終章 

 宏樹は地図の示す方へただ急いだ。

そこに何か自分が抱える何かの答えがあると感じながら探し回った。


 年月が変わって荒れてはいたが面影が残る写真に写っていた秘密基地が見つかった。


「確か、この地図によるとこの秘密基地の周辺に埋まってるんだよな。えぇ~と…」


 と歩きながら目印のマークがある所の現地とのすり合わせを体を使って探していく。

 探る事約二十分

 それらしき場所を特定した。


「よし、掘るか!」


 と気合を入れて道具を使ってその場を掘り始める。


 掘る事約三十分後


 ガン!と固いものに当たったような音がした。

 丁寧に今度は手でその場所を掘る。


 すると中から出て来たのはクッキーの缶だった。


「懐かしいなぁこのクッキー。昔、雪花ちゃんの家でよく一緒に食べてたな…この真ん中の絵柄のクッキーが当時凄く好きだったな。」


 などと振り返っていたが目的を思い出した宏樹は早速クッキー缶を開けようとする。


 その時


 急な強風が吹き、秘密基地の柱となっている木の枝がこの強風でバキッと折れこの少し先の崖の川沿いに落ちて行った。


 何故かこの時謎の恐怖心に襲われた。


 何故か今まで全く川沿いを気にしなかったのに今は凄く気にしてしまうだが心はそこに近づくたびに鼓動が早くなっていく。


 とりあえず、クッキー缶は掘った場所のすぐそばに置き、自分自身はげ家の先の方へ気を付けながら一歩一歩進む。


 その先にあったのは…


「あっ…あ、あれは…そうだった…俺は…」


 宏樹の見たモノ

 それは川沿いに置かれたぬいぐるみやお菓子そしてカーネーションと雪花が好きだったチューリップが置かれていた。


 それを見て宏樹は忘れていた自分の人生で最も忌み嫌い苦しんだ記憶が甦った。


 その記憶とは…






 雪花が自分のせいで死んだというそこに至るまでの記憶を。




 当時、秘密基地で遊ぶ事が好きだった宏樹は良く雪花と遊んでいた。

 そしてそれから暫くしてその当時雪花が見ていたテレビドラマに影響を受けて

 タイムカプセルを埋めようと言い出しそれに面白そうとその提案に乗り

 大人になったお互いに向けて手紙を書く事にした。

 内容は将来知るという決まりにしてタイムカプセルを大人達の協力も得て

 無事に埋め

 それから少し経った時

 あの出来事が起きた。


 その出来事の日は前日の大雨で森は凄く荒れていた。

 そんな中危ないから行くなと親から行くなと言われていたが秘密基地が気になった

 宏樹は向かおうとしたその時

 雪花に見つかり

 一緒に付いていいなら見逃すと言われたので二人で森の中へ行き、少し道中

 躓いたりなどはあったが無事着いた。

 秘密基地は流石に濡れたり多少は荒れてはいたがそのものは無事だった。


 そして二階建ての秘密基地から降りようとしてる時に事が起きた。


 前日の雨でこれまでは大丈夫だった土砂が崩れ、落ちて来たものに巻き込まれはしなかったがその勢いに押され崖に落ちそうになった時に

 雪花が何とか宏樹の手を掴む。


「大丈夫?宏樹君。少し待ってね!今、私が引き上げて助けるから。」

「って雪花ちゃん…無理だよ!それに雪花ちゃんも危ないから手を放して。」

「宏樹君を見捨てるなんて私には出来ない!だから嫌だ。」


 何とか引き上げられそうになったその時だった。


 雪花の立っている場所も崩れた。


 すると空中でとっさに雪花は宏樹の後ろに回り抱きしめた。そしてそのまま落ちた。


 次に宏樹が覚えている記憶は

 病院のベッドの上だった。


「え、ここは!雪花ちゃんは…!!!」


 と興奮気味に目の前にいた看護師に聞く。


「あ~君と一緒に運ばれてきた女の子ね。あの子は運ばれてきてから

 かなり危険な状態で出来る限りの処置はしたんだけど残念ながら亡くなったわ。」


(それを聞いた時この時の自分の中で何かが壊れた気がした。その日から俺はずっと一緒に過ごして来て初恋だったお馴染みを自分のせいで死なせてしまった事に耐え切れず早く雪花の事を忘れて楽になりたかったこの時の俺にとってはとても抱えられない事だったから。でも、なかなか忘れらず何とかして早く忘れたかった。だから忘れられる様に色んな事をした。勉強、スポーツ、遊びそうして過ごしていくうちにそして早く忘れたいと願い時が経つ事に本当に忘れていた。今となってはいつから忘れてたのかも分からないとにかくこの事について蓋をしたかった。

 そして今思い出した。

 でも今こうなって分かった。

 忘れたんじゃなくて蓋をしていたという事

 何よりずっとここではこれで良くないと向き合うべきだと心のどこかでずっと思っていたという事。

 自分の意識の外で

 だから今思えば母親からあの写真を貰った時に衝動的に帰って来たんだろうと今は思う。)


 現在   秘密基地近く


「よし、開けるか。タイムカプセルを」


 と呟きながらケーキの缶を開ける。


 そこには確かに当時入れた

 二つの手紙があった。


「さて、なんて書いてあるのか。」


 封筒から手紙を取り出し内容を見る。


〖未来の宏樹君へ


 今、貴方は何をしていますか?

 そして私とはまだ一緒に居ますか?

 今の宏樹君はまだまだ子供だけど大人の宏樹君になら書いたら分かると思うので書きます。

 私は、宏樹君の事が異性として好きです。だからつい心配で愛おしくておせっかいになってします。

 私は宏樹君が元気にまっすぐな所がとても好きでそれに幸せになって欲しい。出来れば私が一緒が良いけど…未来の事は分からないから。でも、これから何があっても何年経ってもずっと好きだよ宏樹君。それと出来ればずっとそばにいて貴方を守りたいです。これが私から未来の宏樹君への私の初めてのラブレターだよ。

 だから大事に持っていて欲しいです。


 過去の雪花より〗


 と書いてあった。


 これを読んで宏樹はある記憶を思い出した。


 それは事故に遭った時雪花との最後のやり取りを


「良かった…宏樹君が…大した怪我しなくて。」

「雪花ちゃん…。なんで俺をかばったの?」

「それはね…私が宏樹君を守りたいって思ったからだよ…」

「凄くケガしてるけど大丈夫…?」

「うーん…ダメかも…だから…この言葉を忘れないでね。【幸せになってね。私の分まで】…」


 と振り絞った笑顔で雪花はそう言った。

 その後意識を無くす雪花を見てそのショックで記憶を失った。


 全てを思い出してただその場で手紙へ濡れないよう配慮して涙が枯れるまで号泣した。



 その翌日改めてその現場へお供物と飲み物を持って訪れた。


 そこで手を合わせお供えし、その場に座り込み宏樹は色んな想いを吐露した。

 そして浸り始める。全ての想いと思い出を背負って行くと決意を固め

 雪花に投げかける宏樹。


「そうか…きっと今ここに行き着いたのは雪花ちゃんが俺が前に進めるようにする為に導てくれたのかな…なんて、そんな訳無いか。でもこれからはちゃんと雪花ちゃんの分まで幸せになるよ。もう忘れないから雪花ちゃんとの【あの頃の思い出と】一緒に生きて行くから。見ててね。雪花ちゃん」


              

               完

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あの頃の思い出と 赤嶺高真@超BIGなプリン @isekaiikitai1202

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