだけ好感度を稼げば、教皇もハーレムに加えられそうですね」
俺が紅茶を口に入れた瞬間、ニーニャがそんなことを言うものだから、あやうく絨毯に吹き出しそうになった。
「そういう好感度じゃないでしょ! 俺が王に相応しいって、そういう人間の器的な好感度だよ!」
「無論、そちらも稼ぎました。が、それはそれとして、恋愛方面もバッチリですよ。たまに教皇がメスの顔になっていたのに気づきませんでしたか?」
「変な冗談はやめてよ……」
「冗談ではありませんが? エリオット様は女性に興味がないので、気にもかけていないのでしょうね。しかし、エリオット様ガチ恋勢の代表である私には分かります。教皇はエリオット様に恋愛感情を抱いています。教皇本人さえ自覚していないかもしれませんが」
「そうなのかなぁ?」
「はい。教皇はまだ十五歳ほどの少女。恋に恋するお年頃でしょう。ですが神託で選ばれ、幼い頃から教皇候補として厳格に育てられ、そして実際に教皇になってしまいました。神に身を捧げたのですから、誰かに座を譲るまで、恋愛は御法度。しかし、いくら禁じたところで、人の欲望を完全に抑えることはできません。普通の女の子みたいに恋をしたい……けれど許されない……妄想で自分を慰める日々……本当は普通の女の子なのに、教皇として大人たちに毅然とした態度を見せなきゃいけない……ああ、誰か自分を守ってくれる強い男が現れないものか……理想の相手を妄想して自然と指が下半身に伸びる……そんなとき! 頼もしい殿方が登場! ちょっと幼いし、女の子みたいに可愛いけど、とっても強くて賢い! その名はエリオット・レオンハート! しゅきぃぃぃっ! お揃いのウェディングドレス着て結婚式したいぃぃぃぃっ!」
「待って。途中からニーニャの願望になってない?」
「……はっ!? 申しわけありません。つい想いが溢れ出してしまいました。しかし女性なら、エリオット様を前にすれば、すべからく似たような妄想をするに違いありません」
「すべからくの使い方、誤用じゃない?」
「すべからく女性はエリオット様を前にしたらえっちな妄想をすべし」
言い直しやがった。
世の女性になんてこと強制してんだ、このエロメイドは。
「まったくもう……ラドニーラはそんな妄想しないよね?」
素知らぬ顔でソファーに寝転ぶラドニーラに話を振ってみる。
「ん? 我は結婚とか恋愛とかよく分からぬのじゃ。まぐわいが気持ちいいのは理解したがのぅ。くふふ」
「ラドニーラはこう言ってるけど?」
「ラドニーラはドラゴンなので別枠でございます。それに、無自覚ということもあるでしょう。ところでラドニーラ。可愛く寝転がるあなたを見ていたら急にムラムラしてきたので、今から二人でまぐわいませんか?」
「ふ、二人で!? それは嫌じゃぁ……ニーニャにされると、何度も意識が飛んで、頭がチカチカするのじゃ……気持ちいいのかどうなのか全然分からなくなるのじゃ! むしろ怖いのじゃぁ!」
「では、誰か別の者を誘いましょうか。そこら中に暇な男がいますので」
「それも嫌じゃ! 女はともかく、男はエリオットじゃなきゃ嫌じゃ! どうしてか知らぬが、エリオットのおちんちんじゃなきゃ嫌なのじゃ! エリオットのおちんちんが欲しい!」
「同感です。私もエリオット様以外のおちんちんを挿れるくらいなら死を選びます」
「あのさぁ……二人ともおちんちんって連呼するのやめてくれない? はしたないってレベルじゃないよ」
俺は聞くに堪えられなくて、つい小言を口にしてしまう。
だって二人とも天使みたいに綺麗で目の保養なのに、耳に届くのはおちんちんだ。脳がバグっちゃうよ。
「エリオット様。私たちを黙らせたかったら、本物のおちんちんを使うのが一番ですよ」
「ぬふふ、それは確かに。欲しているから連呼しているのじゃからな」
「え、ちょ、まだ午前中だから待って……や、やだぁぁぁっ!」
そして俺は深夜まで二人にもみくちゃにされた。いつものパターンだよ……。
「うぅ……下半身の感覚が全然ないよぅ……こんなことしてる場合じゃないんだ。透明指輪と、録画メガネを作らなきゃ……」
「指輪とメガネでございますか?」
「そう。父上と盗賊団の繋がりをハッキリさせる。そのためには、忍び込んで決定的な瞬間を捉えるのが一番だからね。今日中に作りたかったのに……明日にしよう」
「なんのことやら分かりませんが、明日にするのであれば、今日はもっと楽しんでもよろしいのですね?」
「くふふ。夜はまだまだ長いのじゃ」
「だ、駄目! もう駄目だってばっ!」
「先っちょだけでございます! 先っちょだけでございます!」
「うわぁぁぁぁぁっ!」
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