第12話 謎の気配を追え

 ゴーレムを使ってオリハルコン採掘を開始してから一週間が経った。

 一目で「露天掘りの採掘場だ」と分かるくらいの大穴ができている。掘り出したオリハルコンはトロッコに乗せられ、そして俺が敷いたレールに沿って村まで運ばれる。

 トロッコを引っ張るのもゴーレムだ。

 到着したオリハルコンは、俺の手で不純物が除去され、インゴットに加工される。

 今のところ使い道が定まっていないので、屋敷の地下室に貯蔵し続けていた。

 採掘は順調。何トンになったことやら。


「あれ?」


 採掘場を見に行くと、俺はすぐに違和感を覚えた。

 動き回っているゴーレムが、明らかに減っていたのだ。


 初日に採掘用に十機作って、あとから更に十機追加した。合計二十機が採掘作業しているはず。

 閉じた洞窟ではなく、すり鉢状に削る露天掘りをしているので、全容が見渡せる。

 だから影になるものもないので、全機を確認できなきゃおかしい。


「三機、足りませんね」


「ニーニャが言うなら間違いないね。念のため、魔法で探知してみよう」


 ゴーレムには魔石が組み込まれている。

 その気配を探れば、何機いるかハッキリする。


「うん。やっぱり、この採掘場には十七機しかいない。どこに行っちゃったのかな……追いかけよう」


 遠くの気配を探るのは難しいけど、自分で作ったゴーレムだ。おおまかな方角くらいは分かる。ちなみにこれはゲームのスキルではなく、転生してから覚えた、こっちの世界の魔法だ。


「本当にこちらなのですか? かなり馬車を走らせましたが、ゴーレムの足跡はありませんよ」


「うーん……歩いてきたなら雪の上に足跡が残ってるはずなんだけど。まさか空を飛んだとか」


「ゴーレムにそんな機能をつけたのですか?」


「つけてないんだよなぁ」


 俺は首を傾げる。

 けれど確かにゴーレムの反応はこっちからするのだ。

 更に馬車を走らせる。

 やがて目の前に山の斜面が広がった。

 そこには洞窟の入口が開いていた。かなり広々としている。大型トラックがそのまま入って行けそうだ。奥行きは暗くて分からない。


「この奥から気配がするんだけど……よく分からないな」


「そんなにこの洞窟は深いのですか?」


「いや。そういうんじゃなくて……洞窟の奥から、別の気配がするんだよ。俺のゴーレムの反応を掻き消すくらい、強い魔力を感じる」


「魔物でしょうか?」


「どうだろう? とりあえず潜ってみよう」


「お待ちを。まずは私が一人で見てきます。魔法の明かりだけお願いできますか」


 ニーニャは俺の前に出た。

 その後ろ姿。歩き方で分かる。達人だ、と。

 仮に俺が背中から攻撃しても、返り討ちにされる。

 この人は俺の護衛でもあるのだと思い出す。


「ヤバそうな感じ?」


「私は魔力を察知する技術、、がありません。なので漠然としたですが、あまりよろしくはありません」


 達人の経験に裏打ちされた勘は、時として理屈を超えて真実に辿り着く。

 ニーニャが一人で行くと言うなら、そうさせたほうがいいのだろう。

 俺は言われたとおり、魔法で光球を出してニーニャを追いかけさせ、あとは大人しく洞窟の入口で待つことにした。


「……なんだ? 今度は上空から気配?」

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