第4話 メイドを信頼していたのに俺の体が目当てだったなんて
「ところで疑問なのですが。エリオット様の能力で、家が建つのは理解できます。ですが絨毯やカーテンがあるのはおかしくありませんか? 木と岩しか使っていないのに。食器までありますね」
「言いたいことは分かるよ。俺もどうしてこうなるのか分からない」
ゲームでもそこはツッコミどころだった。
「まあ、ありがたいので、深く考えるのはやめましょう。二階には寝室がありますね。おっと、なんて立派なベッドでしょうか。二人で寝ても広々ですね。さては私と一緒に寝たくてこんなベッドを用意したんですね。エリオット様ったら寂しがり屋なんですから。仕方ありません。これから毎晩添い寝してさし上げましょう」
「え。隣にも寝室あるから、ニーニャはそっち使ってよ」
「え。嫌です」
「なんで……」
「私がエリオット様と一緒に寝たいからに決まっているでしょう。とんだ鈍感野郎ですね。エリオット様を抱き枕にしたいと以前に申し上げたはずですが?」
「抱き枕はともかく、添い寝したいってならしてもいいけど……その前に、話したいことがあるんだ。俺の前世について」
「前世? さっきもそのようなことを言っていましたね。どういう意味ですか?」
別に言う必要はない。秘密にしたままのほうが無難だろう。
けれど俺はニーニャを信頼しているし、こんな未開の地まで一緒に来てくれたのを感謝している。
ニーニャは特別な人だ。
だからこそ、俺の根底に関わることを話しておきたいのだ。
「信じられないかもしれないけど。俺には前世の記憶がある」
地球という、こことは別の世界にいた。
三十歳で死んだ。
テレビゲームという娯楽が趣味だった。
クラフト能力をゲームで使っていたが、それはしょせん遊びで、現実になにかを作れるわけじゃなかった。
ところがこっちの世界に転生したら、どうしてかゲームでやっていたことを現実でもできるようになった。
「というわけで俺の中身は子供じゃない。体に意識が引っ張られているからか、性的なことにあんまり興味がないけど、知識はある。だから俺と同じベッドで寝るのは、その辺りを考慮してからにして欲しい」
「前世では三十歳……どうしてそんな大切なこと、もっと早く教えてくれなかったんですか……」
ニーニャはうつむいて声を震わせた。
確かにそうだ。
こんな極寒の地まで来てから、実は中身はオッサンでしたなんて、たちの悪い詐欺だ。
「ごめん……」
「申し訳ないと思うのであれば、体で払ってください」
「は?」
次の瞬間、俺はベッドに押し倒されていた。
さすが剣豪メイド。
俺の反応速度じゃ太刀打ちできない動きだった。
しかし、なぜ……なぜ俺のズボンを下ろそうとする!
「十歳の子供相手だから我慢していましたが、前世と合わせれば私の二倍。年上相手なら我慢の必要はありません。むしろメイドとしてご主人様の性の処理をするのは当然のこと。仕事。日常の業務。朝昼晩のノルマ」
「ま、待って! なんでこんなことするの!?」
「は? エリオット様が好きと申したはずですが。言葉だけでなく行動でもアピールしているはずですが」
「そうだけど! そうなんだけど、その好きってこういう系!? 年下の俺を弟みたいに可愛がってるとかじゃないくて!?」
「それもありますが、それはそれ。これはこれ。もう本当に我慢できません。ため込んだこの気持ち、全部ぶつけますからね。私の五年分の性欲をここで発散させます」
「ああ! あああああああっ!」
こうして俺は前世から守ってきた童貞を奪われたのであった。
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