第11話 ゴーレムでオリハルコン鉱山を掘る

 オリハルコンを掘りたい。

 しかし、いちいち俺が現場に行って穴掘りスキルを使うのは面倒だし、時間がいくらあっても足りない。

 普通なら領民に穴を掘らせるところだ。けれど、彼らに自分の時間を過ごして欲しくて防衛用ドローンを作ったのに、穴掘りをさせたのでは話がおかしい。

 そもそも二十人しかいないのだ。労働力として物足りなすぎる。


「というわけでゴーレムを作って採掘させる」


「ゴーレムというのは、人の命令を聞いて動くという人形のことでしょうか?」


「そうだよ。よく知っているね」


「伝承に登場しますから。逆に言えば、物語でしか聞いたことがありません。エリオット様はゴーレムさえ作れるのですか?」


「うん。ゲームだとゴーレムは拠点防衛とか建築とか、色んなことに使えて便利だった。作れるようになるにはかなりレベルを上げなきゃいけなかったけど、一度作れるようになれば、一気にプレイの幅が広がって楽しいんだ!」


「……申しわけありません。早口で語られても、私はそのゲームというのを知らないので、イメージできません」


 しまった。ゲームの話になると、つい夢中になってしまう。


「とにかく作ってみせるよ。金属で作ったほうが強いけど、採掘用なら岩で十分かな」


 ドローンと同じく、その辺の岩と魔石を使ってクラフト。

 身長二メートルを超える岩のゴーレムが完成した。


「この辺を掘りまくってくれ。それで、こういう金属が出てきたら、一カ所にまとめて欲しいんだ」


「ごっ!」


 ゴーレムは短く返事してから、二本の腕で穴を掘り始めた。


「凄い……不出来な石像にしか見えないのに、言われたとおりに動いています。エリオット様が作るものはどれも常識外れですが、今回のは格別ですね。地面から労働力を生やしたようなものです」


「作るには、そこそこ大きな魔石が必要だけどね。取りあえず、あと十体ほど作っておくか」


 ゴーレムたちは協力して穴を掘りまくる。

 しばらく見ていると、キラキラした石を持って地上に帰ってきた。


「見てください、エリオット様。ゴーレムが持っている石に混ざっているの、オリハルコンではありませんか?」


「うん! オリハルコンだ!」


 ゴーレムが入れ替わり立ち替わり、オリハルコン入りの石を雪の上に積み重ねていく。

 どうやら、ここにもかなりの量が眠っているらしい。

 探知機の針の回転具合を見るに、前に採掘したところより多いかもしれない。


「ここで本格的に露天掘りをしよう。採掘用だけじゃなく、運搬用のゴーレムも作らなきゃ!」


「沢山採掘できたら、オリハルコンが領地の名産品になりますね」


「オリハルコンのスプーンとか、オリハルコンの万年筆とか、オリハルコンのサイコロとか、小物を作って売ったらどうかな?」


「エリオット様。贅沢すぎます。しかし大金持ちはそういう無駄を好むので、需要があるかもしれませんね。ですがオリハルコン製の物は、溶かされて武器にされてしまうのでは? あまり大量に出回ると、世の中の治安がどうなるのか心配です」


「ああ、それなら大丈夫だと思う。だってオリハルコンの加工なんて、普通の鍛冶師にはできないよ。溶けないし、曲がらないし」


「確かに。うっかりしていました。あまりにもエリオット様がお手軽にアイテムを作るので感覚がおかしくなっていました。それにしても……改めてエリオット様のスキルの凄まじさを実感します」


 言いたいことは分かる。

 ゲームスキルを現実で使うと便利だろうと思っていたけど、実際にやってみると影響力の大きさに驚いてしまう。

 でも遠慮するつもりはない。

 俺は領地をガンガン発展させるぞ。

 ここを『氷魔の地』という名ではなく、レオンハート伯爵領として有名にしてみせる。

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